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日本の中学生が学ぶ英語は他国の5歳児レベル…TOEIC対策に熱心な日本人が知らない本当に必要な英語レベル

プレジデントオンライン / 2023年8月30日 6時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

海外でも通用する力は、どうすれば身につけられるか。イギリス在住で著述家の谷本真由美さんは「日本人の学んでいる多くの資格は海外の企業ではほとんど重視されず、小学校高学年や中学生の子は他の先進国の5歳児レベルの英語を学んでいたりする。今後、業界や市場の最新情報を得るには原書や原文を読める英語力は必須だ」という――。

※本稿は、谷本真由美『激安ニッポン』(マガジンハウス)の一部を再編集したものです。

■超高学歴、低賃金…労働人口は3つの階層に分かれる

ここまで日本がいかに安い国なのかを見てきましたが、私は日本と日本人はこれからみんな不幸になると言いたいわけではありません。

きちんと日本の現状を見つめ、今のうちから正しい行動をすれば、幸せをつかむことはできます。ここでは、「貧乏な国」でどうやって生きていくべきかを述べていきたいと思います。

日本は労働人口が減っていき、今後も経済格差が拡大していく可能性が高くなります。その一方で海外には人口がどんどん増加している国もありますから、海外向けにものやサービスを提供し、お金を稼ぐというビジネスモデルが盛んになっていくでしょう。

さらに、ロシアの戦争で以前ほどではなくなったかもしれませんが、グローバル化は今後も進んでいく見込みです。そうすると、さまざまな国をまたがって行われていく仕事は今後も増えていくでしょう。

そこで考えられるのは国内の労働人口が3つの階層に分かれていくという予測です。

それぞれの階層と、そこに属する人たちの特徴をまとめます。

第1階層:海外や多国籍化するプロジェクトを担当する層

・超高学歴で留学などの海外体験が豊富
・英語をはじめとする外国語を流暢に使うことができる
・海外を含めた労働市場で評価されやすい何らかの付加価値を持っている

第2階層:日本国内で付加価値が高い知識やスキルを提供する層

・国内で重宝される熟練技能や知識を持っている
・自営業や経営者
・地主
・医師や士業などの資格系職業
・国内で稼ぐので外国語は基本的に必要ない

第3階層:日本国内でお金を稼ぐ低賃金の層

・付加価値の高いスキルがないために低賃金
・ブラックな職場で働くサラリーマン、非正規やパート、日雇い

第1階層の稼ぐ機会は今後もどんどん広がっていきます。

発展途上国は現在もどんどん人口が増えていますし、多国籍な仕事やプロジェクトはどんどん増えていくので、この層の人たちは世界中から引っ張りだこなのです。

しかも、先進国はどこも高齢化していくところが多いので、スキルを持った若手の人の活躍する機会は増えていきます。

その場合に共通語になるのは「英語」です。

■最低限英語で原書や原文を読むスキルは必須

英語はすでにグローバルなビジネスの標準語になっていますし、学術や科学技術の世界も英語で研究発表をするのは当たり前です。

世界的に評価される大学では授業はすべて英語で行われます。これは今後、中国やインドが台頭してきたとしても変わることはないでしょう。

第1階層の世界に入りたいと思ったらとにかく英語はできて当たり前と思っていていいでしょう。

さらに重要なのが業界や市場の情報をいち早く入手することです。

これに関してはまったく気がついていない日本人が多いのですが、日本は超少子高齢化で書籍の販売市場や広告市場がどんどん縮小しているので、翻訳される情報が少なくなったり、古くなったりしています。

せっかく日本向けに情報を出しても大して儲からないので、わざわざコストをかけて翻訳することがなくなってきているわけです。

なので、日本語しかできない状態で業界の最新情報や技術情報を得るのは難しいことを知っておくべきです。

これまでの日本で、最先端の情報がいち早く翻訳されて書籍になったりウェブサイトに掲載されていたりしたのは、日本人にお金があったからにすぎません。機械化が進んでいると言っても翻訳はまだまだそれほど安くはないのです。

なので、今後の日本で生き延びたいと思ったら、最低限英語で原書や原文を読むスキルは必須です。

■「怪しい情報」がはびこる日本

翻訳されたものではなく、日本人が発信している情報を受け取ればいいと思うかもしれませんが、それはかなり危険です。

なぜかと言うと、貧しくなっている日本では「儲かれば何でもいい」という風潮の元、真偽の定かではない情報がたくさん出回るようになってきているからです。

たとえば、ここ最近、怪しい医療本や反ワクチン本をよく書店で見かけるようになりました。こうした本は以前は名前を聞いたことがないような中小の出版社が出しているくらいでしたが、今では大手出版社からもどんどん出版されるようになってきています。

イギリスでは、そんな本は本屋にもAmazonにも絶対に並びません。国がきちんと規制をしているのと、出版社も訴訟を起こされるリスクを避けようとするからです。またもし、著者が医者なら医師免許をはく奪されるでしょう。

きちんと校正を経て出版されるはずの書籍ですらもその状態ですから、ネットは言うまでもありません。

虫眼鏡で検閲
写真=iStock.com/digicomphoto
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/digicomphoto

Twitter上では「新型コロナウイルスは人間がつくった生物兵器だ」「ディープ・ステートという悪の勢力が世界を裏から操っている」など、怪しい情報ががんがん飛び交っています。そうした情報を出しているアカウントが支持者を得て、インフルエンサーになっているぐらいです。

こうした状況の中、今の日本で正しい情報を集めるのはかなり難しいです。なので、海外の情報を直接、自分で得られるようにしておく必要があるのです。

■ITパスポート、TOEICの点数は役に立たない

また今後身につけるべき技能や知識というのも、日本国内だけで評価されるものではなく、海外の先進国でもある程度評価されるものでなければなりません。

これが多くの日本人に欠けている視点です。

日本人はスキルを身につけるといっても、国内でしか役に立たない資格の話しかしません。

たとえば、IT系の資格だと、ITパスポートなどが人気ですが、この資格は外資系の企業にはほとんどプラスに働きません。

基本的に、日本社会は海外から見てかなり特殊性が高いと考えられているので、日本でしか取れない資格というのは、海外での仕事には役に立たないと捉えられているのです。また、英語の資格であってもTOEICの点数なども海外では重視されません。

これは学歴に関しても同様で、相当教育熱心な親でも日本国内の大学しか見ていないのです。あの大学の偏差値はいくつだとか、日本国内でしか通用しないことばかり話しています。

しかし今やそんな先進国ははっきりと日本だけです。

他の先進国の人々はまず国境を越えて稼ぐことを前提に話をしているので、資格や学歴も他の国でも通用することを前提にしています。

日本国内で評価される資格や教育を受けているだけでは、たとえば外資の会社に就職したり、多国籍なメンバーを集めるプロジェクトなどに参加することが難しくなります。それ以前に、海外で働こうとしても、世界で評価される資格や学歴がなければ採用されません。

他の先進国の場合は子どもに合う学校があれば、国外の学校に通わせることがめずらしくありません。大学も自分が学びたい分野で輝かしい業績を上げている研究室や研究者を探し、それが国外の大学でも躊躇なく進学するのが当たり前です。

つまり、国内の偏差値だけで話をしているような日本というのが非常に特殊なわけです。

■先進国の5歳児レベルの英語を学ぶ日本人の中学生

しかし、今後海外を相手に稼いでいくことを考えたら、日本国内だけの視点で教育を考えていては、結局日本でしか稼げない人ができあがります。

さらに習い事に関しても日本ではいまだに親はバブルの頃の感覚で子供の習い事を選んでいる人だらけです。

谷本真由美『激安ニッポン』(マガジンハウス)
谷本真由美『激安ニッポン』(マガジンハウス)

みんながやっているからといって、特に付加価値がつかないような習い事をやったり、思考力が養えないようなことをやったりしています。

しかも英語に関しても他の先進国の上の層のレベルを知らないので、小学校高学年や中学生の子が他の先進国の5歳児レベルのものを学んでいたりするのです。

無駄な投資をしないためにはまず他の国の実態を知り、食べて行くのに必要な技能や考え方が身につきそうな課外活動は一体何なのかということをよく考えるべきでしょう。

ショッピングモールに入っているようなお遊び半分の英語教室にお金を払うことは本当に意味があるのかどうか立ち止まって考えてみましょう。

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)
著述家、元国連職員
1975年、神奈川県生まれ。シラキュース大学大学院にて国際関係論および情報管理学修士を取得。ITベンチャー、コンサルティングファーム、国連専門機関、外資系金融会社を経て、現在はロンドン在住。日本、イギリス、アメリカ、イタリアなど世界各国での就労経験がある。ツイッター上では、「May_Roma」(めいろま)として舌鋒鋭いツイートで好評を博する。

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(著述家、元国連職員 谷本 真由美)

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