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「あなたでいいからお願い」と「あなたがいいからお願い」では大違い…たった1文字で意味が変わる日本語の怖さ

プレジデントオンライン / 2023年9月7日 13時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/itakayuki

「気がきく人」と「気がきかない人」はどこが違うのか。産業カウンセラーの山本衣奈子さんは「日本語はたった1文字を変えるだけで、ニュアンスが変わる。1文字にこだわって、ニュアンスを味方につけてほしい」という――。

※本稿は、山本衣奈子『「気がきく人」と「気がきかない人」の習慣』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。

■気がきかない人は語尾を「、」で終わらせている

日本語は、基本的に結論が語尾にくる言葉です。

例えば、「昨日、私は会社に行きました」という文章において、結論は「行きました」にあります。「昨日、私は会社に」だけでは、行ったのか行かなかったのかはわかりません。

日本語を聞く耳は、語尾までしっかり聞こうとするものです。語尾を聞き逃すと、結論がさっぱり理解できないからです。

ところが、気がきかない人の語尾は、濁したままプツリと消えるような話し方であることが多いです。次のように「。」で終わらず「、」で終わるイメージです。

理解度を聞かれると
「理解はできているのですが、」

参加の有無を問われると
「行こうとは思っているのですが、」

これは言い切ることへの不安であったり、自信のなさから出ていることがほとんどです。

語尾を濁らせると、理解しづらいだけではなく、意図せず何か含みがあるように響きます。言葉にされていない意味がそこにあるように聞こえるので、スッキリ伝わらず、誤解を与えてしまうことが少なくありません。

■「何か意図があるのか」周囲の人を疲れさせる話し方

以前勤めていた会社の同僚に、まさにこのタイプのAさんがいました。物事をはっきり言うことが苦手なようで、Aさん自身も「自分の言うことに自信が持てない」と言っていました。

仕事の進捗(しんちょく)を確認すると「問題ないとは思いますが、」お昼に何を食べるか聞くと「私は何でもいいですけど、」終始そんな感じでした。

何か他に言いたいことがあるのかと聞いても特にないことがほとんど。最初は「が、というのは、本当は何かあるということなの?」「けど、ってことは何か希望があるの?」と気にかけていた人たちも、面倒になってきたのか、だんだん声をかけること自体を避けるようになっていってしまいました。

放っておくわけにもいかず、それを指摘すると、Aさんはとても驚いていました。本人は意識しておらず、気づいてもいなかったようです。

とはいえ、苦手や不安をすぐさま克服して変えることは難しいですよね。「どうしたらいいのかな……」と相談されたので、語尾の使い方がうまい先輩を真似してみることを提案しました。

■語尾をはっきり「止めて置く」とメッセージがクリアになる

その先輩は、部署を超えて多くの人に頼りにされていました。いつもたくさんの人と情報が彼女の周りに集まっており、誰よりも早くリーダーになった人でした。

彼女の話し方は、相手への気遣いに溢れており、特に語尾を丁寧に扱う話し方でした。

理解度確認には
「大筋は理解できました。ただ、ちょっと曖昧なところがあります。」

食事の際には
「苦手はないので何でも大丈夫。できればさっぱりしたものがいいかな。」

このように、すべての発言を「。」で止める文章にして伝えていたのです。その分メッセージがとてもクリアでまっすぐ届き、そこから伝わってくる彼女の自信も、信頼を生み出す大きな要素となっていました。

さらに、語尾を「止める」だけではなく、相手の前に「置く」ことも、気がきく人の特徴です。言い切ると語気が強くなりがちなので、それを「投げる」ように言うと、傲慢(ごうまん)な印象になることがあります。そのため、気がきく人は、語尾を言い切り、かつ相手の前にそっと置くように話します。

この感覚を掴むには、小さな箱を持つように手を構え、語尾の部分で相手の前に「置く」というジェスチャーをしてみてください。イメージがわかりやすくなるのでおすすめです。

■「何から話すか」よりも「最後に何を言うか」が重要

「まず結論から話そう」
「第一印象がもっとも大事」

このように言われたことがある方は、多いのではないでしょうか。

確かに、結論の見えない話はわかりにくいですし、第一印象がよくないとその人を好意的には受け止めにくくなります。だからこそ、「最初に言うこと」や「最初の印象」をきちんと意識することは、とても大切です。

その心がけに間違いはないのですが、実は人の印象に強く残るのは、最初だけではありません。

心理学の言葉に、「新近効果」というものがあります。アメリカの心理学者ノーマン・H・アンダーソンが提唱した「最後に抱いた印象が、その後の情報の評価に影響を与える」というものです。

この影響から、「最後に何を言うか」を疎かにしてしまうと、勘違いやすれ違いを生んでしまうことも少なくありません。

「最初」の印象は、その後の流れでフォローされることもありますが、「最後」の印象はずっと残り続けてしまいます。

つまり、言葉も「最後」に言ったことの方が、より相手の印象に残りやすいのです。

■もっとも印象に残したい言葉を必ず最後に伝える

例えば、人を紹介するとき、どちらの紹介の方がより優しそうに感じますか?

A 頑固だけれど優しい
B 優しいけれど頑固

おそらく多くの人が「A」と答えるのではないでしょうか。どちらも「優しさ」と「頑固さ」を同じくらい持ち合わせていたとしても、後にくる言葉の印象の方が強く残りやすくなります。

だからこそ、気がきく人は、最初よりも「最後に何を言うか」にこだわっています。

もっとも印象に残してほしい言葉を、最後にしっかり伝えているのです。

以前、取引先の方をとあるイベントにお誘いしたとき、その方が最後にこう言いました。

「今日はありがとう。とても楽しかったけど、ちょっと疲れたねえ。じゃあまた」

「とても楽しかった」「ちょっと疲れた」と言っているのですが、「とても」なのか「ちょっと」なのかに関係なく、「疲れた」という言葉が強く印象に残り、残念な気持ちと申し訳ない気持ちが湧いてきました。

■「疲れたけど楽しかった」なら印象はまったく変わっていた

それ以降、その人をお誘いするのは気が引けて、声がかけにくくなってしまいました。同じことでも、こう言われていたらまた違っていたかもしれません。

「今日はありがとう。ちょっと疲れはしたけれど、とても楽しかった。またぜひ!」

疲れたということもきちんと伝えてはいるのですが、受け取る印象としては「楽しかった」「また行きたい」という方が強く残り、次もまた誘いやすくなりますよね。

言葉というのは、小さな出し方の違いが、大きな受け取り方の違いを生みます。

最初の印象も大事ですが、最後の印象がもっとも強く、そして相手の中に長く残ります。もっとも伝えたい言葉、もっとも受け取ってほしいものこそ、意識して最後にしっかり渡していきましょう。

■ほとんどの人は反射的に言葉を選んで発している

普段の会話において、私たちはかなり反射的に言葉を選んでいます。多くの場合、そこに意図的な理由はなく、「言い慣れているから」「頭に浮かんだから」という理由から無意識に言葉を選んで会話をしています。

会議で説明をするビジネスウーマン
写真=iStock.com/mapo
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mapo

ところが、言葉というものは選び方をちょっと変えるだけで、会話の進め方を大きく変えてしまいます。何気なく使っていると、思いがけない方向にいき、誤解を生み出すことも少なくありません。

日本という国は、世界一ハイコンテクストな文化を持っていると言われています。

「コンテクスト」とは「文脈」という意味です。「行間を読む」「空気を読む」といった言い方に表されるような、言語外の要素に重きを置いた文化、ということです。

こうした文化の中でよりよいコミュニケーションを取るには、言葉そのものだけではない部分にも意識を向ける必要があります。

では、気がきく人はどこに気をつけているのでしょうか。

そのポイントの1つが、「ニュアンス」にあります。

「ニュアンス」には2つの種類があります。“ポジティブニュアンス”と“ネガティブニュアンス”です。私はこれを、“陽のあたる言い方”と“陰になる言い方”とお伝えしています。日向と日陰では温度も明るさも異なるように、言葉にも「温かさ・明るさ」や「冷たさ・暗さ」があるのです。

■なんとなく口にした言葉が相手を不安にしてしまう

例えば、あなたが何かを頼まれたとして、どちらの言葉の方が素直に聞けますか?

山本衣奈子『「気がきく人」と「気がきかない人」の習慣』(明日香出版社)
山本衣奈子『「気がきく人」と「気がきかない人」の習慣』(明日香出版社)

「あなたでいいからお願い」
「あなたがいいからお願い」

言葉上はたったの1文字ですが、受ける印象はかなり違いますよね。

「あなたでいい」の「で」には、諦めのニュアンスが含まれます。受け取る方は、言葉の意味よりニュアンスを受け取ることで不愉快な感情が生まれ、行動もそちらに引っ張られやすくなります。

気がきく人は、この言葉選びをしっかり意識的に行っています。

言葉だけではなく、そこに含まれるニュアンスにも気に留めて、邪魔になるものは言い換えるようにしています。

例えばあなたが営業職で、お客さまにA、B、Cの3つの商品を紹介するとしましょう。これを説明する際に、

「ABCとあるのですが、今のお話を聞く限り、Aでいいと思いますよ」

と伝えると、相手からは高確率で「そうですか……もう少し考えてみます」と返ってきます。なぜなら、不安になるからです。説明する人(プロ)が、「Aでいい」と少し陰を感じる言い方をしたことで、それを選んでいいのか自信を持てなくなってしまうのです。

■日本語はたった1文字でニュアンスが変わる

これは、伝える側が相手からその言葉を引き出してしまっているとも言えます。

「ABCとあるのですが、今のお話を聞く限り、Aがいいと思いますよ」

たった1文字を変えているだけですが、この方が、Aのよさやそれをすすめる人の自信が伝わります。それが安心感となり「それにしてみようかな」という気持ちや行動につながりやすくなるのです。

ほんの1文字が大きな力を持つのが日本語です。

言葉選びはニュアンス選び。1文字にこだわって、ニュアンスを味方につけましょう。

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山本 衣奈子(やまもと・えなこ)
産業カウンセラー、E-ComWorks代表
「伝わる伝え方」の研究を重ねながらサービス業、接客、受付、営業、クレーム応対等の業務にて30社以上に勤務。コミュニケーション術の講師として企業や官公庁を中心に、コミュニケーション研修、プレゼンテーション研修、セルフマネジメント研修、マナー研修等を実施。年間180回近い企業研修や講演を行う。

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(産業カウンセラー、E-ComWorks代表 山本 衣奈子)

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