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低学年から塾通いの子ほど5年生以降で成績が急降下する…中学受験の"長文化"に対応できる読解力の伸ばし方

プレジデントオンライン / 2023年9月12日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kuppa_rock

中学入試の問題文が長文化している。子供の読解力を伸ばすにはどうすればいいのか。プロ家庭教師の西村則康さんは「最後まで丁寧に読む姿勢を身に付けることが大切だ。そのためには、大人が“3つの問い”を投げかけるといい」という――。

■難関校の入試では1万字近い出題文が出る

近年、中学入試の問題文・出題文(国語の物語文など)の長文化が進んでいる。例えば都内の難関校といわれる麻布、駒場東邦、海城などの国語入試では、試験時間50〜60分の中で8000〜1万字近い出題文を出す。また、解答も選択式ではなく、「なぜそう思ったのか」「もし自分だったらどうしていたか」など物語全体を理解したうえで、そう思った根拠や自分なりの考えを書かせる記述式の問題が増えている。こうした問題を解くうえで欠かせないのが、文章をスピーディーに、かつ丁寧に正確に読む力、すなわち読解力だ。

では、読解力はどのようにして身に付くのか──。各学年の学習の留意点を挙げておきたい。

一般的に中学受験の勉強は小学3年生の2月から、4年生クラスがスタートする。近年の中学入試の中身は、親世代の中学受験と比べるとはるかに難しくなっている。昔の難関校の難問が、今は中堅校の標準問題として扱われているほどだ。しかし、4年生の時点では、まだそこまで手に負えないわけではない。そもそも中学受験に挑戦する子供たちは、小学校では“できる”部類に入る子たち。最近では低学年から塾通いをしているケースも少なくなく、問題を読んで解くことには慣れている子たちが多い。

■文章をきちんと読まずに勘だけで答える癖がついてしまう

そんな子たちにとって、4年生で学習する内容はそれほど手強くはない。国語の出題文もさほど長くないし、物語文も同じ年頃の子供が主人公を題材にしたものが多いので、さらっと読んだだけで、「はいはい、この子の気持ちを書けばいいんだね」「こういう場面のときは、決まってこのパターンだもんな」と、これまでの学習経験からの想像範囲内で答えられてしまう。そして、たいてい正解する。すると、「国語の問題なんてこんなもんでしょ」と、文章をきちんと読まずに、勘だけで答える癖がついてしまうのだ。

中学受験の勉強が始まると、親も子も「できたか」「できなかったか」「何点取れたか」「いくつクラスが上がったか」といった結果ばかりに目が向きがちになる。すると、できたことに対しては「うまくいっている」と思い込み、そのままのやり方を通してしまう。しかし、中学受験の勉強は、学年が上がるごとに内容が難しくなり、過去の経験に基づく勘や単なる知識の丸暗記では太刀打ちができなくなってくる。

4年生のときに出題文や問題文をいい加減に読んでいると、その後も文章をきちんと読もうという意識が働かず、例えば国語なら内容がよくわかっていないのにとりあえず答えをうめる、算数ならきっとこのパターンだろうと塾で習ったテクニックだけを頼って数字を当てはめてみる、といった勉強を続けてしまう。しかし、それでは正しい答えにはたどり着けない。

■丁寧に読む癖をつける「3つの問いかけ」

最初の壁は5年生だ。中学受験の勉強は、学年が変わるタイミングで急に難しくなる。5年生になると、国語に限らず、すべての教科の問題文・出題文が長くなり、内容が複雑になってくる。

例えば国語の物語文なら、自分とは違う年齢の人が主人公の話や、自分の知らない時代背景の話などを扱うようになる。すると、自分の経験に基づく勘が急に利かなくなり、「なぜ主人公がこんな行動に出たのかさっぱりわからない」「そもそもこの言葉の意味がわからない」といった状態に陥ってしまう。そして、これまで順調だった成績が急降下していくのだ。

こうした問題を解くときに必要になってくるのが、「最後まで丁寧に読む」という姿勢だ。物語文なら文中に何が書いてあるか証拠探しをするような感覚で読み進めていく癖をつけること。はじめは子供だけでは意識できないので、大人が手助けをしてほしい。

「今、何が分かっているの?」
「この問題は何を聞かれているの?」
「あと何が分かれば答えが出そう?」

そうやって、大人が問いかけをしてあげることで、丁寧に読む癖がついていく。それを根気強く続けていくことだ。そうやって読み方を意識させることで、子供自身が自問自答しながら読み進めていけるようになる。

本から湧き出してくる風景
写真=iStock.com/ra2studio
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ra2studio

■「3つの問い」は国語以外の教科でも使える

この読み方はすべての教科で有効だ。例えば算数なら、4年生のうちは問題文をパッと見ただけで、「あ、これは植木算の問題だ!」とわかり、そこに数字を当てはめるだけで正解が出る。ところが5年生になると、問題の中身が複雑になり、単に数字を当てはめるだけでは答えが出せなくなる。そして、実際の入試ではもっと内容がややこしくなり、どの解き方で解けば答えが出そうか、子供自身が持っている知識や経験を総動員させて「解き方を考え出す」ことがもっとも重要になる。

問題のシチュエーションからすると、植木算で答える問題に見えるけれど、この条件があるということは、こう解くのかもしれないな。いやいや、ここにもう一つこの条件もあるぞ。ということは、この解き方ではなくて、あっちの解き方かもしれない。と、まずは今分かっていることを書き出し、ああでもないこうでもないと手を動かしながら考える。そのときに情報のモレがないように、先に挙げた3つの問いを意識して読むことが大切だ。この読み方を身に付けてしまえば、どんな複雑な問題でも慌てることなく冷静に向き合えるようになる。

ただ、それ以前に問題なのが、そもそも言葉を知らない子が多いことだ。中学受験の指導に携わるようになって40年以上経つが、特に最近の子はその傾向が見られ危惧している。例えば算数の割合の問題に出てくる「定価」「売値」「利益」「仕入れ値」などの言葉が分からない子は意外と多い。商売の仕組みそのものが分かっていないのだ。そういう場合は、まずは言葉の意味を教えることから始めなければいけない。読解力を鍛える以前に身に付けなければいけない知識だ。

■「長文読解が苦手だね」とはあまり言わないほうがいい

「うちの子、長文読解が苦手なんです……。どうしたらいいでしょうか?」

近年、私のところによく寄せられる相談内容の一つに、「長文読解が苦手」という言葉が出てくる。しかし、私はどんな子でも「文章は最後まで丁寧に読む」という当たり前のことを意識して読めば、苦手は克服できると思っている。むしろ、親が「あなたは長文読解が苦手だからね」と言い続けることで、苦手意識が植え付けられてしまっているように感じる。できないことを指摘するだけでは、人は成長しない。できていなければ、できるようになるまで大人が寄り添ってあげるべきだ。

しかし、たったそれだけのことができない親が多い。なぜなら、今の親たちは、仕事に、家事に、情報収集に、と忙しすぎるからだ。だが、一度この読み方を身に付けてしまえば、子供たちがこの先生きていく情報社会でも活用することができる。情報過多な時代、「正しく情報を読み取る力」「集めた情報を分類・分析する力」「自分なりに考えて表現する力」が求められている。多くの学校の入試問題で、長い文章を出す背景には、こうした力の素地を持っている子に来てほしいという思いがあるからだ。

最後にこれもよくある質問なので紹介しておこう。

「長文に慣れるには、読書は有効ですか?」

この質問は、これから中学受験をさせようと考えている低学年の親から挙がることが多い。

図書館で本を選んでいる少女
写真=iStock.com/Hakase_
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Hakase_

■本をあまり読まない子は「活字に慣れること」から始める

確かに私のこれまでの経験で見ると、読書好きな子は、成績優秀な子が多い。

ただし、ただたくさん読めば力がつくというわけではない。物語好きな子がストーリーの展開を楽しみながらグングン読み進めていくのと、文章の隅々まで丁寧に読む入試問題とでは、同じ「読む」でも読み方が違うからだ。読書好きな子は活字に慣れているという点ではアドバンテージになるが、それと読解力の有無は別の話。むしろ、本を読み慣れている子ほど、「問題文・出題文は丁寧に読む」ことを意識させたほうがいい。

一方、本をあまり読まないという子には、まずは図鑑でも漫画でも攻略本でも何でもいいから、子供が興味のあるものを読ませて、活字に慣れさせること。そして、読んだ内容に対し「どんなお話だったの?」と親が聞いてあげると、要約力や表現力が鍛えられる。ただし、子供の説明がたどたどしくても、急かさないこと。子供の説明がまどろっこしかったり、支離滅裂だったりしても、親が笑顔で聞いてあげることが大切だ。

話がわかりにくかったら、「それってこういうことかな?」「そしたら、どうなったのかな?」と丁寧に聞いてあげると、子供は自分の頭の中で話を組み立てる練習ができ、読解力と同時に表現力も身に付いていく。このように、親の関わり方が極めて重要なのだ。わが子の読解力を心配するのなら、まずは子供に寄り添うことから始めてほしい。

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西村 則康(にしむら・のりやす)
中学受験のプロ家庭教師「名門指導会」代表/中学受験情報局 主任相談員
40年以上難関中学受験指導をしてきたカリスマ家庭教師。これまで開成、麻布、桜蔭などの最難関中学に2500人以上を合格させてきた。

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(中学受験のプロ家庭教師「名門指導会」代表/中学受験情報局 主任相談員 西村 則康 構成=石渡真由美)

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