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LINEで「、」や「。」を使うと「怒っている」と思われる…オトナたちがまったく知らない若者世代のLINE常識

プレジデントオンライン / 2023年10月1日 14時15分

若者から「怖い」と思われるLINEのイメージ(編集部作成)

LINEのやりとりでは何に気を付けるべきか。成蹊大学客員教授の高橋暁子さんは「大人世代と若者世代はLINEの流儀が異なる。無理に若者のマネをする必要はないが、感覚の違いを知っておかないと、気づかぬうちに人間関係にヒビが入る可能性がある」――という。

■子どもから高齢者まで利用しているLINE

LINEは日本でもっとも普及が進んでいるSNSだ。NTTドコモのモバイル社会研究所の調査によると利用率は83.7%に上り、続くX(旧Twitter)は43.2%、Instagramは39.9%を大きく引き離している。

年代別に見ると、10~30代は90%台、40~60代は80%台、70代でも72.7%。あらゆる世代が使っているだけあって、使い方には違いがあるようだ。

ある大学生は、バイト先の店長からのLINEが苦手だという。

「アルバイト先の店長がいつも怒っているみたいなんだよね。先輩に苦情を言ったら、別に怒ってないらしいけど、やっぱりなんか怖いの」

■「黒いLINE」は怒っているみたいで怖い

バイトのシフトの調整のために店長とLINEをするが、いつも怖そうなメッセージを送ってくるというのだ。直接対面しているときはむしろ親切で穏やかだというが、メッセージでは怖い。そのメッセージを見せてもらって、学生が言っていること、なぜそうなってしまったのかが理解できた。

「黒くて怖いですよね」と、学生は眉をひそめて言う。「これ(句読点)もなんか怖いし冷たい感じで、やり取りするのがストレスなんですよね」。

店長のメッセージは丁寧で文章自体におかしいところはないが、文章は長く、画面いっぱいに文字が並んでいた。句読点もつけられていた。代わりに絵文字がなく、画面が黒かったのだ。

■若者のやりとりは短くて素っ気ない

これは若者に広く共通した傾向だ。大学でSNSの画面キャプチャを貼ったレポートを提出してもらうことがあるが、大学生のLINEなどのメッセージは一つ一つが短く、句読点はつかず、絵文字もほぼ使わない。シンプルなやり取りがメインで、大人から見ると若干素っ気なく見えるくらいだ。

若者のLINEの例
若者のLINEのイメージ(編集部作成)

一方、大人世代ほどLINEでのメッセージが長くなり、句読点も多くなり、絵文字も多用される。たとえば、LINEで有料絵文字を使うのは大人世代が多く、若者が購入しているのは有料スタンプの方だ。文章自体も、丁寧だが悪く言えば冗長。いきなり本題に入る若者と違い、「おはようございます」「お疲れさまです」といった挨拶から入り、丁寧な文章が繰り返される。

■中学生の息子は句読点に「何で?」

中学生の息子に筆者のLINEを見せたことがある。すると、「文章が長い! 文字ばっかり」と驚かれた。さらに、「句読点もついてる。何で?」と言うのだ。「誰もつけてないし、見たことないよ。絵文字も随分多いね」と変な顔をされてしまった。

1、2往復程度で会話が終わっているのも不思議に思ったようだ。LINEを使い始めたばかりなのに、大学生と同じ反応なことに逆に驚いた。

中学の友だちとのLINE画面を見せてもらったが、確かに文章は短く、句読点も一切ついていなかった。絵文字も見かけなかった。挨拶などせず、いきなり本題。丁寧な長文など一切見かけない。やり取りは延々と続き、完全にチャット状態だった。150名近く参加する学年LINEやクラスLINEなども見せてもらったが、どこでも同様だった。

特にだれかに教わるのでもなく、若者は自然とこのようなメッセージを送り合っているのだ。

■絵文字がない黒メールも忌み嫌われた

スマホが普及する前の2008年にガラケーのケータイメールについて取材したとき、「絵文字がひとつも使われていないメールを女子大生は『黒メール』と呼んで忌み嫌う」と聞いた。そのようなメールは「怒っている」という意味になり、相手に「怖い」という感情も与えてしまうという。

※ASCII.jp 絵文字から知る「女子大生のホンネ」

これは冒頭でご紹介した大学生の感覚と似ている。LINEの画面で文字ばかり並ぶと威圧感があり、絵文字がつけられた明るい印象のメッセージと比べて、見た目も黒々していて怖いと感じる気持ちは理解できるのではないか。

ある50代男性は、LINEでのメッセージに絵文字・顔文字を一切使わない。「自分が絵文字顔文字を使ったら気持ち悪いから、せめて丁寧な文章で送っている」という。その男性からのLINEは慇懃(いんぎん)無礼な印象を受けるが、気遣いの結果で本人は気にしていないのだ。

男性のLINEの友だちは家族と一部の友人のみで、メッセージのやり取りに慣れていないようだ。それゆえメールのような文章になっており、絵文字顔文字の使いどころもピンとこないのだろう。

スマホでメッセージのやりとりをするイメージ
写真=iStock.com/patpitchaya
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/patpitchaya

■自分は使わない句読点に「意味」を見出す

大人の文章コミュニケーションはガラケー文化から始まっている。メールなので長いのは当たり前だし、文章のみでは感情が伝わりづらいため、ハートや星、汗といった絵文字や顔文字を使うものだった。

LINEもメールと同様、用件がある時のみ使う人が多いため、メール文化を引きずった使い方をしている人が多いのだ。そのため、句読点がついていることが多くなる。

一方、若者世代はスピーディーにチャット的にやり取りする。若者にとってSNSでのやり取りは会話だ。用事がないときにもコミュニケーションのためにやり取りされる。「マジ?」「すごいね」「知らなかった」など、単語や短い文章で送られることが多く、わざわざ句読点をつけることはない。

やり取りする周囲の同年代が使用しないため、句読点をつけている文章を見るとそこに意味を見出してしまう。だから、「怖い」「怒っている」と感じるのだ。

■絵文字は「相手への気遣い」のためだが…

メールでは、丁寧な挨拶や語尾などで堅苦しさを和らげるものだ。だからLINEをメールと同様に使う大人は、挨拶してから丁寧な長い文章を送る。さらに、彼らは相手への気遣いの意味で絵文字や顔文字をつける。この文化が、若者とはどうしても相いれないのだ。

Simejiの「Z世代が選ぶ‼ Simejiランキング」で、気になるおじさん構文の特徴が公開されている。1位は「絵文字・顔文字・記号を多用」、3位は「1度に送る文章が長い」、そして6位に「句読点『、』が異様に多い」がランクインしており、まさにこの特徴に合致している。

おじさん構文のLINEの例
おじさん構文のLINEのイメージ(編集部作成)

ちなみに、「文章中にカタカナを乱用」「親しくないのにメッセージになるといきなりタメ口」「返信がこなくてもメッセージを連投」といったメッセージも「おじさん構文」と受け取られるようだ。

■「怖い」「怒っている」と思われないために

では、大人世代が若者とやり取りするときに、「怖い」「怒っている」と思われないためにはどうすればいいのか。

大人同士では有効な絵文字・顔文字は、残念ながら、若者とのやり取りにはあまり効果がないかもしれない。子どもに絵文字がついたメッセージの印象について聞いたところ、「微妙」と答えていた。

若者同士のやり取りは、一見そっけない文章でもスピーディに会話としてやり取りされるので、やり取りが続くこと自体で相手が自分に好意を抱いていることがわかる。大人と若者ではそのようなやり取りにはならないので、やわらかい文章を心がけたり、むしろ対面でのコミュニケーションに力を入れたりするべきだろう。

大人から若者に対してメッセージを送る場合は用件があるときだから、文章が長くなるのも仕方がない。ただし、怒っていると誤解されないよう、句読点はなるべく入れない方がいいかもしれない。若者とやり取りするときの参考にしていただければ幸いだ。

逆に、若者は「おじさん構文」の裏に隠れている大人世代の気遣いを察して、広い心で接してあげてほしい。

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高橋 暁子(たかはし・あきこ)
成蹊大学客員教授
ITジャーナリスト。書籍、雑誌、webメディアなどの記事の執筆、講演などを手掛ける。SNSや情報リテラシー、ICT教育などに詳しい。著書に『ソーシャルメディア中毒』『できるゼロからはじめるLINE超入門』ほか多数。「あさイチ」「クローズアップ現代+」などテレビ出演多数。元小学校教員。

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(成蹊大学客員教授 高橋 暁子)

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