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日本には「お宝銘柄」がたくさんある…日本株投資のプロが断言する「伸びる銘柄」を見抜くコツ

プレジデントオンライン / 2023年10月14日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/chachamal

株式投資で成功するにはどうすればいいのか。JPモルガン・アセット・マネジメントでファンドマネジャーを務めた中山大輔さんは「株式投資で利益を狙うなら『利益の変化率』に着目したほうがいい。誰もが知っているいい会社よりも、業績低迷が続くなど停滞感が感じられる企業の変わる時が狙い目だ」という――。

※本稿は、中山大輔『日本株で30年 好成績を上げたファンドマネジャーが明かす 逆転の思考法』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

■「いい会社」の株を買うのが王道だが•••

株式のアクティブ運用は、「良い企業に投資してずっと保有し続ける」というスタイルが主流です。

確かに、それは間違っていませんし、株式投資のスタイルとしては王道といってもよいでしょう。信越化学工業、キーエンス、ニデック(旧日本電産)など、株式市場全体が長年にわたって低迷し続けた日本にも、世界的に通用する技術を持った、それこそ「余人をもって代えがたし」というような企業がたくさんあります。

このような企業は、極めて高い技術力、高度に効率化された業務のオペレーションなどによって、高い収益力と、他の企業が容易に参入しにくいという強みを持っています。かつ、提供している製品・サービスの価格決定権を持っています。つまり自分が価格を決められるのです。

別の言い方をすると、値引き競争に巻き込まれる心配がありません。したがって、景気の良し悪しに関係なく、常に一定の利益幅を得ることができます。まさに最強の存在です。よほどのことがない限り、その企業の事業は着実に成長していきますし、そういう企業をしっかり選んで投資すれば、株価はその成長を織り込んで、着実に値上がりしていきます。

こういう企業の株式に投資するのが、アクティブ運用の王道です。そして、この手の企業の株式をファンドに組み入れたら、ずっと保有し続けます。良い企業が良い企業であり続ける限りは、売却する必要性はどこにもありません。確かにその通りなのです。

■「悪い企業=伸びしろ企業」に投資をする

その通りではあるのですが、それはそれである程度似通った組み入れ銘柄になりがちとも言え、その帰結としてパフォーマンスの出方も同じ傾向となるでしょう。

年金基金など委託者側からみると、いくつかのアクティブファンドに分散しても結果はそれほど変わらないというケースも考えられ、不確実性の高い世界情勢においては、他のファンド・運用とは違うエッセンスを提供できることが、付加価値の一つになると思うのです。ということで、私は独自性の高い、超過リターンの実現を目指した運用スタイルを取ります。

「良い企業ではないとしたら、悪い企業に投資するのか」と言われそうですが、誤解を恐れずにお答えすると、その通りです。

と言っても「悪い企業」という表現があまり好きではないので、「伸びしろ企業」といいましょうか。たとえばこういうイメージです。

「事業参入している領域に成長の余地がほぼなく、経営陣は改革の気勢に乏しく、それが社員にも伝わるのか、モチベーションも低い。数字を見ても、売上や営業利益の改善は見られず、このまま永遠に変化しないのではないか、というような企業」を思い浮かべてください。

ところが、そのような「伸びしろ企業」でも、経営者が交代して、ガラリと会社が変わったりします。経営者の交代以外にも、たとえば大株主が変わるとか、人事評価制度を変えたことで社員のモチベーションが上がったとか、オフィス環境を見直したとか、世代交代が生じたとか、さまざまな要因で、「伸びしろ企業」が良い企業に生まれ変わるケースもあるのです。

■会社が変われば、株価は強く反応する

たとえば鉄道、製鉄、非鉄金属、造船など、特に日本の高度経済成長期を支え、過去の成功体験に囚われ続けているような業種の企業で世代交代が起こると、会社が一気に変わる可能性があります。日本の古い企業でも、40代、50代が経営トップやマネジメント職に就くなど、会社を牽引しているところが徐々に増えてきました。

また、技術開発の結果、全く違う会社になるというケースもあります。たとえば、もともとは合成ゴムを製造していた会社が、合成ゴムの副産物で液晶フィルムの製造に成功したことから、ファインケミカルの企業に大転換を果たしたケースなどです。

このように、会社が大きく変わると、株価は強く反応します。仮に世代交代や経営者交代、あるいは技術開発によって企業価値が5割も改善されたら、株価も相応に跳ね上がります。

大きく変動する株価
写真=iStock.com/franckreporter
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/franckreporter

もちろん、一夜でガラリと変わるようなケースは稀かと思いますが、岩盤規制(役所や業界団体などが改革に反対して緩和や撤廃が容易にできない規制)よろしく、それまで全く変化がなかった会社が一部でも変わり始めると、徐々にではあっても利益率が改善されたり、初めはゆっくりでも成功体験が拡散して改善が加速するなど、いろいろなパターンがあるように思います。株価は、その業績の変化、あるいは市場の期待値を通じて、「良い会社」を大きく上回るほどの、「株価変化」を示すことがあります。

■株価にとって「変化率の大きさ」は命である

海外の投資家から見て、決して「まとも」とは言えなかった日本企業が、正常化に向けて動き出したのだとしたら、これはものすごく大きな変化になり、株価も大きく上昇するはずです。つまり、変化の度合いが大きければ大きいほど、株価も大きく上昇するのです。株価にとって、「利益の変化率」の大きさは命、といってもよいくらいです。

もう一度言います。良い企業の株式に投資すれば、将来の見通しに大きな乖離(かいり)は生じず、着実にリターンを取れる可能性が高いでしょう。しかしながら、その見通しと、それに基づく「確実性の高い」リターンは、その多くの部分を多くの人によって評価され、既に株価に織り込まれているものでもあります。特にこれまでの日本株市場では、ガバナンスの効いた欧米市場と比べると、「良い企業」は全体の一部に過ぎません。

その分、投資家から選別保有される度合いも高まり、株価評価に関しても、プレミアムがより高く付与される傾向があります(株価が割高に評価される)。すでに割高に評価されているとすれば、今後の株価上昇余地が限られる上、マクロ環境や個別の事由で業績見通しなどが下方に修正されたりする場合には、下落余地が大きくなるリスクがあるのです。

■「利益の変化率」に着目したほうがいい

現状があまり良くない企業だったとしても、何かのきっかけで大きく変わる可能性を持っているのだとしたら、利益の変化率の大きさという点で、はるかに大きなリターンが得られる可能性があるわけです。株式に投資して利益を狙うのであれば、利益の変化率にこそ着目するべきなのです。

PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)、ROE(自己資本比率)といった株価指標の数字も大事です。それらも見ながら、「独自の付加価値、他と違う運用テイストに基づく存在意義」を志向する職業投資家の私にとって、投資先を選ぶうえで重要な要素のひとつが、変化率なのです。

中山大輔『日本株で30年 好成績を上げたファンドマネジャーが明かす 逆転の思考法』(PHP研究所)
中山大輔『日本株で30年 好成績を上げたファンドマネジャーが明かす 逆転の思考法』(PHP研究所)

これはあくまでも個人的な見解ですが、自分の好きなように運用してくださいと言われたら、「時価総額が大きくて、ROEが高く、IRも非常に充実しており、多くのアナリストから非常に高く評価されている、JPXプライム150指数に採用されているような企業」には、投資しません。

いや、すみません……投資しないわけではなく、間違いなくこれらの企業は株式投資の王道、中核をなす企業なのですが、私の場合はこれらを一定程度ポートフォリオのベースにしながらも、できるだけ違った目線で評価できる、あるいは評価できそうな動きがある企業を探して組み入れたい、それが面白くて好きである、ということなのです。

それが結果的に、他の投資家とは異なる運用となり、大きなリターンをもたらしてくれる可能性につながるのです。

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中山 大輔(なかやま・だいすけ)
元JPモルガン・アセット・マネジメント ファンドマネジャー
1969年生まれ。大阪大学経済学部卒業。93年日本生命保険に入社し、株式部、年金運用部、ニッセイアセットマネジメントで経験を重ねる。2005年JPモルガン・フレミング・アセット・マネジメント・ジャパン(現JPモルガン・アセット・マネジメント)に入社。同社の代表的な日本株アクティブファンド「JPMザ・ジャパン」の運用担当者を、06~23年3月末まで務めた。23年8月からPolymer Capital Japanで日本株アクティブファンドの運用に携わる。著書に『日本株で30年 好成績を上げたファンドマネージャーが明かす逆転の思考法』(PHP研究所)がある。

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(元JPモルガン・アセット・マネジメント ファンドマネジャー 中山 大輔)

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