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美容師同士のドロドロをサッパリ解消…4年間で100店舗の美容室を作った経営者が設計した仰天ルール

プレジデントオンライン / 2023年10月12日 18時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Edwin Tan

長く働ける職場とはどのようなものか。美容室Dearsグループ代表の北原孝彦さんは「従業員の離職が多い職場は『設定』と『設計』が間違っている。僕らの例で言うと、美容師がサロンを辞める理由は『休みを取れない』『給料が少ない』『人間関係が気に入らない』の主に3つだ。これを解決する組織設計をしてあげればいい」という――。

※本稿は、北原孝彦『たった4年で100店舗の美容室を作った僕の考え方』(横浜タイガ出版)の一部を再編集したものです。

■従業員からも必要とされるビジネスモデルを「置きに行く」

当たり前のことですが、経営者は「自分が作りたいと思っているもの」や「やりたいと思っていること」が、お客様だけでなく、従業員からも必要とされているかどうかを、まずは冷静に見極める必要があります。

よく「集客さえできれば、もっと売上が上がるはずだ」とか、「良い人材さえ採用できれば、うちの会社はもっと伸びるはずだ」と言う経営者がいますが、問題の本質は、実はそこではありません。

本当に問題なのは「自分がやりたいこと」と「お客様や従業員に求められていること」がズレてしまっている点です。

結果として、経営者は「お客様が集まらない……」「良い人材が全然集まらない……」といった苦しい戦いをせざるをえなくなってしまうのです。

お客様や従業員から「本当に必要とされるもの」であれば、向こうの方から探してでも、人がやって来るようになります。

では、お客様だけでなく、従業員からも必要とされるビジネスモデルは、いったいどのように構築すればいいのでしょうか?

その点については、これから説明しますが、僕のビジネスモデルを「一言で説明しなさい」と言われたら、僕は「置きに行ったビジネスモデル」と答えます。

ここで言う「置きに行く」というのは、具体的にどういうことなのでしょうか?

分かりやすく言えば、自分の意見を押し通すのではなく、お客様や従業員に対して、「本当に欲しいのはコレでしょう?」という器を作るということです。

そして、その器を「置きに行く」ということです。

その器に対して、お客様や従業員が自然に集まって来る姿をイメージしていただければ、分かりやすいのではないでしょうか?

そして、本当に肝心なのは、ここからです。

ビジネスモデルとして、お客様や従業員などの「人が集まる器」を作るためには、いったいどうすればいいのでしょうか?

■離職が多いのは「設定」と「設計」が間違っている

先日、テレビにも出ているカリスマ美容師との会食の機会がありました。

彼のお店はひとたび求人の募集をかけると、100人ぐらいの美容師が集まるそうです。

100人の中から2~3人を選抜するわけですから、こうしたお店であれば、「カリスマ美容師をズラリと揃えた美容室」「カリスマ美容師をバンバン輩出する美容室」も夢ではないかもしれません。

一方、実際の現場はどうでしょうか?

多くの美容室では、求人の募集を出しても人が集まらないか、もしくは集まったとしても、いくつものお店を渡り歩いて、疲れ切った美容師がほとんどです。

一般的な美容室では休みが少ない上に、お客様のかき入れ時である土日に休みを取れないため、旅行はおろか、友人などの結婚式に参加することもままなりません。

にもかかわらず、月20万円以下の給料ということもザラで、さらに社会保険にすら入れてもらえないケースも数多く存在します。

そうした環境下で、肉体的にも精神的にも疲弊し切って集まってきます。

そうした美容師たちに、例えば「カリスマ美容師への道」というカリキュラムを用意したところで、はたして心に響くでしょうか?

答えは「NO」です。

なぜなら、彼ら、彼女らが求めているのは「カリスマ美容師への道」というカリキュラムではないからです。

もし、それでも「カリスマ美容師への道」を強要すれば、またすぐに別のお店に転職してしまうことでしょう。

こうして従業員は渡り鳥のように転職を繰り返し、お店の側も求人募集を繰り返すという悪循環に陥ってしまうのです。

僕に言わせれば、そもそもの「設定」と「設計」が間違っています。

だからこそ、「経営者が目指す方向性」と「現場の従業員の方向性」が、いつまで経っても一致しないのです。

美容室に限らず、おそらく多くの中小企業が「人を採用したいけれど、良い人材が集まらない……」とか「採用してもすぐに辞めてしまう……」といった問題を抱えているのではないかと思います。

では、こうした問題を解決するためには、いったいどうしたらいいのでしょうか?

髪を切る美容師の手元
写真=iStock.com/wideonet
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/wideonet

■疲れ切った美容師に「もっと働け」は酷

ここで、まず考えなければならないのは「自分が作ることができる設定と設計は何か」という点です。

例えば、あなたが水力発電の事業を始めたいとしましょう。

一番簡単なのは、すでに流れている川のほとりに、発電のための水車を置くことです。

これが、最も簡単な事業の作り方と言えるでしょう。

にもかかわらず、多くの経営者は、川から自分で作ろうとします。

当たり前の話ですが、川をイチから作るのは大変です。

こうしたやり方では、おそらく川が完成する前に、水力発電の事業から撤退してしまうのがオチではないでしょうか?

話を美容室に戻しましょう。

先ほどお話ししたとおり、多くの美容室において、求人をかけて集まってくるのは、いくつものお店を渡り歩いて疲れ切った美容師がほとんどです。

そうした人たちに「もっと働け」「もっと稼げ」「もっと成長しろ」と言うのは、さすがに酷ではないでしょうか?

そういった強要をすれば、さらに疲弊して、ますます生産性が落ちていくことは火を見るよりも明らかです。

そこで、僕が言う「設定」と「設計」が必要になります。

■従業員の離職を抑えると、3倍の成長スピードになる可能性

設定とは、再現性のあるものをどういう人が喜んでくれるか、その「ターゲット」のことです。

一方、設計は「こうしたらこうなる」という原理原則に基づいた「マニュアルと環境で再現できるもの」(ビジネスモデル)になります。

まず設定とは、簡単に言うと「ターゲット」のことですから、ここでは「疲れ切った美容師」ということになります。

カードゲームに例えれば、手持ちは「疲れ切った美容師」というカードしかないわけですから、そのカードで勝つ方法を考えなければなりません。

この場合、「キングさえ持っていれば……」とか「クイーンが欲しい」といった無い物ねだりは無意味です。

では、疲れ切った美容師たちを戦力にして勝つためには、どんな制度を設計するべきなのでしょうか?

そうした美容師たちに対して、どういった制度を設計すれば、喜んで働いてもらえるのでしょうか?

なぜ、お店を辞めてしまうのか?

僕のところに相談に来てくださる美容室のオーナーさんに、「今までに何人ぐらいの美容師が辞めていきましたか?」と聞くと、「だいたい10人ぐらいです」とおっしゃる方が多いです。

そこで、「仮にその10人が辞めなかったとしたら、業績はどれくらい上がっていると思いますか?」と聞くと、たいてい次のように答えます。

「おそらく、今の3倍は売上が上がっていると思います」

みんな分かっているのです。

本当は3倍のスピードで成長できるのに、3分の1になってしまっている……。

その大きな原因の1つは、従業員の離職を抑えることができない点にあります。

「あの人さえ辞めなければ、うちの会社の業績はもっといいはずなのに……」

もしあなたが経営者であれば、思い当たる節があるのではないでしょうか?

いったいどうすれば、従業員の離職を抑えることができるのでしょうか?

2種類のはさみを持つ美容師
写真=iStock.com/Svitlana Hulko
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Svitlana Hulko

■美容師が退職する3つの理由

社員面接などの際に、「なぜ前のサロンを辞めたのか?」を丹念に聞いていくと、その理由は、主に次の3点に集約されます。

①休みを取れない
②給料が少ない
③人間関係が気に入らない

③の「人間関係の煩わしさ」は、美容室に限ったことではありませんが、①と②は、この業界の「定番の悩み」と言えるでしょう。

大事なのは、これらの要因を1つひとつ潰していくことです。

なぜなら、こうした「美容師の悩み」を逆手にとると、①~③の問題を解決してあげることさえできれば、よほどのことがない限り、お店を辞めないからです。

経営者に求められるのは、「いくつもの悩みを抱えた従業員に対して、全てクリアさせる労働環境を設計してあげること」です。

序章で「置きに行くことが大事」という主旨の話をしましたが、従業員が求めているのは、まさに①~③の問題を解決してくれる職場であって、そうした器(設計)を作ることが、僕が言う「置きに行く」ことなのです。

では、先ほどの3つの問題をクリアさせる労働環境を、どのように設計すればいいのでしょうか?

順を追って、見ていくことにしましょう。

■「どれくらい働きたいのか、休みたいか」を自分で調整できる

まず①ですが、美容師の「休みを取れない」という悩みを解消させるため、ディアーズでは「週休3日制」を採用しています。

なぜ週休3日に落ち着いたのかというと、例えば主婦の場合、週休2日だと子供に全ての時間を取られてしまうからです。

一方、週休3日であれば、土日に子供に時間を割いても、残り1日は自分の時間を持つことができます。

そうすることで、肉体的にも精神的にも余裕が生まれます。

ディアーズでは「フレックス制」を採用しているので、働く時間は自由。

また次回予約を採用しているので、自分が休みたい日にちに合わせて調整すれば、1週間の旅行などの長期休暇が可能です。

お客様の「次回予約の日」を、自分が休みたい日にちに合わせて調整すればいいので、休暇の日程を、基本的に自分で決めることができます。

フレックス制なので、夜に飲み会が入っている日には、15時に仕事を終えて、翌日は昼の12時に出勤するといったことも可能です。

一方、「もっと働きたい」と考えている方は、そういう働き方を選択することもできます。

給料は一定の売上までいけば、それ以降は歩合制を採用しています。

つまり、「どれくらい働きたいのか」「どれくらい休みたいのか」を、自分で調整できるシステムになっているのです。

「週休3日にすると、その分、美容師1人あたりの生産性が下がってしまうのではないでしょうか?」

ひょっとしたら、そのように思われるかもしれませんね。

ですが、一般的なサロンの美容師1人あたりの1カ月の平均的な売上が50万~60万円なのに対し、ディアーズでは、どの美容師も月80万~100万円をコンスタントに売り上げます。

なぜ週休3日でも、ディアーズの美容師は高い生産性を叩き出すことができるのでしょうか? その秘訣(ひけつ)については、これから本書にて明らかにしていきます。

客と話しながら髪を切る美容師
写真=iStock.com/yamasan
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/yamasan

■仲良くなるから、ストレスが生まれる

最後に③の「人間関係が気に入らない」について考えてみましょう。

厚生労働省の2016年の調査によると、職場のストレスの上位3つは次のとおりになるそうです。

①仕事の質・量(53.8%)
②仕事の失敗、責任の発生等(38.5%)
③対人関係(セクハラ・パワハラを含む)(30.5%)

この調査から分かるのは、従業員のストレスは仕事の内容だけでなく、職場の人間関係にも大きく左右されるということです。

仕事の内容だけでなく、人間関係も改善しないと、職場におけるストレスを減らすことはできません。

そして、仕事のストレスはもちろんのこと、人間関係のストレスもやり方次第で改善できるはずだというのが、僕の基本的な考え方です。

そもそも人間関係のストレスというのは、どこから生まれるのでしょうか?

それは一言で言うと、仲良くなることから生まれます。

仲良くなるから、ケンカが生まれます。

距離が近くなるからこそ、そこに摩擦が生まれるのです。

普通のサロンでは、朝礼やミーティングなどを行い、従業員の結束を固めるのが一般的です。

一方、ディアーズの現場では、朝礼やミーティングは一切行いません。

なぜなら、従業員がそれぞれ自分の仕事に徹してさえくれれば、あえて結束をする必要はないからです。

もちろん、仲良くなること自体を否定はしませんが、ケンカさえしなければ、従業員同士が仲良くなる必要はないと僕は考えています。

人間関係においては、「大事だから仲良くなりたい」ではなく、「大事だからこそ、あえて距離を詰めない」という考え方も大切ではないかと思うのです。

ディアーズ直営店の現場社員は全て女性ですが、女性同士というのは、いったん関係がこじれると、「絶対に許さない」というゾーンに入りがちです。

男性の場合は話し合いによって解決することも多いのですが、女性の場合は感情が先走ってしまうケースが多く、意見や主義主張の擦り合わせが男性以上に難しいと感じています。

そのため、人間関係がこじれないように、僕は「現場の人間関係が近くなりすぎないための工夫」=「適切な距離を保つための工夫」を心がけています。

■仲の良い2人同士の食事会は経費にならない理由

例えばディアーズでは、みんなで行く食事会にのみ、会社からお金を出すというシステムを採用しています。

一方、仲の良い2人同士で行く食事会には、お金を出しません。

そうすると、社員としては「2人で行くよりも、みんなで行った方がいいね」となります。

なぜ、こうしたシステムを採用しているのかと言うと、仲の良い人たちだけで食事に行くと、仕事や職場の人間関係に対する愚痴が必ず出るからです。

愚痴を言い合うことで、職場に対する不満が高まっていけば、人間関係がこじれ、最終的な離職に繋がりかねません。

そうした事態を避けるため、みんなで行く食事会は何回行っても、会社から代金を支給するようにしています。

北原孝彦『たった4年で100店舗の美容室を作った僕の考え方』(横浜タイガ出版)
北原孝彦『たった4年で100店舗の美容室を作った僕の考え方』(横浜タイガ出版)

実際、このシステムはうまく機能していると感じています。

みんなで行く食事会に関しては、金額の上限を決めていないので、コースで1人1万円以上かかるような領収書が回ってくることもあります。

金額を見て「おお!」と驚くこともありますが、僕は必要経費だと考え、気持ちよく支払うようにしています。

そうした食事会が、社員同士の「適正な距離」を保つために役立つのであれば、これほど安いものはありません。

食事代を支給することで、社員の普段のがんばりをねぎらうこともできますから、まさに一石二鳥と言えるでしょう。

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北原 孝彦(きたはら・たかひこ)
Dears(ディアーズ)グループ代表
1983年長野県生まれ。理美容専門学校を卒業後、長野県の美容室へ。入社3年で店長に抜擢され、ブログやメルマガを活用して新規集客を拡大。同時に独自でWEBメディアを運営し、アフィリエイターとしても活躍。勤めていた美容室を退社後、2015年5月に美容室「Dears(ディアーズ)」1号店を地元に開業。2020年12月には全都道府県出店。美容室にとどまらず、エステ、アイラッシュなども展開し、2023年10月時点260店舗出店。その他にも年商8億規模の通販サイト、300社以上が登録するHP事業、美容商品卸事業、シェアオフィスなど、複数の事業を運営。また、160社の顧問でもあり、経営者、起業家に日々様々な助言と改革を行う。現在は新規事業の立ち上げや2000名以上が本気で学ぶビジネス勉強コミュニティ「北原の精神と時の部屋」の運営に注力。

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(Dears(ディアーズ)グループ代表 北原 孝彦)

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