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僕たちはまだ本当の紅白を知らない…ジャニーズ不在の紅白が解き放つ「日本一の音楽番組」としての真の実力

プレジデントオンライン / 2023年10月13日 11時15分

NHKホール(写真=Kakidai/CC BY-SA 4.0/Wikimedia Commons)

今年のNHK「紅白歌合戦」にジャニーズ事務所のタレントは出場するのか。コラムニストの木村隆志さんは「その可能性はかなり低いだろう。むしろNHKは『脱ジャニーズ』を印象づけ、番組への注目度を高められる。例年以上に見応えのある内容になりそうだ」という――。

■本当に今年の紅白は「ジャニーズなし」になるのか

9月27日行われたNHKの定例会見は、業界関係者のみならず、多くの人々を驚かせた。

稲葉延雄会長がジャニーズ事務所のタレントへの新規出演依頼は、「被害者補償と再発防止の取り組みが着実に行われると確認されるまでは行わない」ことを明言。その後、山名啓雄メディア総局長が大晦日の『NHK紅白歌合戦』にも該当し、このままでは起用ゼロになることを明かした。

だからこそ10月2日に行われたジャニーズ事務所による2度目の会見は、その行方を左右するものとして注目されたが、「被害者補償の具体的なスケジュールや終了のメドは示されず」「新会社のガバナンスも不明瞭なものに留まる」「“NGリスト”が流出してしまう」という散々な結果で終了。6日に発表された『NHK紅白歌合戦』の司会4人の顔ぶれにもジャニーズ事務所のタレントはいなかった。

ネット上には、ジャニーズタレントたちの『NHK紅白歌合戦』出場を絶望視する声と、「まだ間に合うのではないか」と希望を抱く声に二分されているが、実際はどうなりそうなのか。

この2週間程度、各局のテレビマンや、長年『NHK紅白歌合戦』を取材してきた編集者、記者、芸能リポーターなどから聞いた声をベースに今年の放送を占っていく。

■「他の事務所に移籍してもらいたい」

現在ジャニーズ事務所の所属タレントたちは、新会社とのエージェント契約締結に向けての話し合いを進めているという。

しかし、「それぞれグループか個人でエージェント契約を結べば、各局やスポンサー企業との新規契約が再開できるか」と言えば、答えは「NO」。被害者への補償に一定以上のメドが立って「ほぼ終わった」という状態になり、新会社のクリアな体制が認められなければ新規契約の再開は難しい。各局・各社が様子をうかがい合ってなかなか「GO」を出せないチキンレースのようになる可能性すらあるという。

そのため業界内には、「個人はもちろんのこと、できればグループごと他の事務所に移籍してもらいたい」という声すらあがっている。「ジャニーズと手を切れば新規オファーができるのに」と言いたいのだろう。

所属タレントの出演番組でスポンサー企業がCMを取り下げ、「穴埋めにACジャパンのCMが放送される」という事態が起きはじめているのだから無理もない。局に寄せられるクレームなども含めて、これまでの「一定の視聴率確保」という程度の理由では、起用したくてもできないのだ。

特に公共放送である上に報道局の力が強いNHKは、ジャニーズ事務所の動きを慎重に見極めなければいけないだけに、「11月中旬の出場者発表には間に合わない」と見る向きが多数派を占めている。

■「追加発表」で選ばれるアーティストの特徴

ならば近年の定番となっている「“12月に入ってからの追加発表”なら間に合うのではないか」という声もあるが、NHKがよほどキャスティングに困らない限り難しいだろう。

たとえば昨年の追加発表は、藤井風、松任谷由実、加山雄三、milet×Aimer×幾田りら×Vaundy、back number、桑田佳祐 feat. 佐野元春、世良公則、Char、野口五郎、THE LAST ROCKSTARS、安全地帯とテレビ出演の少ないアーティストに限られていた。

追加発表には、日ごろテレビに出まくっていたジャニーズとは真逆の希少性やサプライズ感が求められているのだ。少なくとも業界内では「1980年以来、44年ぶりの出場ゼロ」という見方が日ごとに増している。

では、ジャニーズのタレントが出演しないことになった場合、今年の『NHK紅白歌合戦』はどうなるのか。

ここ5年間を振り返ると、2018年は5組、2019年は5組+ジャニーズJr.によるジャニー喜多川の追悼企画、2020年は7組(Snow Manは辞退)、2021年は5組、2022年は6組が出演した。ジャニーズのタレントが出なければ、5・6組のアーティストが代わりに出演することになる。

例年、『NHK紅白歌合戦』の選考基準は、「その年の活躍」「世論の支持」「番組の企画・演出」の3つ。セールスやストリーミングなどにとらわれすぎず、NHKが行う世論調査の結果や、企画・演出を重視して先行すれば、「5・6組の枠は埋められる」などと深刻に見られていない。

ステージを撮影しているカメラ
写真=iStock.com/BirdHunter591
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/BirdHunter591

■「代わりのアーティストがいくらでもいる」

民放のあるテレビマンと話したとき、「脱アイドル路線を打ち出す最大のチャンス」「各ジャンルの一流に声をかければいいだけではないか」「むしろ日本一の音楽番組というイメージを取り戻せるかもしれない」と言っていた。

たとえば、ジャニーズ以外の男性アイドルやダンスボーカルグループ、新旧の人気バンド、レジェンドシンガー、ネット発、海外アーティストを1組ずつ集められたら枠は埋まるだろう。

その意味でNHKは日ごろさまざまなジャンルの若手アーティストを『Venue101』、実力派の中堅・ベテランを『うたコン』でオファーしていて、しかも両番組は『NHK紅白歌合戦』と同じ生放送。また、大物アーティストを特集した『SONGS』や『NHK MUSIC SPECIAL』などの音楽番組もあり、多くのアーティストや芸能事務所との関係性を築けている。

だからこそ今年の「ボーダレス -超えてつながる大みそか-」というテーマにふさわしい、世代、ジェンダー、ジャンル、国籍などを超えたアーティストを集められるはずだ。

この2週間程度、取材した限りでは、「NHKが視聴率さえ気にしすぎなければ、芸能界には代わりのアーティストがいくらでもいる」と見なす声が多かった。

もともとジャニーズファンの熱気や動員・物販の強さは間違いなく認められている一方で、彼らを純粋にアーティストとして見ているかと言えば疑問符が付いてしまう。もちろんタレント本人たちに罪はないが、忖度(そんたく)という恩恵を受け、正当な競争が行われてこなかった以上、仕方がないように見える。

■苦労するのは民放の音楽番組

NHKが毎年キャスティングで苦労しているのは、視聴率獲得につながる大物やサプライズへのオファーであり、ジャニーズの動向には関係のない追加発表のところだった。今年は11月中旬の出演者発表も、その後の追加発表も、「“脱ジャニーズ”を印象づけて注目度を高める」というPR手法になるのではないか。

では民放各局で放送される年末の長時間音楽特番はどうなのか。

年末の主な音楽特番は、『ベストヒット歌謡祭』(日本テレビ系、読売テレビ)、『テレ東60祭ミュージックフェス(仮)』(テレビ東京系)、『日テレ系音楽の祭典 ベストアーティスト』(日本テレビ系)、『FNS歌謡祭 第1夜・第2夜』(フジテレビ系)、『CDTVライブ!ライブ!クリスマスSP』(TBS系)、『ミュージックステーション ウルトラSUPER LIVE』(テレビ朝日系)、『発表!今年イチバン聴いた歌 年間ミュージックアワード』(日本テレビ系)、『輝く!日本レコード大賞』(TBS系)などがある。

『NHK紅白歌合戦』以上にジャニーズのタレントが多数出演していた音楽特番も多いだけに、例年とは異なるキャスティングが求められているのは間違いないだろう。

今年トップクラスのセールスを記録したSnow Man、SixTONES、King & Prince、なにわ男子はもちろん、KinKi Kids、NEWS、関ジャニ∞、KAT-TUN、Hey! Say! JUMP、Kis-My-Ft2、Sexy Zone、ジャニーズWEST、Travis Japan、さらにジャニーズJr.の出演もあっただけに、その穴は大きいと言わざるを得ない。

■逆に例年以上に見応えがある番組に

彼らの行方によっては、1組あたりの演奏曲数や映像企画の増減などで調整したいところだが、土壇場で出演を発表できればインパクトが大きいだけに、制作サイドはギリギリまでジャニーズ事務所と所属タレントたちの動向を注視していくのではないか。

ともあれ、『NHK紅白歌合戦』も、民放各局の長時間音楽番組も、ジャニーズ勢がいないのであれば、それこそ腕の見せどころであり、キャスティング力、企画力、演出力などが試されるだろう。それが如実に表れるという意味では、例年以上に見応えがあるものになるかもしれない。

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木村 隆志(きむら・たかし)
コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者
テレビ、エンタメ、時事、人間関係を専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、2万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

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(コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者 木村 隆志)

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