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「人と群れずにいられるか」ストレスのない人間関係を長く続けるために必要なたった一つのこと

プレジデントオンライン / 2023年10月30日 8時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/metamorworks

心地よい人間関係を長く続けていくにはどうすればよいのか。エッセイストの松浦弥太郎さんは「一人でいられる自分をつくる。人と群れないことで、さまざまなストレスは減っていくし、自分を見失わず、心がおだやかな状態を保って築く人間関係のほうが、長く続いていく」という――。

※本稿は、松浦弥太郎『眠れないあなたに おだやかな心をつくる処方箋』(小学館)の一部を再編集したものです。

■仲良くなることが良いこととは限らない

もしかしたらあなたは、「仲良くなること、イコール良いこと」と思い込んでいないでしょうか。

そして、「仲良くならないこと、イコール良くないこと」と考えていませんか。

とくに春になると、入学式やクラス替え、入社式、部署異動などで、新しい人間関係が生まれます。同時に、できるだけ仲良しのひとをつくらなければ、と、焦ったりするものです。

でも、僕は、「ちょっと待って」と思うのです。

さみしいからといって、うっかりひとに好かれようと努めてはいけないと思うのです。そのために仲良くしようとしないこと。それよりも、まずはひととしてたいせつなことをたいせつに生きる。一人でいられる自分であることが大事なのです。

とはいえ、日々を暮らしていく中で、人間関係のことをまったく気にせずに生きていく、ということは、難しいことです。誰もが、誰かとつながって生きているからです。

■人間関係の最終的な目的とは

では、人間関係の最終的な目的は何なのでしょうか。

僕は、「仲良くなること」ではないような気がするのです。

親しくなろうとして相手に合わせるあまり、ひととしてたいせつなことを忘れ、自分が窮屈になってしまう。そんなことより「適度な距離感で付き合っていく」ことのほうが、何倍もたいせつだと思います。若いころの僕には、それがわからなくて、つらい日々を送った経験があります。

やっぱり、一人でも多くの友だちをつくって、仲良くなりたい。好かれたい。みんなで集まるイベントがあるのなら、いつでも呼ばれる自分でいたい。

そう考えて、どんなひとに対しても笑顔で接し、自分の意見がちょっと違っていても、口をつぐんでいました。八方美人的に、一所懸命つくり笑いを浮かべながら、みんなの話に合わせていたのです。

そんな毎日を送っていれば、友だちも飛躍的に増えていきます。遊びに行く機会も、どんどん増えていきます。でも、僕は次第に気づくようになりました。友だちが増えるということは、そのぶん、人間関係のストレスも増え、同時にわずらわしいことも起きやすくなるということに。

「このひとと仲良くすると、あのひとと仲良くできないな」「どっちも友だちだけれど、彼と彼女は、もう別れてしまったし、どちらの約束を優先させようか」

そんな些細なストレスが、次々に生まれてきました。そして僕は、どんどん面倒ごとに巻き込まれるようになったのです。

「こっちの誘いを断ったのに、なんで、あっちの集まりに参加しているの?」

そう思われたりすると、自分なりの言い訳をいちいち考えなければなりません。そんなことが増えてくると、苦痛以外のなにものでもなくなってしまいます。

■仲間割れに巻き込まれ板挟みに

友だちや知り合いが多いことが、一番たいせつだと思っていたのに、結果として、自分自身が疲れてしまうことになりました。友人同士の仲たがいもあったし、僕の言った言葉のせいで、仲間割れが起こり、「どっち側なんだ?」と板挟みになってしまうこともありました。

それどころか、僕はいちばん大事なものを失ってしまったのです。友だちとの関係を良好に保つために忙しくしているうちに、「自分と向き合う時間」をまったくなくしてしまったのです。それは、仲間割れによる苦痛と同じぐらい、僕にとって大きなストレスとなりました。

そして、僕は気づいたのです。「友だちをたくさん増やしても、いいことなんてない」のだと。

それからは、あえて、友だちから距離を置いて、一人の時間を増やし、自分自身と向き合うことをたいせつにするようにしました。

「TIME FOR ME」と書かれた紙
写真=iStock.com/celiaosk
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/celiaosk

■自分と向き合う時間の大切さ

引きこもるのではなく、一人でいられる自分をつくる。いわば、誰ともつながっていなくても平気な自分でいる。そして、誰かと一緒に、という考えを持たない。他人や社会に流されるのではなく、自分の人生を生きる。そのために必要なことはなにか。学ぶべきことはなにか。変えるべきことは何かを考えました。

かんたんではありませんが、そう考えるようになった僕は、自分自身の心が凪(な)いでいき、だんだんおだやかになっていくのを感じることができたのです。

僕にとって、自分自身と向き合う時間を持っておくことが、どれほどたいせつなことだったのか、そのときに痛感しました。

誰でも子どものころには、自分の気持ちに蓋をして、無理やりグループに属したり、大勢の意見に合わせようとしたりしてしまいがちです。教室で、一人でいると「かわいそう」と思われるから、できるだけ群れようとしてしまいがちです。けれども、大人になると、一人でいることは、かわいそうなことでも恥ずかしいことでもないとわかります。

他人と群れずに、適度な距離感を保つことで得るメリットは、心をおだやかにできることだけではありません。ひとに対し、誠実な態度を取れるようにもなります。ここちのよい距離感を保つことで、さまざまなストレスは減っていくし、自分を見失わず、心がおだやかな状態を保って築く人間関係のほうが、長く続いていくのです。

■少なくとも「よける」ことはできる

生きていると、思いもよらぬタイミングで、さまざまなトラブルが身に降りかかってきます。もしくは感じることがあります。良い関係だと思っていた相手の態度が、急に変わってしまうようなこともあるものです。けれども、常に距離感を保つ、自分を見失わない、ということを心がけていれば、少なくとも「よける」ことができるのです。

もう一度言います。さみしいからといって、ひとに好かれようと努めてはいけません。それよりも、まずはひととしてたいせつなことをたいせつに生きる。一人でいられる自分であることが大事なのです。

女性が空を飛ぶイメージ
写真=iStock.com/mapo
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mapo

■人に大きな期待をしない

人間関係の話を、さらに続けましょう。

僕は、どんなに仲良しだとしても、そのひとに対して「大きな期待」をしないということを、いつも心がけるようにしています。

そもそも「期待」って、とってもわがままな感情だと思いませんか。

勝手に、そのひとのことを持ち上げて、このひとなら、自分の望み通りに動いてくれるはずだ、それどころか、自分が望んでいた以上のパフォーマンスをしてくれるはずだ、と思い込んではいないでしょうか。そういうことは、とてもおこがましいことだと僕は思うのです。「おこがましい」というのは、自分勝手だ、と言い換えることができるかもしれません。

あなたは、僕が「大きな期待をしない」などというと、なんだかすごく冷たい印象を抱くかもしれません。

でも、僕は、自分が冷たい人間などとは思っていません。むしろその逆です。「大きな期待をしない」という気持ちにたどり着いたのは、人間関係のストレスの多くは「期待」が原因であり、その期待とは、あまりにも一方的だと気づいたからです。

誰でも、悪気がなくても失敗することはあります。僕だって、なんとか自分なりによりよい生き方をしていこう、心地よい生き方をしたい、とは、いつも思っています。

でも、どう考えても、僕自身、完璧な人間ではないし、そもそも完璧な人間など、どこにもいるはずがありません。「誰もがみな、不完全である」ということを、前提にしておかないと、いけないのです。

それを前提に考えてみると、相手に対して「期待」の気持ちを持とう、だなんて、あまりに勝手すぎると思ってしまうのです。そう思いませんか? みんな、まじめに生きているとはいえ、他人の期待に応えるために生きているわけでもありませんし、どうしてもできないこと、失敗してしまうことは、いっぱいあるはず。そんなつもりはなくても他人に迷惑をかけてしまうことも、たくさんあります。「ひとは不完全である」という、その前提を、僕は忘れないようにしたいのです。

■大きな期待はせずとも尊敬し信頼する

「大きな期待をしない」ということは、相手に尊敬の気持ちを抱かないということではありません。信用しないことでもありません。

松浦弥太郎『眠れないあなたに おだやかな心をつくる処方箋』(小学館)
松浦弥太郎『眠れないあなたに おだやかな心をつくる処方箋』(小学館)

僕は、仕事で出会うひとたちから、いろんな刺激をもらってきました。たとえば、同僚や先輩たち、取引先や関係者といったひとたちは、いろんな現場に行って、いま起きている最前線のトピックを知り尽くしています。いま、いちばんおいしいお菓子をつくるパティシエは誰か。この近くで、おだやかな時間を過ごせるカフェはどこか――。四方八方にアンテナを張って、情報の最先端を追いかけて生きている。そんな彼ら、彼女たちから聞く話は、じつに刺激的です。

僕自身の足で情報を集めるのには、限界がありますし、そう簡単に、あれこれと話を聞くこともできません。僕は彼らに深い尊敬の念を抱いています。

僕自身の仕事と直接の関係がなくても、たとえば、みずみずしい野菜を育てる農家のひと、長時間の仕事をしても疲れにくい椅子をつくってくれたひと、体調を崩したときに駆け込めるお医者さまなど、さまざまな側面から僕とかかわり、僕を支えてくれるひとがいます。そうしたひとたちのことを、僕は深く尊敬するし、そのひとたちの存在を忘れないで生きていきたい。

「Respect」の文字を持つ手
写真=iStock.com/Rawpixel
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Rawpixel

■この世界は「不完全なひとたち」で成り立っている

でも、そんなひとたちだって、完全なひとではないのです。期待をしてもできないことはある。日本で活躍するカメラマンでも、海外ロケではうまく行かないこともある。優秀な医師に、人生相談をしても的外れな答えをされることもあるでしょう。もちろん、どんなひとにも「不完全」なところはあるのです。「不完全なひとたち」で成り立っているこの世界で、尊敬の気持ちを抱きつつ、信頼しあい、風通しよくお互い生きていきたい。完全を求めない。そう僕は考えています。

ひとは自分の思うままにならないのが当たり前なのです。そのひとなりの人生を生きているのですから。

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松浦 弥太郎(まつうら・やたろう)
エッセイスト、クリエーティブディレクター
2002年セレクトブック書店の先駆けとなる「COWBOOKS」を中目黒にオープン。2006年から9年間『暮しの手帖』編集長を務め、その後、ウェブメディア「くらしのきほん」を立ち上げる。ユニクロの「LifeWear Story 100」責任編集。Dean & Delucaマガジン編集長。他、様々な企業のアドバイザーを務める。著書に『人生を豊かにしてくれる「お金」と「仕事」の育て方』『僕が考える投資について』(ともに祥伝社)、『伝わるちから』『いちからはじめる』(ともに小学館文庫)など多数。

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(エッセイスト、クリエーティブディレクター 松浦 弥太郎)

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