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いつか渋谷のハロウィンに行ってみたい…日本中から問題視される乱痴気騒ぎに、NYの若者が肯定的なワケ

プレジデントオンライン / 2023年10月29日 14時15分

「NY Future Lab ミレニアル・Z世代研究所」のメンバー - 写真=筆者提供

■「小学校のハロウィンは最高よ!」

東京・渋谷のハロウィンを訪れる若者の数は年々膨れ上がり、酔った参加者による器物損壊や残される夥しいゴミなど、問題も多い。

このクレイジーな渋谷ハロウィンは、アメリカZ世代の間でも知られ始めている。

しかし実はこのイベント、本場ニューヨークのハロウィンとはかなり違う。大きな点は2つ、文化的な違いと運営体制だ。これらの違いを比べると、今後渋谷が取るべき方向が見えてくるかもしれない。

まず最も大きな違いは、アメリカのハロウィンの主役はあくまで子供だということだ。

「ニューヨークの小学校のハロウィンは最高よ! まず学校には仮装していくのが当たり前。仮装コンテストもあるから、そのためにびっくりするようなコスチュームを着てくる子もいる」

と声をはずませるのはミクア。筆者が主催するインターFMのラジオ番組&ポッドキャスト「NY FUTURE LAB」のZ世代メンバーの1人だ。

「放課後はみんなでトリック・オア・トリートをして、お菓子をたくさんもらった。最高の思い出よ」

■「大人になったらもうやらないよ。仮装もめったにしない」

トリック・オア・トリートはよく映画などにも登場するからご存じだろう。子供たちが「Trick or Treat=お菓子をくれないといたずらしちゃうよ」と言いながら、近所の家をまわる風習だ。

他のメンバーも口を揃(そろ)えて「ハロウィンって最高!」と嬉しそうな表情になる。彼らにとってハロウィンは子供時代の最高の思い出だ。

「でも、トリック・オア・トリートしたのは15歳くらいまでかな。大人になったらもうやらないよ。仮装もめったにしない。仕事もあるしね」

アメリカのハロウィンは元々子供のためのお祭りだ。大人も職場によっては、仮装して通勤するのが許されるところもある。空港のカウンターなどでも仮装したスタッフが客を迎える。

そしてニューヨークには、毎年200万人を動員する世界最大のイベント「ビレッジ・ハロウィン・パレード」もある。しかしそれは、楽しかった思い出を再現する日、あくまで童心に帰る一日だ。

夜のパレードにも、大人は子供と一緒に参加する場合が多い。

■路上飲酒は禁止で、企業や警察も運営に携わる

「ビレッジ・ハロウィン・パレード」は今年でちょうど50回目を迎える。5万人が仮装して参加、200万人もの観衆が沿道を埋める、夜のパレードだ。

巨大な骸骨のパペットをはじめ、工夫をこらしたクリエイティブでアーティスティックな仮装が練り歩く。見物客の多くも仮装している。

でも、酔って暴れる人はまずいない。理由のひとつは、そもそもニューヨークでは路上での飲酒が禁止されているからだ。警察の警備もしっかりしている。

もうひとつは、前述したようにハロウィンはそもそも子供中心のイベントというのも大きい。子連れの参加者も多く、ごった返す中にもハッピーな雰囲気が漂っている。

また、日本との大きな違いは、自治体、企業、警察などが協力し、イベントを安全に行うための体制がしっかりしていることだ。ニューヨーク市はもちろん、コカ・コーラなどの大手企業、シューズメーカーのクロックスや、エナジードリンクのモンスターがスポンサーとして参加。

さらに地元のレストランやホテルなども運営資金を提供している。終了後の清掃も予算に組み込まれている。地元のお店や行政機関、警察などが街をあげて一致協力、運営しているのだ。

■イテウォンでの雑踏事故があった後だが…

そんなアメリカZ世代にとって、渋谷のハロウィンはかなり奇妙なものに見えている。

ハロウィンを前に渋谷駅前に出現した「渋谷はハロウィーンイベントの会場ではありません」というポスターは、アメリカの若者に人気のソーシャル・ニュースサイト「Reddit(レディット)」でも話題を呼んだ。写真には「渋谷区長が今年のハロウィンに渋谷を訪れないよう呼びかけている。人々が楽しむことが、公共の安全に対する大きな脅威と見られている」と説明が書かれている。

これに対し、多くのコメントがついた。

「昨年の韓国・イテウォンでの雑踏死傷事故があった後では当然では?」
「渋谷の路地ってけっこう狭いんでしょう? 人が殺到するのは危険だよね」
「スクランブル交差点に、あれほど人がいる経験をしたのは初めてで怖かった」
「問題なのは、酔っ払った大量の人が交通を滞らせることなんだ。緊急車両がなかなか通れなかったり、乱闘騒ぎも起きたりしているからね」

などと、羽目を外しすぎてしまう日本の若者に対し、批判的な声が目立つ。

■日本人が「唯一の羽目を外せる日なのでは?」

これについてラボのメンバーに聞くと、複数人が渋谷の様子に否定的な反応だったが、日本のアニメが大好きなメアリーだけは「いつか渋谷のハロウィンに行ってみたい」と肯定的だった。

「日本人って秩序を重んじる国民性でしょう。ハロウィンはそんな彼らが、唯一の羽目を外せる日なのでは? たった一日くらい楽しませてあげればいいのに」

そしてこう続ける。

「興味深いのは、アメリカのハロウィンが子供向けのイベントなのに比べ、渋谷のハロウィンに参加しているのは大人ばかりだよね。だから東京のハロウィンはカッコいいと思う」

さらに外国人からみると、誰も仕切ってないのにこれだけの数の人が集まるという現象が、アナーキーでおもしろく感じるようだ。またアメリカではあまり見ない、アニメのコスプレが多いことも魅力だ。そういうこともひっくるめ、他にはない日本独自のイベントに感じられる。

ヒカルに「そういう外国人がたくさん来るから、色々と禁止になるんじゃない?」と指摘されたメアリーは、「たしかに、後に残るゴミだけはなんとかしたほうがいい。そうすればもっと若者もリスペクトされるのでは」と話していた。

2016年10月29日の渋谷
写真=iStock.com/recep-bg
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/recep-bg

■アメリカ人にとってハロウィンは「危ない日」

もうひとつ覚えていたほうがいいのは、アメリカ人にとってハロウィンは基本「危ない日」だということだ。

いかに子供中心のイベントとはいえ、仮装した人に紛れて犯罪者が潜んでいても不思議ではない。だから学校も普段より早く終わるし、小さな子供たちのトリック・オア・トリートには親がついて歩く。ある意味そんな怖さも、ハロウィンの興奮を盛り上げる要素になっていた。

しかしそれも今や、ただのスリルとはいえなくなった。2017年、ニューヨークでハロウィン・テロ殺人事件が起きたからだ。

ハロウィンの午後、ハドソン川沿いの幹線道路の自転車専用路線にトラックが突っ込んだ。自転車に乗った人を次々にはねて暴走し、8人が死亡、子供を含む11人が怪我をした。過激派勢力の「イスラム国(IS)」に触発されたというイスラム教徒男性によるテロで、彼がこの日を選んだのもおそらく偶然ではあるまい。

■渋谷区は正式なイベントにするしかない

さらに159人もの人が亡くなった昨年のイテウォンでの事故も、ニューヨーカーの脳裏に強く焼きついている。ハロウィンの日には気をつけて行動する。それがニューヨークでは大人にも子供にも常識となっている。

だからこそ、ニューヨークのパレードはきちんと秩序だった運営がなされており、警備も万全なのだ。

では、渋谷のハロウィンは、今後どこへ向かえばいいのだろうか。

いくら「来ないで」と呼びかけても若者が訪れてしまうのなら、安全を最優先に考え、行政と地元企業が協力して正式なイベントにするしかないだろう。そうなると今のアナーキーな魅力は薄れてしまうかもしれないが、安全を確保しつつ楽しむためには大人の協力が不可欠だ。

そして何よりも、楽しいハロウィンは危険も隣り合わせの日であることを、日本の若者は頭のすみにおいて行動してほしい。

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シェリー めぐみ(しぇりー・めぐみ)
ジャーナリスト、ミレニアル・Z世代評論家
早稲田大学政治経済学部卒業後、1991年からニューヨーク在住。ラジオ・テレビディレクター、ライターとして米国の社会・文化を日本に伝える一方、イベントなどを通して日本のポップカルチャーを米国に伝える活動を行う。長い米国生活で培った人脈や米国社会に関する豊富な知識と深い知見を生かし、ミレニアル世代、移民、人種、音楽などをテーマに、政治や社会情勢を読み解きトレンドの背景とその先を見せる、一歩踏み込んだ情報をラジオ・ネット・紙媒体などを通じて発信している。

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NY Future Lab ミレニアル・Z世代研究所 東京のFM局Interfm「Sensor」内で、毎週月曜日曜日夜19時から生放送中。これからの時代の主役となる「Z世代(10代~24歳)」と「ミレニアル世代(25歳~39歳)」にフォーカス。アメリカの若者たちは普段何を考え、何に影響を受け、どんな性質や特徴があるのか、ミレニアル・Z世代評論家のシェリーめぐみが座談会形式で彼らの本音を引き出しながら、ダイバーシティ&インクルージョンなどこの世代ならではのキーワードや彼らの消費動向についても解説していく。オフィシャルサイトで、ストリーミング配信中。Spotify, Apple, Googleポッドキャストでも配信中。

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(ジャーナリスト、ミレニアル・Z世代評論家 シェリー めぐみ、NY Future Lab ミレニアル・Z世代研究所)

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