これだけで「また会いたい」と思われる…相手を立てるのが上手い人が共通して口にする10文字の言葉
プレジデントオンライン / 2023年11月10日 17時15分
※本稿は、森優子『相手を立てるのがうまい人 仕事・人間関係がポジティブに変わる!』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
■相槌を打ちながら共感の気持ちを表現し、相手の話をさえぎらない
相手を立てるのが上手な人は、常に「相手ファースト」を心がけています。
この「相手ファースト」こそ、円満な人間関係を築く秘訣(ひけつ)です。
相手を立てるのが上手な人は、仕事でもプライベートでも、会話の中でまず相手の気持ちになって話を聞くことを実践しています。具体的には相槌(あいづち)を打ちながら共感の気持ちを表現して、途中で相手の話をさえぎることをしません。
まずは、全部聞いてみる。
これこそ「相手ファースト」の基本中の基本です。
私がリクルートで採用の営業をしているとき、当時の上司はいつも「お客様を主語にして話をしなさい」とチームメンバーに言っていました。
私は最初、この言葉の意味をあいまいにしか理解できていませんでした。
つまりは実感できていなかったのですね。
ところが、上司に営業に同行してもらったある企業との商談の際に「なるほど、こういうことか!」とストンと腹に落ちてきたのです。
そこには、お客様と会話をするうえで、とても大切な法則がありました。
上司が実践していたのは、「7対3の法則」でした。
7割がたお客様に話をしてもらい、自分が話すのは3割で十分ということです。
■「お客様を主語にする」とは「7対3の法則」で聞き役に徹すること
上司は軽い雑談をした後で、営業先の社長に3つの質問をしました。
「今、一番困っていることは何ですか?」
「どんな会社にしていきたいですか?」
「社長の夢は?」
そして質問をした後は、相槌を打ちながら「それはお困りですよね」「それは素晴らしい夢ですね」と、共感の言葉を口にする以外は聞き役に徹していたのです。
上司曰(いわ)く「お客様に7割話をしてもらうためには、自分が7割聞く姿勢でいることが大切。自分が話すのは3割までで十分なの」
話好きの上司がたった3割しか話さなかったことにも驚きましたが、さらに驚くべき事態が起きました。いつも寡黙で多くを語らなかった社長が、心を開いて会社の難題や夢について雄弁になっていったのです。
この日をきっかけに、私自身もお客様との会話で「7対3の法則」を意識し、実践するように変わりました。お客様が心を開いてたくさん話をしてくれることは、今後、素晴らしいご縁へと発展していくよい兆しといえるでしょう。
相手の話をたくさん引き出すためには、7対3の割合で聞き役に徹する。
これこそが「お客様を主語にする」ことの本当の意味だったのです。
お客様だけでなく、誰に対しても「7対3の法則」を心がけてみましょう。
相手を立てる心遣いで大切にしたい基本です。
■返事がなくても気にせず「挨拶は自分から」を心がける
「おはようございます」
「こんにちは」
「よろしくお願いします」
自分から明るい挨拶ができる人は、相手に好印象を与えます。
「礼儀正しい人だな」という、いいイメージを持ってもらえるのです。
挨拶は相手に対する敬意を示す、最も初歩的なマナーであり礼儀です。
つまり、自分から先に挨拶することは、相手を立てるために必要な基本的な振る舞いなのです。
私がコミュニケーション研修を担当した、ある中小企業の取締役がこんなことを嘆いていました。
「挨拶をしない人が増えていてね。廊下ですれ違っても素知らぬ顔で通り過ぎる。こちらから声をかけて挨拶をしても、よくてお辞儀をする程度なんですよ……」
会社にとって極めてよくない傾向だと感じたこの取締役は、各部門の部長たちに確認してみました。すると予想どおり、部長たちも同じような危機感を抱いていたことがわかったのです。
そこで改善策として、部長たち自らが従業員に「おはよう」「おつかれさま」と声をかけて挨拶する取り組みを始めました。
しかし、挨拶を返してはくれるものの、従業員たちの表情は暗いままです。
社内の空気も、何かよどんでいるように感じたそうです。
■若手社員のほとんどが挨拶をスムーズにできない根本原因
従業員の研修中にチャットで、「挨拶についてどう思っていますか?」と部長から質問を投げかけてもらったところ、意外な事実が判明しました。
20代と30代の従業員のほとんどが、挨拶の大切さをわかってはいるものの、挨拶をスムーズにできない、隠れた原因が発覚したのです。
その原因の多くは、「自分から挨拶しても、無視されたら怖い」「相手が視界に入った時点で、緊張してつい下を向いてしまう」という心理に根ざしたものでした。中には人見知りのため、挨拶のときでさえ言葉が出てこない人もいました。
それぞれの思いや気持ちが、私にはわかる気がしました。
立場が上の人を前にすると、緊張してしまうのは当然です。ましてや、その人が考え事をしていたり、不機嫌そうな表情をしていたりしたら、なおさら声をかけるのをためらってしまうものです。
過去に、自分から挨拶をしたのに無視された辛い経験が、ちょっとしたトラウマになっていることもあるでしょう。
もし皆さんが、同じような思いで悩んでいるなら、その悩みを前向きに振り払って、挨拶の大切さにもう一度、思いを馳せてほしいと思います。
■毎日の積み重ねで、人生が明るくなる
挨拶をしても無視されたら、「この人は今、機嫌が悪いんだな」「挨拶を返すこともできない、プライドの高い人なんだな」と思って、それ以上は気にしないことです。
それよりも、挨拶をしたら気持ちのよい挨拶が返ってきた人と、ポジティブな関係性を築いてほしいのです。毎日の積み重ねで、人生が明るくなることでしょう。
商業施設の看板デザインをしている会社の社長がしみじみと言っていました。
「挨拶をしない人が増えたけど、もったいないことだねえ。自らチャンスを逃しているようなものだよ」
この社長は冷静沈着な雰囲気を醸し出しているので、人によっては一見、近寄りがたいイメージを抱いてしまうタイプの方です。
しかし実際に話してみるととても穏やかな人柄で、ご自身の豊富なビジネスの経験に裏打ちされた、有益なアドバイスを惜しまない優しい人なのです。
私はこの社長から、仕事や生き方についての貴重なヒントをたくさん聞くことができました。
もし自分から挨拶するのを怠っていたら、この社長と良好な人間関係を築くことができず、価値ある助言をいただくチャンスを失っていたに違いありません。
そう思うと、心の底からゾッとしてしまいます。
繰り返しになりますが、自ら進んで挨拶をすることは、相手を立てるために欠かせない基盤なのです。
自分から感じのいい挨拶をすることを心がけて、相手を立てていきましょう。
そうした一見地味なことの積み重ねが、思いもよらない人生の飛躍をもたらしてくれることがあるのですから。
■「また会いたい」と思われる人の秘密
会話の中で相手を立てていくと、「よいこと」がたくさん起きていくものです。
先の「7対3の法則」についてお伝えしたとき、お客様の話に共感する上司のエピソードについて触れました。「それはお困りですよね」「それは素晴らしい夢ですね」という上司の共感の言葉によって、寡黙な社長が驚くほど雄弁に変わっていったのです。
社長からたくさん話をしていただけたうえに、社長の悩みと夢をも把握することができました。大きな、得難いメリットを手にしたわけです。
「共感的理解」という言葉をご存知でしょうか。
心理カウンセラーがお客様(患者様)の話を聞くときに、自分もお客様と同じような感情で話を聞き、相手の気持ちを理解することを指す言葉だそうです。
悲しい話なら悲しそうに、相手が怒っているなら自分も怒りの気持ちになることで、相手の立場に立って寄り添うことができます。
つまり、これも相手を立てることのひとつなのです。
会話の中で共感的理解ができるようになると、相手から「もっとこの人に話を聞いてもらいたい」と思ってもらえます。
仕事でもプライベートでも、自分の話をまるで自分のことのように共感しながら聞いてくれる人には、「また会いたい」という気持ちが自然と湧くものです。
そういえば先の上司も、社長が暗い表情で悩みを話しているときは同じく困った顔で聞き、社長が明るい表情で夢を語り始めたら、笑顔で聞いていました。
■意見が違っても、この一言を加えると嫌な感情を与えない
さて、相手を上手に立てる人がよく使う言葉に「おっしゃるとおりです」があります。皆さんも、テレビやラジオなどで、人気アナウンサーやコメンテーターの方々が使っているのを聞いたことがあるでしょう。
この「おっしゃるとおりです」は承認言葉です。「あなたの言っていることは、決して間違っていません」と承認しているのです。
承認することは、すなわち相手を立てることです。
たとえ自分の意見が違っていても、最初に「あなたの意見はわかりました」と承認をしてから自分の思いを伝えると、相手に嫌な感情を与えないですみます。
そこで有効なのが「承認」+「否定」のイエスノー方式です。
「○○さんのおっしゃるとおりです。でも私はこう思います」
「おっしゃるとおりですよね。確かにそう思います。だけど私の考えはこうです」
もし、初対面や面識の浅い人に対して、自分の考えを述べると角が立ちそうだと感じたら、「おっしゃるとおりだと思います」「確かにそうですね」とだけ言って相手を立てておきます。黙っているよりもはるかに、信頼関係を築けるでしょう。
共感も承認も、相手の思いや意見を尊重する姿勢が大切です。
共感言葉と承認言葉で相手を立てる。すると円満な関係を築けるので、相手は「また会いたい」「また話を聞いてもらいたい」と思ってくれるのです。
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コミュニケーション・アドバイザー
マリアージュコンサルタント事務所代表。短大卒業後、西武ライオンズ・西武鉄道のチアリーダーに従事。結婚、離婚を経てシングルマザーになり、(株)リクルート、(株)リクルートキャリアにて求人広告の企業営業を担当。入社2年目には、通期を通して「売上、新規売上、新規社数」の目標を完全に達成した者だけに与えられる「グランドスラム賞」を取り表彰される。ほかにも、月間MVP賞や月間売上トップ賞をたびたび獲得。その一方で、生活のため夜は銀座のクラブホステスとして14年間働く。2013年、両親の介護のためにホステスを引退。2015年より現職。著書に『感じのいい人は、この「ひと言」で好かれる』(三笠書房)、『雑談が上手い人 下手な人』『嫌なことを言われた時のとっさの返し言葉』『会話が上手い人 下手な人』(以上、かんき出版)
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(コミュニケーション・アドバイザー 森 優子)
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