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手で輪っかをつくるだけでわかる…医師・和田秀樹「要介護を招く"筋肉やせ度"をチェックする簡単な方法」【2023下半期BEST5】

プレジデントオンライン / 2024年1月11日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/artoleshko

2023年下半期(7月~12月)、プレジデントオンラインで反響の大きかった記事ベスト5をお届けします。健康部門の第3位は――。(初公開日:2023年8月17日)
年を重ねても健やかに過ごすには何に気をつければいいか。医師の和田秀樹さんは「高齢者はやせてはいけない。やせることは、筋力低下につながり要介護を招く。だが、65歳以上の高齢者の15%程度が『筋肉やせ』に該当するため、利き足でないほうのふくらはぎを両手の親指と人さし指で囲むことで簡単にチェックしてみるといい」という――。

※本稿は、和田秀樹『やせてはいけない!』(内外出版社)の一部を再編集したものです。

■欠食による体重減は、目に見えて体力が落ちる

加齢による食欲減退と体重減少(やせること)は、大きなリスクが伴います。

体重が減った!
やせた!

そんなふうに喜ぶ人が多いのですが、私にいわせるとそれは老化を早めて喜んでいる行為です。私の場合、むしろやせると強い危機感を抱きます。やせないため、老化の進行を少しでも遅らせるための対策として、私自身、次のことを強く意識しています。

いかに体重を減らさず、“ちょっと太め”を維持するか。

ちょっと太めを維持すると聞いて、驚かれた方も多いでしょう。

私はいかに体重を減らさないかを常に意識して1日を過ごしています。強く意識しないと、食べるのが面倒になったり、欠食しがちになるからです。年をとるとこんなふうに「無意識のダイエット」に陥る危険があるのです。

欠食によって栄養がとれないと、体重が減ります。そこでやせたと喜んではいけません。健康的にやせたのとは違い、このような欠食による体重減は、体内の水分減少と筋肉減少ですから、目に見えて体力が落ちて疲れやすくなり、肌に張りやツヤもなくなります。

「最近、動くとすぐに疲れる」
「日常の動作が億劫になった」
「何をするのも面倒くさい」

こんなふうな状態になると、運動量がますます減り、外出するのがだんだん億劫になります。ある日、気づいたときには「歩けない」という状態になり、将来、寝たきりになる日が来ることも否めません。

■食べ物を食べる・飲み込むには筋力が必要

「無意識のダイエットの危険」について少し解説しておきます。

高齢者は、食べる量がそんなに減っているように見えなくても、あるいは見た目の体重にあまり変化がないように見えても、体重から脂肪を引いた「除脂肪体重」の割合が減少していることがあります。

「除脂肪体重」の主要な成分は、骨格筋、結合組織、細胞内液、骨です。つまり、筋肉量が減り、骨がスカスカになり、細胞内液が減って張りとツヤがなくなるということです。

この状態にプラスして、さらに栄養障害・摂食障害、そしてダイエットなどが加わってしまうと、除脂肪体重はさらに大きく減少します。

じつは、年をとった人は、摂食障害になりやすいのです。だんだん年とともに食べる量が減ってきたことを実感している方も多いと思いますが、若いころに比べて食事量は減ってしまうものです。太りやすいのは40代、50代の中年までです。

また、年をとると食べ物がうまく飲み込めない嚥下(えんげ)障害なども起こります。食べ物を食べる・飲み込むには筋力が必要です。その筋力が衰えるため、舌で口からのどへ食べ物を送り込めなくなるのです。

また、食べ物を飲み込むときには、気道を閉じるのに必要な分だけのど仏を持ち上げなければなりません。しかしうまく持ち上げられないと、食べ物が気管に入りやすくなります。

例えば、みなさんには次のような症状はないでしょうか。

□ 食べるとむせる
□ 食事に時間がかかる
□ ゴックンと飲み込みづらくなった
□ 形があるものを噛んで飲み込めない
□ 食べると疲れる
□ 食後に痰が出る
□ 食事をすると声が変わる
□ 食べ物が口からこぼれる
□ 飲み込んでも食べ物が口の中に残る
□ 食べ物がつかえる

これらは嚥下障害の代表的な症状です。この症状が出てくると、食事がうまくとれないために体重減、低栄養、脱水症状を起こしやすくなります。気がつくと「無意識のダイエット」を行っているのと同じ状態に陥っているのです。

■コンビニで買ったパンを水で流し込むような食生活はダメ

怖いのは、飲み込んだものが食道ではなく気管に入ることです。これを誤嚥(ごえん)といいます。食べ物が気管に入ると通常はむせて気管から排出する反射機能が働きます。

しかし、年をとるとこの機能が鈍り、気管に入り込んでしまった食べ物を排出できず、肺炎を起こすリスクになります。それが誤嚥性肺炎です。これは日本人の死因の6位にあたります。

普段から食べることを面倒くさがっていると、噛んで飲み込む機能が徐々に衰えていきます。筋力は、その筋肉を使っていることを脳で意識しなければ高まりません。

怖いことに、認知症やその予備軍のMCI(健常者と認知症の中間にあたるグレーゾーンの段階にある軽度認知障害)の人たちは、筋肉の痛みや疲れを感じにくいという身体的特徴があります。

認知症になると、筋肉と感覚神経とのつながりが悪く、筋肉の情報が脳に伝わりにくくなるからです。

食事は、食べ物をただ身体に入れればいいだけではありません。必要な栄養を自分の身体に供給すること。キッチンに立ったまま、コンビニで買ったパンを水で流し込むような食生活をしていると、食べる力・飲み込む力が衰えかねません。

食べるときは、「嚥下に意識を集中する」を強く意識することが大切です。食べたことをしっかり脳に伝えましょう。

フルーツサンドを食べている人
写真=iStock.com/petesphotography
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/petesphotography

■食べ物を飲み込む6つの嚥下行動

ひとくちに「食べる」といっても、飲食物など食べるものを、「目で認識し、飲み込むまで」が摂食嚥下(えんげ)です。細かく分けると次のような6つの段階で行われています。

① 食物の認識(先行期)

食物の大きさや硬さ、粘着性、温度などを目と鼻と唇で認知します。

② 口腔への送り込み(準備期)

唇と舌を使うので、口輪筋と舌筋という筋肉を使って口の中に送り込みます。

③ 咀嚼と食塊の形成(準備期)

咬筋など口の中にあるさまざまな筋肉を動員して、食べ物をよく噛んで舌と唾液を使って食塊を形成します。

④ 舌根部・咽頭への送り込み(口腔期)

⑤ 咽頭通過、食道への送り込み(咽頭期)

咽頭から食道へ送り込みます。甲状舌骨筋という筋肉が喉頭蓋を閉じ、食塊が気道へ入るのを防ぎます。

⑥ 食道通過(食道期)

普段は当たり前のように「食べる」行為を行っていますが、食物を飲み込むためには、たくさんの筋肉が協調して、巧緻性がみごとに保たれています。

この嚥下行動は、加齢によって徐々に低下していきます。「口から食べられない=寿命」ともいわれていますから、しっかり食べられること=生命力の証といえます。

嚥下は1日に600~2000回といわれています。筋肉は、使わなければ老化していきますから、食べなければ徐々に食べる筋肉が衰えていきます。食べることは、食べるために使う「咀嚼筋トレ」を日常的に行うのと同じことです。

食べ物を咀嚼するたびに行う「咀嚼筋トレ」をすれば、イキイキとした若々しい表情を保つことにもつながります。咀嚼すると、顔の表情をつくる筋肉「表情筋(顔面神経支配)」の一部がしっかり働くからです。

食べることは、つまり見た目の老化の進行を遅らせることでもあるのです。

■噛む回数が減ると、口角が下がった老人顔になる

「噛むと認知症を予防する」とよくいわれますが、噛むと脳が刺激を受けて、認知機能の衰えを防ぐことにつながります。

食事の回数が減るということは、つまり食べ物を噛む回数が減るということ。噛まなくなると、噛むための筋線維が細くなったり、脂肪変性が起こったりして筋力の低下を引き起こします。

食べる回数が減ると、顎の変形なども起こり、「食べる力」がさらに衰えていきます。「食べる」ことによる噛む刺激が脳に伝わりにくくなり、脳の働きにも影響してくるのです。

ちなみに、老けた印象を強く与える「ほうれい線」は、頬の筋肉(表情筋)が皮膚に付着(起始・停止)することによってできる溝です。噛む回数が減ると、口輪筋が弱くなり、周囲の表情筋もあまり動かなくなり、表情が乏しくなります。

口角が下がったいわゆる老人顔になってしまいます。

表情筋が衰えると頬がたるみやすくなり、ほうれい線の溝が深くなります。食事回数を減らすダイエットをすると、顔の脂肪が減り、頬がたるんで深いほうれい線をつくる原因になるのです。

■輪っかテストであなたの「筋肉やせ度」をチェック

日本では75歳からは後期高齢者と呼ばれますが、実際この年齢を境に脳卒中や心筋梗塞、がんなどの病気にかかるリスクが増えます。また、75歳以上になると要介護の認定を受ける人の割合が大きく上昇します。

要介護になる主な原因の1位は認知症ですが、4人に1人が「高齢による衰弱」と「骨折・転倒」です。転倒の主な原因は、加齢による身体機能の低下、病気や薬の影響、運動不足です。

「やせたほうが健康によい」と信じている人が多いのですが、年をとってからやせることは、とても危険です。高齢者がやせることはイコール筋力低下だからです。ちょっとした段差でつまずいて転んで骨折したりなど、筋力低下は要介護を招きます。

年齢を重ねるにつれて筋肉量が減る老化現象をサルコペニアといいます。

サルコペニアはサルコともいわれ、ギリシャ語の筋肉「サルコ」と喪失を意味する「ペニア」を合わせた造語で、本書ではこの状態を「筋肉やせ」としてお伝えしていきます。

筋肉が減る(やせる)と、歩いたり立ち上がったりする日常生活の基本的な動作が難しくなり、転倒しやすくなります。65歳以上の高齢者の15%程度が「筋肉やせ」(サルコ)に該当すると考えられています。

ここで簡単にできる「筋肉やせ」チェックを紹介します。

【輪っかテストのやり方】
①椅子に座る
②両足裏を床につける
③前かがみになって利き足でないほうのふくらはぎのいちばん太いところを、両手の親指と人さし指で囲む(利き足がわからなければ、両足に行う)

【イラスト】輪っかテストのやり方
出典=『やせてはいけない!』(内外出版社)

【診断】
①指先どうしがつかず、ふくらはぎを囲めない→「筋肉やせ」の可能性はほぼなし②ちょうど囲める→「筋肉やせ」リスクは①の2.4倍高い
③隙間ができてしまう→「筋肉やせ」リスクは①の6.6倍高い

もしも、以前は渡れた横断歩道で青信号のうちに渡りきるのが難しくなっていたり、ペットボトルのふたが開けづらくなったなどの自覚症状がある方は、「筋肉やせ」の可能性が十分あります。

「この1年間で5㎏以上やせた」「動くとすぐ疲れる」といったことがあったら危険です。いまからでも遅くはありません。本書でご紹介するやせないための生活にいますぐ切り替えましょう。

【イラスト】診断
出典=『やせてはいけない!』(内外出版社)

■高齢者は2週間運動しないと筋肉の4分の1を失う

1週間寝たきり状態になると15%の筋力が低下します。3〜5週間では50%の筋力が落ちるといわれます。運動を2週間しないと、高齢者は筋肉の4分の1を失うというデンマークのコペンハーゲン大学の研究もあります。

同研究では、失った体力を取り戻すのに3倍以上の時間を要することも明らかになりました。

寝たきりで心身の活動性が低下することで引き起こされる病的状態を「廃用性症候群」といいます。子どもや若い人にも起こる症状ですが、加齢によって身体機能が低下していると、この症候群になりやすくなります。

骨折などで動けないと、運動量がさらに減って、心身の機能が低下します。どのような機能が低下するか、具体的に紹介しましょう。

筋骨格系

1週間の絶対安静で10〜15%、3〜5週間で50%まで低下します。動かさないために筋肉の萎縮も起こり、2カ月以内に筋肉の量は半分になります。

関節も拘縮し、動かしにくくなったり、可動域が狭くなり、転倒の危険がさらに高まります。

ですから絶対に転倒しないよう注意が必要です。骨折などしたら、寝たきりリスクがぐんと高まります。

循環器系

心臓から送られる1回の血液の量が6〜13%減少し、身体全体に酸素が運ばれにくくなります。心機能が低下し、持久力が落ちるため、疲れやすくなります。ふくらはぎに深部静脈血栓症といった血の塊ができる症状も見られます。

消化器系

活動量が低下するため食欲が低下し、やせやすくなります。引っ越して環境が変わったり、退職して生活スタイルが変わったりなど、さまざまな変化により、食欲減退や便秘症状も見られることがあります。

■やせる→転倒しやすくなる→骨折→入院→認知症へ

新型コロナウイルスによる自粛によって、外出や活動の機会が減っている人も多いでしょう。自粛すればウイルスのリスクは避けられるかもしれませんが、別のリスクを招きます。

健康な高齢者の方が10日間安静にしていると、下肢の筋肉量は6.3%減少し、膝伸展筋力は15.6%低下するといわれています。

これは、いわば10日間の安静によって、10歳年をとるのと同じくらいか、それ以上の筋力低下につながります。

下肢の筋力が低下すると、歩幅が小さくなります。片足で自分の体重を支えられないため、ちょこちょことした歩行になり、小さな段差にもつまずきやすくなります。

転倒すれば骨折につながり、入院。認知症になることもあります。

椅子に座るとき、ドスンと座ってしまう人を目にすることがあると思いますが、ドスンの原因は、膝を曲げて体重を支える筋力がなくなっているためです。

私はコロナ禍では患者さんにこんなふうに伝えてきました。

「マスコミやテレビに出ている医者の言葉を信じて自粛していると、歩けなくなりますよ。ソーシャルディスタンスをとっていれば大丈夫ですから、散歩したり、外に出かけてたくさん動いてくださいね」

私がこんなふうにいくらアドバイスしても、感染を恐れて、家族に薬をとりによこしたりなど、コロナを恐れて外出しません。

しかし、コロナにかからなくても、足腰が弱り、筋肉が落ちてやせ、ほかの病気にかかったり、認知症が進んでしまった方もこの時期大勢いらっしゃいます。

確かに散歩したり外に出かけるのが億劫になるのはわかります。私も以前はほとんど歩きませんでした。どこへ行くにも車で移動していました。

しかし、3年前に血糖値が600/dLを超え、糖尿病と診断されたとき、歩くことを始めました。するとどの薬を使っても効かなかった血糖値が、毎日歩くようにしたところ、ぐんぐん下がりました。これには私自身がいちばん驚きました。

「インスリンだけは打たない。食事とお酒も我慢しない。だから歩くことだけはする」

私のこの選択は正解だったのです。

■筋肉が減ると危険だといわれる理由

私たちの身体には、大きいものから小さいものまで400とも600ともいわれる数の筋肉が存在しています。筋肉は、身体を動かす働きのほか、基礎代謝を上げ、血液やリンパの循環を促すといったさまざまな働きをしています。

筋肉が減ると、さまざまなリスクが挙げられます。

●免疫機能の低下
●血糖値の上昇
●活動量の低下による認知機能、運動機能の低下

筋肉は、構造や働きの違いによって骨格筋、心筋、平滑筋の3つの種類に分けられます。

骨格筋……筋肉全体の約40%を占める人体最大の臓器
心筋……心臓を動かしている筋肉
平滑筋……消化管や血管を動かすことで、消化や血流の助けをする筋肉

3つの種類の筋肉の役割をあらためて見てみると、「やせて筋肉が減ったらまずいぞ」ということに気づかれるはずです。

ひとつめの骨格筋は、身体活動を支え、血液中の糖や脂質の多くを消費する「代謝臓器」とされています。この筋肉は、運動することで増やすことができます。

残念なことに私たちの筋肉量は、40歳を境にだんだん減少していく傾向にあります。30歳から減少するというデータもあります。

毎年1%ずつ減り続け、筋トレや積極的なタンパク質摂取などによって筋肉を増やす努力をしなければ、20年後には20%、30年後には30%の筋肉が減ってしまいます。

そして、60歳を越えるとその減少率がさらに加速し、70歳を越えたころから次のような自覚症状を認めるようになります。

・よくつまずく
・立ち上がるときに足の筋肉だけでは立てず、手を使う
・ペットボトルのキャップを開けるのに苦労する
・立ちっぱなしがつらい
・階段を下りるのが怖い
・猫背の姿勢のほうが楽
・すぐに疲れる
・足がむくみやすい

筋肉は活力エネルギーを生み出す工場ですから、筋肉が減ってしまえば疲れやすくなり、やる気もわきません。それだけではなく、筋肉が減ると肺炎や感染症、糖尿病などさまざまな病気のリスクも高まります。

■免疫、血液循環…筋肉の大切な8つの役割

あらためて筋肉が持つ大切な役割についてまとめます。やせること、つまり「筋肉やせ」がどれほど危険かを理解するはずです。

①姿勢を保持する

筋力が弱ると姿勢をしっかり保持できないため、自分の力でまっすぐに椅子に座れない人も出てきます。介護施設ではまっすぐに座れない人をよく見かけます。

姿勢を保持する筋肉がしっかりついていれば、加齢によって起こりやすい転倒による怪我・骨折などを予防することができます。

②血液循環をよくする

筋肉は「第二の心臓」ともいわれています。骨格筋が収縮することによって、血管が収縮し、血液を心臓へ戻すポンプの働きをします。

やせる(=筋肉が減る)と心臓へ血液を戻すことがものすごく大変で、心臓に大きな負担がかかります。階段を少し上っただけで息切れするのは「筋肉やせ」が原因かもしれません。

③代謝を上げる

筋肉は、糖質と脂質を分解してエネルギーを産み生し、熱を発生する基礎代謝を行っています。体温を一定に保ち、生命活動を維持するために必要な基礎代謝を筋肉が担っています。

筋肉がついていると、エネルギー源となる糖質と脂質の代謝がしっかり行われます。足が冷えたり、寒い寒いといって冷え性で悩んでいる方は、筋肉が減っている可能性が考えられます。

身体が熱をつくれなくなると免疫力も低下します。体温が上がると、血液中の白血球に含まれる免疫細胞が活性化され、免疫力が高まります。体温が1℃上がると、免疫力は5~6倍になるとされています。

④身体を守るクッション

身体の中には内臓や血管、神経など大切なものがたくさんあります。筋肉がないと、外部からの衝撃から大切なものを守ることができません。筋肉は重要なクッションの役割を果たしています。

⑤水分の貯蔵庫

やせて筋肉がないと、熱中症にかかりやすくなります。高齢者が夏場に脱水症状で運ばれるのは、筋肉量の減少が原因のひとつです。

筋肉は、身体全体の約6割の水分を保持しています。筋肉量が減ると、いくら水分補給をしても水を蓄えることができません。そのため脱水症状や熱中症などになりやすくなります。

⑥免疫力を上げる

筋肉は免疫力を高める作用があります。骨格筋内のアミノ酸は、リンパ球などの免疫細胞を活性化します。

筋肉量が減ると、風邪をひきやすくなったり、インフルエンザやコロナなどの感染症にかかりやすくなります。やせると免疫機能の低下につながるので、高齢者のダイエットはとても危険です。

⑦筋肉を動かすこと(運動)により、さまざまな生理活性物質が分泌される
和田秀樹『やせてはいけない!』(内外出版社)
和田秀樹『やせてはいけない!』(内外出版社)

筋肉には、生理活性物質を分泌する働きがあります。それを「マイオカイン」といい、30種類以上発見されています。

例えば、そのひとつのイリシンが血流に乗って脳に運ばれて、神経細胞を活性化する物質を分泌する、と考えられています。

ほかにも糖と脂質の代謝を促進して脂肪肝改善と体脂肪分解を促進したり、骨形成を促進して骨粗しょう症を予防したり、動脈硬化の予防、抗炎症作用、大腸がんの抑制、膵臓(すいぞう)でインスリン分泌を高める、脂肪組織を燃えやすい褐色脂肪細胞に変える……など、運動にはさまざまな効果があるのです。

⑧認知症の予防

加齢により筋量と筋力が低下すると、認知症の併存率が高いことが報告されています。長期間の入院によって認知症発症リスクが高まることも報告されています。

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和田 秀樹(わだ・ひでき)
精神科医
1960年、大阪市生まれ。精神科医。東京大学医学部卒。ルネクリニック東京院院長、一橋大学経済学部・東京医科歯科大学非常勤講師。2022年3月発売の『80歳の壁』が2022年トーハン・日販年間総合ベストセラー1位に。メルマガ 和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」

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(精神科医 和田 秀樹)

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