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不動産バブルの次は「深刻な金融危機」が訪れる…習近平主席の"自滅"が招いた中国経済崩壊のカウントダウン

プレジデントオンライン / 2024年1月29日 9時15分

中国共産党の中央規律検査委員会総会で演説する習近平総書記(国家主席)=2024年1月8日、中国・北京 - 写真=XINHUA NEWS AGENCY/EPA/時事通信フォト

■「実際の債務残高はそれよりも多い」

2023年10~12月期、中国の債務残高は国内総生産(GDP)対比で286.1%に上昇した(米国の金融情報・データ提供企業、ブルームバーグの推計)。中国専門家の間では、「実際の債務残高はそれよりも多い」との見方もあるようだ。

リーマンショック後、中国は借金を増やして不動産やインフラ投資を積み増し、GDP成長率を高めた。しかし、その成長のしくみには限界がある。借金が膨らんで、返済に懸念が出るからだ。

それに対して中国政府は、2020年8月に“3つのレッドライン(不動産向け融資規制の強化策)”を実施した。不動産関連企業の借金が課題になる前にブレーキを踏んだのである。ところが、その規制をきっかけに不動産企業の資金繰りが急速に悪化し、大規模に拡大していた不動産バブルは崩壊した。

■投資家が中国株を投げ売る恐れも出てきた

中国政府は相応の政策を打ってきたものの、今までのところ住宅価格には下げ止まりがみられず目立った効果は出ていない。ここへきて、中国政府は景気対策などのために国債発行を徐々に増やし始めた。国債増発によって債務残高は急増し、バブル絶頂のわが国や米国などを上回るまでに中国の債務残高は膨張した。

当面、中国の債務残高の増加傾向は強まる可能性が高い。一方、不良債権処理は後手に回っている。その状況が続くと、中国全体で債務不履行の懸念は上昇する。展開次第で、投資家が中国株を投げ売る恐れも高まる。今後の世界経済にとって無視できない下押し要因だろう。

■なぜ危険水準に達するほど債務残高が膨らんだのか

ブルームバーグによると、2023年10月~12月期、GDP対比の中国の債務残高は7月~9月期の284.5%から286.1%に上昇した。2008年末の時点で中国の債務残高はGDPの141%程度だった。そこから15年間でほぼ倍に膨れ上がった。

部門別に債務残高を見ると、非金融一般企業(10月~12月、167.3%)、家計(63.5%)、政府(55.3%)だった。いずれも趨勢的に増加した。2020年以降、コロナショックが深刻化してから、政府の債務残高ペースがいくぶんか強まったようだ。GDP対比の債務水準は持続可能な水準を上回ったと考えるべきだろう。

債務残高の膨張の背景には、リーマンショック後、中国政府が投資に依存した経済運営を強化したことがある。2008年11月、政府が発表した4兆元(当時の為替レートで57兆円程度)の経済対策を実行するため、地方政府は不動産デベロッパーに土地の利用権を売却した。デベロッパーはシャドーバンクなどから借り入れを増やし、マンション建設を増やした。

■バブル絶頂期の日本・アメリカの水準を上回った

地方政府は、傘下の融資平台を通して借り入れを増やしインフラ投資を実行した。債務に依存した投資増加で、2011年半ばまで経済成長率は前年比10%を上回った。マンション建設も急増し、基礎資材などの生産、雇用機会も増加した。結果として、足許の中国の債務残高は、過去、大型バブルが絶頂期を迎えた時点の日米の債務残高水準を上回った。

国際決済銀行(BIS)のデータによると、1989年末、わが国は資産バブル(株式と不動産の価格が理屈で説明できないほどに高騰した経済現象)の絶頂期を迎えた。その時点で、家計と一般企業の債務残高はGDP対比201.0%だった。2005年9月末、住宅バブルのピークを迎えたタイミングで米国の債務残高は同154.1%だった。

その後、日米でバブルは崩壊し、景気は悪化した。リーマンショックが起きた2008年9月末の米国の債務残高は同169.9%だった。日米の教訓から見ると、中国の債務残高は危険水準にあるといえるだろう。

■16~24歳の失業率が46.5%に達したという推計も

中国では、経済環境の悪化を警戒する個人や企業が増えているという。近年、債務残高の増加に伴い、景気減速が鮮明化したことがそれを示唆する。

2023年10月~12月期、中国のGDP成長率は前期比1.0%のプラスだった。7月~9月期の実績(1.5%)を下回った。基調として経済成長率は低下傾向だ。通年の成長率は名目ベースで4.6%、実質ベース(5.2%)を下回った。12月の消費者物価指数がマイナスに落ち込むなど、デフレ圧力も高まった。

主な需要項目を確認すると、2023年の個人消費(社会消費品小売総額)は前年比7.2%増加した。飲食店が20.4%増となるなど、かなりの部分が“ゼロコロナ政策”終了の反動によってもたらされたと考えられる。

スーパーに並ぶ大ぶりな野菜の数々
写真=iStock.com/ZeynepKaya
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ZeynepKaya

ただ、不動産市況の悪化で個人消費など、内需の自律的な回復は難しくなっているとみられる。雇用状況の悪化は見逃せない。特に、若年層を中心に雇用・所得環境の厳しさは高まった。中国国内では一時、16~24歳の失業率が46.5%に達したとの推計も出た。消費を減らして、債務の返済を優先しようとする家計が増加するのは無理もない。

■中古住宅価格も70全都市で下落している

昨年、民間企業の設備投資は前年から0.4%減少した。減少は、統計開始以来ではじめてと報じられた。EV(電気自動車)分野ではBYDなどが投資を増やしたが、パソコンやデジタル家電などの需要減少が大きかった。不動産バブル崩壊だけでなく、IT先端企業への規制強化も設備投資の減少要因だろう。

住宅投資の減少にも歯止めがかからない。2023年、床面積ベースの不動産販売は前年比8.5%減少、新規着工は同20.4%減少した。不動産開発投資(不動産投資)は同9.6%減少した。不動産デベロッパーの資金調達額は13.6%減だった。

それに対して中国政府は、不動産向けの融資規制を緩和した。不動産向け融資を増やすよう銀行への指導も強めた。しかし、12月、中国主要70都市の中古住宅価格は前月比0.79%下落、70全都市で下落した。なかなか歯止めかからない状況だ。

■このまま対策が遅れれば金融不安に波及する恐れ

新築住宅の下落ペースが強まるなど、今のところ、不動産市況下げ止まりの兆候は見いだせない。当面、個人消費、設備投資、鉱工業生産などの低迷懸念は高まるだろう。

景況感の悪化を食い止めるため、中国政府は景気刺激策を打つ必要がある。2023年10月、中国政府は1兆元(約20兆円)の国債増発計画を発表した。中国政府は調達した資金の使途として、自然災害からの復興などのためのインフラ投資を増やす方針を示した。

一方、債務問題が深刻な企業に公的資金を注入し、不良債権処理を急ぐ考えを明確に示していない。1990年代にわが国が経験したように、不良債権の処理が本格的に進まない中で公共事業に関連する財政支出を増やしても、景気刺激の効果は一時的なものにとどまる。

むしろ、不良債権処理の遅れによって、金融システムの不安定感は高まる。それは、個人の消費、企業の設備投資の意欲を低下させる。経済のデフレ環境も鮮明化する。そうなると、政府は追加の金融緩和を実施し、地方政府などの債券発行や銀行融資を支えようとするだろう。

■株を投げ売り→資金流出が進む負のスパイラルに

中国経済全体の効率が低下した中、公債の発行増加によるインフラ投資は不良債権の増加につながる恐れが高い。地方政府の財政状態は追加的に悪化し、融資平台を含めデフォルトや破綻は現実味を帯びる。地方政府の財政悪化は、産業補助金の減少や鉄鋼など基礎資材の生産下振れ要因になる可能性も高い。

現在の中国政府の経済政策を見ると、短期的には、債務問題は深刻化し景気低迷懸念も高まる可能性が高い。年初以降、中国株を売却する主要投資家は増加した。外国為替市場で人民元に追加的な下落圧力がかかると、中国株や信託商品などを投げ売る中国の個人投資家も増えるだろう。その場合、中国からの資金流出は勢いづく。

それが、すぐにリーマンショックのような世界経済の混乱につながるとは考えづらいが、東南アジアの新興国など、中国との関係の強い経済、資産価格の下押し圧力は高まるだろう。中国の債務問題は、今後の世界経済にとって無視できない阻害要因になりそうだ。

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真壁 昭夫(まかべ・あきお)
多摩大学特別招聘教授
1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員、信州大学経済学部教授、法政大学院教授などを経て、2022年から現職。

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(多摩大学特別招聘教授 真壁 昭夫)

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