この一杯で高齢者に不足する栄養素を補充できる…91歳・三浦雄一郎の家に伝わる「スペシャルドリンク」の中身
プレジデントオンライン / 2024年1月28日 14時15分
※本稿は、三浦雄一郎『90歳、それでもぼくは挑戦する。』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
■中高年の健康の源をつくる3つの要素
ぼくは食事で基本的に苦手なもの、嫌いなものはなく、なんでもおいしく食べられるほうです。
しいていえば、できるだけ「体にいいもの」を食べる。パンはできるだけ全粒粉、ごはんなら四分づき、五分づき、できれば玄米。
白いパンや白米ではなく、なるべく精白していない自然に近いものを食べるようにしています。添加物にも注意しています。インスタントラーメンにも手を出しませんね。
日本は味噌や納豆などの発酵食品や、海藻類も含めて、健康食に恵まれた国です。それがある意味、世界の長寿国のひとつである理由だと思います。
若いころは何を食べてもよかったし、よく飲みすぎ、食べすぎ……、まあ、いまもときどきやっていますけどね。
「60歳を過ぎたら、腹八分目よりも腹七分目がいい」なんて医者の先生はいいますが、ぼくは腹七分目どころか、ときどき腹十二分目まで食べて、「しまった!」なんてやってます。
もちろん、食べ方に気をつけるだけではダメで、とくに中高年の健康の源は食事、運動、睡眠の3点セットだというのを忘れないこと。これにプラスして「目標」の、計4点セットです。
日本人は勤勉すぎて、標準体重だの、検査結果の標準値だのを気にして、これに合わせようとしすぎる傾向があるようです。
ところが、これがかえって高齢者の栄養失調を招く原因になったりもします。
その結果、骨がもろくなったり、筋肉が弱くなったりすることも。標準体重になろうが、やせようが、元気とやる気がなくなったら何も意味はない。やはり、人生は元気モリモリ、やる気に満ちていないといけません。
■三浦家秘伝のスペシャルドリンクを教えます
20歳を過ぎると、一年に一%ずつ、筋力が落ちるといわれています。そうなると、70歳で何もトレーニングしていなければ、若いころの半分くらいの筋力になってしまうわけです。
ぼくの父は90歳を過ぎても山岳スキーを続けていましたが、ある段階から体力の衰えを感じていたといいます。
「ああ、歳だな」と思って諦めかけていたようですが、あるとき、食事や食べ方に問題があったんじゃないか、と気がついたのです。
それまでは、朝ごはんは納豆、魚、玄米。これを最低50回から100回くらい噛む、なんてことをやっていました。昼はあまり食欲もないから、サツマイモをゆでてひと切れくらい。これをずっとやっていたら、山に登る体力がなくなってきたといいます。
そこで父が考えたのが「スペシャルドリンク」です。牛乳とヨーグルトを大きなグラスに一杯ずつ。
それにゴマの粉と、きな粉をカップ一杯くらい。味つけにハチミツと黒砂糖。さらに……ぼくは面倒なのでやっていないのですが、父は卵を酢に一カ月くらい殻ごと漬けてブヨブヨになったものを加えます。
これを、朝食のあとに、大きなグラスで一杯。残りは冷蔵庫に入れておいて、昼にサツマイモを食べたあとに飲むのです。
父のこのスペシャルドリンクは、高齢者に不足しがちなたんぱく質やミネラル、植物脂肪、カルシウム、乳酸菌を補ったのです。そんな食生活を続けていたら、だんだん体力がついてきて、山に登っても元気になりました。
■若大将が朝食にステーキ300gを食べる理由
ぼくは旅行や外出が多いものですから、朝食はできるだけ自分の家で食べるようにしています。基本的には納豆、ヨーグルト、キムチ、できればステーキ。
以前、加山雄三さんと対談したときに、朝食の話になりました。彼のことは学生時代からよく知っていて、よく札幌でスキーを一緒にしていました。
その加山さんは、いまでも朝食にステーキ300gを食べているといいます。若大将の元気の素はそこにあるのかな、と。
ぼくもいまでも肉が大好きですが、「三浦君、歳を取ったんだから、いいかげんに、肉は控えて、野菜と魚を中心にした食生活にしたほうがいいよ」と友人たちは忠告してくれます。でも、そういう彼らは、年々元気が薄れているように見えます。
まあ、これは好き好きですし、無理してステーキを食べる必要はありません。でも、高齢者は、たんぱく質をしっかり摂ることは心がけてほしいと思います。
そして、どうせ食べるなら、やはりおいしいもの、食べたいものを食べて、幸せになることが一番。その意味では食べ物は、体と心のパワーの源だと思います。
■“ずぼら”な僕が中高年から欠かさず日課にしていたこと
ぼくはもともと“ずぼら”なほうで、早起きや規則正しい生活は苦手でした。
できれば規則正しい生活を心がけたいのですが、なかなかうまくいきません。
仕事での移動も多かったですし、必ず決まった時間に起きるということが難しい。
読書が好きで、気がついたら夜中まで読んでいたり、朝まで書き物をしたりすることもよくありました。
それでも中高年になってからは、「運動」だけは欠かさず、日課にしてきました。
朝起きて、軽く体を動かし、朝食をすませたらひと休み。それから時間があるときは、家から近い山に登って――という感じです。膝や腰に負担をかけないよう、あまり走ることはせず、運動するならやはり軽い山登りやハイキング。これが一番です。
夜は早寝です。とくにこのごろは夜8時になると眠くなってくるので、夜中に目を覚ましてもいいから、眠くなったら寝てしまいます。
で、夜中にふっと目を覚ますと、「あ、まだ11時だ」ってことで、しばらくテレビなんかを観ていると、またすぐに眠くなる。そんなことの繰り返しです。テレビ番組は、歴史やドキュメンタリーなどでおもしろい番組があると、やはり夢中になって観てしまいますね。
歴史や文化など、日本の大事な要素を映像で詳しく、わかりやすく紹介してくれる。ぼくにとって、すごくためになります。それはNHKの番組に限らず、民放の番組でもです。とはいっても、最近のテレビ番組はくだらないお笑い番組も多いんですけどね。
■歳を重ねたら「ルーティン」に縛られすぎるな
コロナ禍前までは、講演のために全国各地へ旅することも、ある意味、ぼくにとっては大事な「ルーティン」でした。
移動の新幹線の中では、たいてい読書。目が疲れたら車窓からの景色を眺めたり、うとうと眠ったり。
海外に行く国際線の中では、できるだけ寝るようにしてきました。時差の問題もありますし、向こうに着いてからの行動に支障が出ないことが重要です。
たいてい食事をして、ワインを一杯飲んだら、あとは眠れるだけ眠る。ぼくは飛行機の中でも比較的よく眠れるほうです。機内の映画はそれほど観ません。一度、映画を観たらおもしろすぎて、つい寝損なってしまって、現地に着いて難儀したことがありましたから。
出張先では早起きして、朝食の前に街を散歩するのが常です。たとえば、熊本に行ったら、朝起きて広い熊本城の中を歩き回る。それが楽しみでした。
どこの街でも、どんな村でも、すばらしいところは多くあるので、講演の合間に自ら歩き回って旅先のよさに触れてきました。招待されることも多く、ありがたいことに、おいしいものもずいぶんご馳走になりました。
……と、とりとめのない、コロナ禍前までのぼくの日常のことを書きましたが、このように、ぼくは非常に気ままに、ありのままに生活をしていた感じです。
歳を重ねたら、とくにプライベートの時間においては、あまり「ルーティン」というものに縛られすぎないほうがいいと、ぼくは思います。時間にも心にも余裕をもって自由に暮らしたいものです。
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プロスキーヤー、冒険家、教育者
1932年、青森県生まれ。北海道大学獣医学部卒業。1964年、イタリア・キロメーターランセに日本人として初めて参加、時速172・084kmの当時の世界新記録樹立。1966年、富士山直滑降、1970年、エベレスト・サウスコル8000m世界最高地点スキー滑降(ギネス認定)を成し遂げる。1985年、世界七大陸最高峰のスキー滑降を完全達成。2003年、エベレスト登頂、当時の世界最高年齢登頂記録(70歳7ヶ月)樹立。2008年、75歳で二度目、2013年、80歳で三度目のエベレスト登頂、世界最高年齢登頂記録更新を果たす。プロスキーヤー・冒険家として、また教育者としてクラーク記念国際高等学校名誉校長を務めるなど、国際的に活躍。主な著書に『諦めない心、ゆだねる勇気 老いに親しむレシピ』(主婦と生活社)、『歩き続ける力』(双葉社)、『私はなぜ80歳でエベレストを目指すのか』(小学館)など多数。
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(プロスキーヤー、冒険家、教育者 三浦 雄一郎)
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