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中学受験生が手を染めるカンニングで最も根が深い手口とは…隣の子の答案覗き見、解答丸写しは"軽傷"

プレジデントオンライン / 2024年1月28日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Kavuto

多くの小学生にとって人生初の受験。それが中学受験だ。第一志望校合格を目指す道は平坦ではない中、問題行動を起こしてしまう子供もいる。中学受験塾を主宰する矢野耕平さんは「例えば、カンニング行為。多くの子は目標校を見つけると自然に不正を働かなくなるが、根が深いケースもある」という――。

※本稿は、矢野耕平『ぼくのかんがえた「さいきょう」の中学受験』(祥伝社新書)の一部を再編集したものです。

■塾の先生が怖くてたまらないと訴えるわが子

Q 子どもは小学校五年生ですが、塾の先生が怖くて行きたくないと最近言い始めました。自分が怒られるわけではないのですが、ほかの生徒さんが、たとえばお弁当を忘れたり、やるべきことをやっていなかったりすると、先生がクラス全体に大声で活を入れるようで、とてもストレスを感じてしまうようです。

強くなってほしいと思いつつ、相性が悪いのかと悩みます。転塾するにも勇気が要りますが、先生の顔をなるべく見ないように授業中過ごすという子どもの気持ちをどう受け止めたらいいでしょうか。

A クラス全員に活を入れたら、お子さんがストレスを感じてしまう……。集団授業の塾ではよく聞く話です。そして、恥ずかしながらわたしの塾でも同種のご相談が寄せられることが稀にあります。ご質問で言及されているように、この時期の転塾についてはリスクを伴います(もちろん、六年生からの転塾を機に成績を伸ばす子もなかにはいますが)。現時点でのお子さんの成績にさほど問題がなければ転塾は回避したほうが無難でしょう。

ここは親の出番だと思います。

塾を訪ねて、その先生なり校舎責任者なりにお子さんの様子を伝えるとともに、全体であっても大声で怒鳴ったりしないこと、特定の生徒を叱らなければならないときは別の場所にしてほしいことなどを率直に願い出てみてはいかがでしょうか。普通ならば、塾側は反省をして、事態は改善の方向に向かうはずです。

ただ、これはあまり考えたくないことなのですが、万が一、相手が納得できないような態度をとったり、お子さんに対して「逆ギレ」するようなふるまいをしたり……そんなことになってしまうのなら、すぐに転塾へと舵を切ることをお勧めします。そんな塾に大切なお子さんを任せるわけにはいきません。

最後に、もう一つの可能性について触れておきたいと思います。

お子さんが周囲の言動に「過剰反応」する傾向があるのではないかということです。いままでのことを思い出してみてください。学校の先生だったり、周りの友人であったり……。ちょっとした出来事でさえも、お子さんは「被害者」としてお父様やお母様に自らのストレスや困惑を訴えてきたことはないでしょうか。もしそのような言動がしばしば見られるならば要注意です。

もし、お子さんにその傾向が認められるのなら、ここは「塾の先生はみんなのことを思って本当は口にしたくない厳しいことを言っているのだから、あなたもしっかりそのことばを受け止めなさい」と毅然(きぜん)とした態度をとることが必要だと思います。お子さんの甘えを許さないこともときには大切です。だって、お子さんはこの先も集団や周囲とのつながりを持ち続けて生きていくのですし、その中で嫌なことや悲しい出来事に遭遇し、それらを自己解決していかねばならないのですから。

■カンニングに手を染めるわが子にショック

Q 小学校四年生の息子がおります。大変恥ずかしい話を打ち明けるのですが、どうやら息子は隣の席の子の答案をカンニングして得点をごまかしているようです。このような姿勢では中学受験自体あきらめたほうがよいのでしょうか。

A こんにちは。わが子がカンニングしているなんて聞いたらショックを受けるその気持ちはよく分かります。

さて、わが子が「不正行為」を働いたら保護者はどうすべきかについて私見を語ります。実はこの手のご報告やご相談は案外よく寄せられる類のものです。中学受験勉強における「不正行為」は幾つかに分類できます。

① テスト中などに隣席の子の答案を覗き見る、つまりカンニング行為を働く。
② 宿題に追われるあまり、解答を丸写しして提出する。
③ 先生の解説を聞いた後に自分の誤答をすばやく消しゴムで消して、正解を記す。

この中で一番「根が深い」場合が多いのはどれだと思われますか?

①でも②でもなく、実は③だとわたしは考えています。どうしてでしょうか?

わたしはよく塾生たちに口を酸っぱくして言うことがあります。それは「塾は間違えにくる場である」ということです。このたとえ話をすると子どもたちはすぐにその真意を理解してくれます。

「では、六年生のみんなにこれから小学校一年生用の漢字確認テストをする。もちろん全員が満点だ。このテストを実施することでみんなの成績は上がると思う?」

当然、全員がかぶりを振ります。それはそうですよね。

なぜ、学力が向上するのか? それは、「分からないことを知って、それができるようになる(定着する)」からなのですね。

わたしが言わんとすることはもうご理解いただいたでしょう。

矢野耕平『ぼくのかんがえた「さいきょう」の中学受験』(祥伝社新書)
矢野耕平『ぼくのかんがえた「さいきょう」の中学受験』(祥伝社新書)

そうです。③の「不正行為」を働く子は、自らの分からないところから目を背けてしまっているのです。現実逃避と言い換えてもよいでしょう。保護者がその形跡を発見したならば、間違えることを恐れない、いや、むしろ正々堂々と間違えることが成績向上の第一歩だということを言い聞かせてほしいと考えています。

それでは、①と②についてです。両者ともに「根が浅い」場合が多いといえます。

②についてですが、これは宿題に追われているという「焦燥感」からついやってしまうことがほとんどです。ですから、この場合は宿題を日々計画的に取り組むスケジュール作成が必要不可欠です。そのやり方についてはこれまで再三述べてきました。再度それらを見返してほしいと思います。

最後に、今回のお悩みの①についてです。

■子どもがカンニング行為に走る「前向きな理由」

一つ目は保護者に少しでも良い得点を見せたいという虚栄心です。これはテストの結果が出るたびについ一喜一憂してしまう保護者のお子さんによく見られる傾向です。保護者はわが子にプレッシャーをかけすぎていないかを自問自答しましょう。結果を求めて焦ってしまうその気持ちはよく理解できますが、意識的に感情を抑えてわが子にどんなことばをかけるべきかを考えたり、周囲(たとえば、お通いの塾の講師など)に相談してわが子との付き合い方を見直すきっかけにしたりするとよいでしょう。

二つ目は意外なことにちょっと「前向き」な理由です。それまで得点することに関心のなかった子が、急に「結果」を求めるようになるとカンニング行為に走る場合がよくあります。わたしは、これは受験生としての成長の一過程でもあると考えていますので、カンニングそのものに何も意味がないことを子に正面から説明すればすぐに解決できるケースです。カンニングをする理由で最も多いのはこのタイプかもしれません。

カンニング
写真=iStock.com/FatCamera
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/FatCamera

わたしは長年、中学受験指導をおこなっていますが、カンニング癖がついてしまっているような子でも、受験期になると徐々にそんなことに手を染めなくなってくることがほとんどです。「この学校に進学したい」と心から合格を願う学校が出てきたら、不思議なことにカンニング癖はすっと無くなっていくもの。合格のために不正行為など何の意味もないことを子どもたちは知るのですね。

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矢野 耕平(やの・こうへい)
中学受験専門塾スタジオキャンパス代表
1973年生まれ。大手進学塾で十数年勤めた後にスタジオキャンパスを設立。東京・自由が丘と三田に校舎を展開。学童保育施設ABI-STAの特別顧問も務める。主な著書に『中学受験で子どもを伸ばす親ダメにする親』(ダイヤモンド社)、『13歳からのことば事典』(メイツ出版)、『女子御三家 桜蔭・女子学院・雙葉の秘密』(文春新書)、『LINEで子どもがバカになる「日本語」大崩壊』(講談社+α新書)、『旧名門校vs.新名門校』』(SB新書)など。

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(中学受験専門塾スタジオキャンパス代表 矢野 耕平)

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