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「大学病院の専門医」より「老人サロン化している町医者」がいい…健康維持に本当に役立つ病院の選び方

プレジデントオンライン / 2024年3月1日 14時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/SetsukoN

高齢者の健康維持では、どんな医療機関を選べばいいのか。医師の和田秀樹さんは「原則的に高齢者は大学病院へ行くべきではない。それよりも老人サロンになっているような町医者を選んだほうがいい」という――。

※本稿は、和田秀樹『「健康常識」という大嘘』(宝島社)の一部を再編集したものです。

■臓器別診療という大学病院のスタイルは高齢者に合わない

高度医療を提供する大学病院に行けば最善の治療を受けられると信じている人は多いでしょう。しかし、原則的に高齢者は大学病院へ行くべきではありません。

たしかに大学病院では、民間ではやっていないような最先端の治療を受けられるでしょう。しかし若い人であれば、高度な手術などを乗り越えて完全回復が望めるかもしれませんが、高齢者になると負担の大きな高度な治療によるダメージから完全に回復するのは難しくなります。

また、高齢者はいくつもの病気を抱えていることが多いのですが、大学病院では基本的に循環器内科、消化器内科、血液内科など病因ごとに診療科目があり、臓器別診療が行われています。そうすると高齢者はいくつもの専門的な診療を受けて回ることになり、それぞれに薬を処方されます。それで薬の飲みすぎになれば副作用の危険度が高まります。そのため臓器別診療という大学病院のスタイルは、高齢者にはフィットしないと考えられます。

大学病院では、医者自らが点滴や採血をすることはほとんどなく、たいていは看護師や臨床検査技師たちが行います。教授になるような「偉い」先生は、動物実験によって多くの論文を書いた人たちですから、若い頃には実験用のマウスの細い血管に注射するのが得意だったはずです。

現代では倫理的観点から人体実験が禁止されているため研究で人間を相手にする機会は少なく、その意味で医大教授のおよそ8割は、動物ばかりを相手にしてきた「獣医もどき」と言ってもいいほどです。

■専門医は高齢者診療の基本がわかっていない

もちろん、動物実験ばかりをしてきたからといって、その医者の話がすべて間違いとは言いません。それでも、やはり高齢者になったら大学病院の専門医ではなく、地域のいわゆる町医者をかかりつけ医にしたほうがいいでしょう。専門医は高齢者を診る経験が少なく、高齢者診療の基本がわかっていない可能性があるからです。

高齢者診療の基本は、個人に見合った診療をすることです。とくに70歳、80歳を過ぎれば身体機能やその状態において個人差が大きいので、患者それぞれに対応した診療が求められます。たとえば同じ薬を飲んでも、それが効く人がいる一方で、だるさやふらつきなどの症状が出てしまう人もいるのです。

高齢者診療の基本がわかっていない医者や、患者に向き合って観察しようとしない医者にとっては検査の数値が頼りです。そのため患者自身の健康よりも、数値を正常にすることばかりを考えています。「薬を飲んだら長生きできる」という確証は医者側にもないはずですが、それでも処方するのは、それしかやり方を知らないだけです。

■経験の浅い新人医が新薬を使うリスキーな治療もあり得る

また大学病院には研修医の養成という役割があるため、経験の浅い新人の医者が患者を担当することが少なくありません。先端医療として、データが十分でない新薬を使用したり、新たな施術が行われたりすることも多く、そうすると「新人が新薬を使う」というリスキーな治療が行われることになります。そのような治療が、高齢者の身体に多大なダメージを与えるかもしれません。

テレビや新聞で立派なことを言っている大学病院の医者を「きっと立派な先生なのだろう」と信じてしまう人は多いでしょう。しかし、新型コロナ禍の時にテレビで医者の話す言葉を信じたせいで、身体が弱り、要介護になった高齢者が現実にたくさんいたことを忘れてはいけません。

いくら立派な肩書きのある世界的な名医であっても、それが自分にとっても名医であるとは限らない。このことは肝に銘じておかなければなりません。

■健康診断を受けても寿命が伸びるわけではない

1954年に世界初の組織的な人間ドックが日本でスタート。1972年には労働安全衛生法が制定され、それ以降は企業の社員について、年に1回の健康診断が義務付けられるようになりました。こうして日本が健診大国になった結果として、今では医者も受診者も健診結果に振り回されるような状況にあります。

では健康診断にはどれほどの効果があるのでしょうか。

健診の受診率は女性よりも男性のほうが高く、とくに高齢者ではその傾向が強くなります。もし健診に延命効果があったなら、受診率の高い男性のほうが長生きになるはずです。しかし現実は逆で、2022年の平均寿命は男性81.05歳、女性87.09歳ですから、約6年も女性のほうが長い。全国的な健診が始まる前の1970年の平均寿命は男性69.31歳、女性74.66歳だったので、男女の差は健診が始まって以降、むしろ開いているのです。

フィンランド保健局は1974年から1989年にかけて健康診断に関わる調査を行いました。40~45歳の上級職員約1200人を約600人ずつのグループに分けて、一つは定期健診や栄養チェックを行いながら運動やタバコ、アルコール、砂糖や塩分の摂取を抑制するように指導。もう一つは何も指示せず、調査票の記入だけを依頼して、15年間の追跡調査を行いました。

そうして両者を比較した結果、しっかり健康管理をされていたグループは、心臓や血管系の病気、がんの発症、自殺を含む各種の死亡者数など、いずれにおいても指導をされなかったグループを上回ったのです。本来はこの調査で「健康管理をしたグループの寿命が延びる」という結果の出ることを期待していたのでしょうが、現実は真逆になったわけです。

この結果の意味するところは、ガチガチな健康管理は、場合によって健康を損ねるおそれがあるということです。厳しすぎる管理がストレスとなり、このような結果を招いたのかもしれません。

■日本の精神医療体制は整っているとは言い難い

2015年からは、従業者50人以上の企業を対象にストレスチェック制度も義務化されました。これは労働者が自分のストレス状態を知ることで、ストレスを溜めすぎないように対処したり、職場の状況を把握して労働環境の改善につなげることで、うつなどのメンタルヘルスの不調を未然に防止することを目的とした制度です。

ストレスチェックの結果によって面接指導を受ける必要があると医者に認められた時に、診断された当人の申し出があれば、企業は面接指導を実施しなければなりません。

メンタルヘルスの重要性が叫ばれている昨今の社会情勢を鑑みれば、当然の制度のように思うかもしれません。しかし残念ながら、今の日本は精神医療の体制が整っているとは言い難い状況です。

■プロのカウンセラーよりも研究者になったほうが稼げる

精神科医が一回の診療で、5分話を聞いても1時間聞いても入ってくる収入がほぼ同じという「保険診療の壁」があり、そうすると医者側はどうしても短時間の診療で済ませて回数を稼ごうとします。これでは満足な診療が行き届きません。

カウンセリングの専門家である臨床心理士や公認心理師にしても、精神医療の進んでいるアメリカなら腕前次第で相当稼げますが、日本では大学で研究しているほうが臨床にあたるよりも安定して収入を得られる状況で、開業してプロのカウンセラーになろうとする人材は少ないのです。

また全国に82ある大学医学部では精神科の主任教授に若い頃からカウンセリングを学んできた人がまったくおらず、そんな精神医学教育の不備もあって、精神科医になろうとしても精神療法の教育をしっかりと受けられない状態にあるわけです。

■処方薬で具合が悪くなったら自己判断でやめてもかまわない

何かしらの薬を飲んで具合が悪くなり、服用をやめようかという時は、いちいち医者に相談などすることなく自己判断でやめてしまって構いません。医者に言われるままに薬を飲んでいたのでは、薬漬けになってしまいます。医者の言う「身体にいいこと」は、免疫に悪いことばかりと思ってもいいぐらいです。

医療が高度化したことによって検査の数値ばかりが重要視されるようになり、数値に異常があれば正常に戻すために、多くの医者はすぐに薬を出すようになりました。治療のためというよりも、数値を下げるためだけに薬を出しているのです。

命に関わるような病気を持っている人であれば「この薬を急にやめたらまずいですか」と医者に確認することは必要です。しかし予防薬の類であれば、飲んで体調を崩した時に「あの薬を飲んでいると調子悪いから、飲むのをやめました」と言えば、医者も「それで構いません」と言うか、「代わりにこちらの薬を出しましょう」となるはずです。

しかし、患者の体質に合わない薬を続けさせる医者もかなりいるため、その時に我慢して医者に不調のことを言わないでいると、「血圧が正常になっているから続けましょう」などと言われて飲み続けることになってしまいます。

水入りのコップと薬を持つシニア女性の手
写真=iStock.com/AsiaVision
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/AsiaVision

大体、頭痛薬や睡眠薬を「調子がよかったので飲まなかった」と言って、怒るような医者は相当おかしな医者ですから、二度と行かないようにしてください。我慢して通ってまで気に入らない医者と付き合う必要はありません。

■待合室が高齢者のサロン化している病院は良い病院

一方で、普段から高齢者の集まっている病院もあります。そういったところには患者の話をよく聞いてくれて、相談しやすい医者が少なからずいるものです。「待合室が高齢者のサロン化している」「保険料のムダ遣いだ」などと批判されることもしばしばありますが、高齢者にとって快適で健康にもいい病院だからこそ、多くの人が集まるというのも事実なのです。

和田秀樹『「健康常識」という大嘘』(宝島社)

高齢者にとっての理想は、薬への不満をしっかりと受け止めてくれる医者と出会うことです。「飲むと調子が悪くなります」と訴えた時に「少し減らしてみましょう」と臨機応変に対応してくれるなど、話しやすく、会うと気持ちが楽になる相性のいいかかりつけ医を見つけたいものです。

ちなみに、薬の過剰投与がなぜ起きるのかというと、これは病院が儲けたくてやっているわけではありません。処方する薬が1種類から3種類になったところで、処方箋の報酬はまったく変わりません。ではなぜたくさんの薬を処方するのかというと、医者が総合診療医としてのまともな教育を受けていないためです。『今日の治療指針』という医者向けのマニュアル本があるのですが、そこに書かれた標準治療薬を診断名に合わせてそのまま処方しているため、薬がどんどん増えてしまう。

つまり、やたらと薬を処方するのは臨床医としての未熟さの表れとも言えます。

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和田 秀樹(わだ・ひでき)
精神科医
1960年、大阪市生まれ。精神科医。東京大学医学部卒。ルネクリニック東京院院長、一橋大学経済学部・東京医科歯科大学非常勤講師。2022年3月発売の『80歳の壁』が2022年トーハン・日販年間総合ベストセラー1位に。メルマガ 和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」

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(精神科医 和田 秀樹)

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