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「カット野菜は普通の野菜に全く引けを取らない」管理栄養士がもりもり食べるべしと説く2つの理由

プレジデントオンライン / 2024年3月31日 6時15分

サラダクラブ「旬を味わうサラダ」(写真=サラダクラブ/プレスリリースより)

手軽に使えるカット野菜の栄養価はどうなっているのか。管理栄養士の成田崇信さんは「カット野菜にすることで栄養価は減るが、その減り方はあまりに小さいので無視していいレベル。野菜には栄養摂取以外の役割があるので、どんどんカット野菜を役立ててほしい」という――。

■キャベツを切る時間と気力がない…

全集中で仕事を終わらせ、子どものお迎えにダッシュし、夕飯の買い物をして帰宅した親にとって、キャベツやニンジンを切るところから始める料理は時間的にも気力的にも無理ゲーの域にある。

料理の手間を少しでも省いてくれるカット野菜は、そんな親たちの心強い味方だ。しかしカット野菜には「通常の野菜に比べて栄養が劣る」といった通説があり、100%積極的な気持ちでは利用できない雰囲気がある。

本稿では、その真偽について管理栄養士の成田崇信さんに聞いていく。その過程で、「野菜ジュースをどこまで信用していいか」や「野菜を食べることの本当の意味」についても非常に興味深い話が聞けたので、シェアしておきたい。

■カット野菜は本当に栄養面で劣るのか

――カット野菜の栄養価は本当に低いのでしょうか? 時間経過や、切断面からの栄養の漏出などの要因があると聞いたことがあるのですが……。

【成田さん】まず実際に、栄養価の減衰を示すデータがあって、減るか減らないかでいうと、減ります。ただその減る程度があまりにも少ないので、無視していいレベルです。女子栄養大学の先生が発表されているんですけど、水溶性ビタミンで元から減るのが10%、多くて15%ぐらいです。脂溶性ビタミンに関してはもっと減衰が少なく、他の栄養に関してもそうです。

栄養が一番減るのは、「カット」ではなく「茹でる」ときです。茹でて、茹でた水を捨てるという過程で起こります。だから、カット野菜の栄養を気にするならおひたしは食べられないですよ……という話なんですね。

また、野菜は、「栄養がある・ない」だけではなくて、「野菜だから健康にいい」という側面を考えてほしいです(※詳しくは後述)。その意味で、カット野菜は普通の野菜にまったく引けを取りません。

だからカット野菜を避けて食べないより、断然食べたほうがいいです。「カット野菜を買うくらいなら今日は野菜はいらないか」としてしまうほうが損、ということですね。

■保存方法が悪いと生鮮野菜もビタミンが大幅に減る

もうひとつ指摘しておきたいのは、野菜は生き物だということです。生鮮野菜を買ってきても、冷蔵庫に入れているうちにビタミンは減ります。そして保存方法が悪いと、その減り方がカット野菜より大きくなることもあります。温度、水分条件、それから使うためにカットしちゃっている場合ですね。

でも忙しい家庭で、ちゃんとした野菜の保存って難しいじゃないですか。「濡らした新聞で表面を覆って、ラップして、野菜室のここに入れる……」とかって、細かいことやれないですよね。

――おっしゃるとおりで、「やったほうがいい」という話は聞いたことがありますが、やったためしはまったくないですね(笑)。

【成田さん】保存状態が至らない1週間前に買った野菜と、カット野菜のどっちに栄養があるかを比べたら、カット野菜が上回るんじゃないですかねえ。

カット野菜については塩素消毒の危険性を訴える意見もあるのですが、あれは全然関係ないです。塩素消毒に危険があるかというと、塩素消毒したものもちゃんとあとで流しているので問題ありません。むしろ逆に、洗い方が不十分でO157などの細菌で食中毒が起きる事件もあるので生鮮野菜を買ってきたときは注意したいですね。

キャベツの千切り
写真=iStock.com/Libortom
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Libortom

■ビタミンCが酸化する説

最後ですが、カット野菜を製造する過程で「ビタミンCが酸化する」という説もあります。ビタミンCには酸化型ビタミンCと還元型ビタミンCの2種類があって、生鮮食品に入っているのは還元型ビタミンC。これが効力があるとされています。

ビタミンCの分解酵素と紹介されるアスコルビナーゼについては誤解が多いんです。

アスコルビナーゼは野菜の細胞の中に入っているので、野菜を切ったりすりおろしたりすると、潰れて切断面から酵素が出てくるんですよ。すると「ビタミンCが壊れるから、その状態で食べても意味がない」という説が出てくるんですけど、それはガセです。

まず、切ったぐらいだと酵素が出てくる量が少ないからたいしたことないというのが1つと、もう1つが大事なんですけど、アスコルビナーゼはビタミンCを酸化させる酵素であって分解酵素ではない。正確には「アスコルビン酸酸化酵素」といいます。酸化型ビタミンCは、人間の体の中に入ると還元型に戻って、ビタミンCとして働きます。

だから工場で野菜を消毒などする過程で「ビタミンCが酸化するから意味のないビタミンCです」と言われることがあるのですが、それも嘘です。酸化型ビタミンCも還元型に戻って栄養になるから。

■唯一気をつけたいのは、熱に弱いこと

ただし、唯一気をつけてほしいのは、酸化型ビタミンCが熱に弱いという点です。生で食べるカット野菜はまったく心配ないんですけど、ゆっくり煮込んだ野菜だとビタミンCが減ってしまう。その分、果物を食べて補おうと考えればいいのです。

コンロ上の沸騰した鍋に入った野菜
写真=iStock.com/Peter Horrox
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Peter Horrox

「酸化型のビタミンCはちゃんと効力があること、カット野菜のビタミンCは壊れていないこと」は知っておいてほしいと思います。

――なるほど。「カット野菜はできれば避けるべき」という印象があったのですが、お話をうかがうとだいぶ考え方が変わりますね。カット野菜をもっとオープンに受け入れていったほうがいいですね。

【成田さん】そうなんですよ。カット野菜を使っている人に「なんで使っているの」というのは余計なお世話ですし、使う側も躊躇する必要はない。「お値段ちょっと高め」という理由以外では、カット野菜は使われてなんの問題もないというのが私の見解です。むしろぜひ使ってくださいと言いたいぐらいですよ(笑)。

■野菜には栄養以外に大きな役割がある

――ネガティブな理由でカット野菜を避ける必要はないのですね。

先ほどお話の中に出てきました、栄養を取るという目的以外の、「野菜を食べる意味」についてお話をうかがえますでしょうか。

【成田さん】野菜の効果って、栄養だけではないんですね。極端な話、栄養を満たすという話であれば、たとえばレバー。レバーは鉄も多いしビタミン類もいっぱいある。ただビタミンCが少ないので、そこは果物を食べればいい。レバーと果物を食べていればもう水溶性ビタミンは賄えるということになる。それと、野菜に食物繊維が入っているということはよく知られていますが、食物繊維も他のもので取ることができます。

では野菜は何がいいかというと、食べごたえがあるから満足感が出るんですね。野菜の食べごたえは口の中だけでなく、腸の中でも適度な刺激として働きます。消化があまりよくないから、腸を運動させてくれるのです。だから高齢者や、野菜をあまり食べない人は腸の動きが弱くなっていってしまいます。

適度な刺激がないと運動不足になるというのは内臓にも当てはまっていて、野菜には腸の運動を活性化させる役割もあります。

■クタクタに煮込んだりジュースにすると効力が半減

【成田さん】野菜は、咀嚼にも関わるし腸の中でも適度な刺激になる。そして「栄養が濃すぎない」というところがいいところなんです。だから野菜は「栄養のために取る」ではなくて、「健康のために取る」と考えてほしいです。健康全般にいいので。栄養だけのことを考えると、野菜って意外と弱いんですよ。レバーや果物のほうが強い。

野菜関係の本を監修していて一番悩むのが、野菜って量の割に栄養があまりないというところなんですね。だけど大事なので、そこのニュアンスを伝えるのに苦労します。ただ、お腹の中を鍛えるのは野菜だということなんですね。

だから野菜を細かくしてクタクタに煮込んだり、野菜ジュースみたいにトロットロにしちゃうと、野菜が持つ大きな効能「内臓への適度な刺激」が失われてしまって、栄養だけ取ることになります。野菜の良さは栄養だけにあらず、消化管への適度な刺激が健康に役立っているということを、あわせて説明しています。

野菜ジュース
写真=iStock.com/naotake
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/naotake

■野菜ジュースの2つのリスク

――そういえば昔から疑問だったのですが、野菜ジュースって信用していいのでしょうか? おいしいのでよく飲むのですが、そんな簡単に栄養が摂取できるのは虫が良すぎる気がしていて、「実際は栄養はそこまで取れないけど健康に近づく」という幻想を買うつもりで飲んでいるのですが。

【成田さん】いやそんなことないんですよ。逆なんですよ。

――そうなんですか?

【成田さん】栄養に関しては取れるんだけど、気をつけなきゃいけない点が2つあります。1つは、今申し上げたような「野菜の効果は栄養だけではない」ということです。そしてもう1つが、「不必要なものも摂取してしまう」ということです。

まず、パッケージに書いてある栄養は大体入っています。たとえば「1日に必要なビタミンCの80%が入っている」と書いてあったら、そこに嘘はないんですよ。野菜は加熱したり加工したりで栄養が減るというのはあるんですけど、減ったことが勘案して書かれています。分析して足りなかったらリコールになっちゃいますし。だから入っている栄養素は、ある程度信用していいです。

ところが、いらないものも入ってきちゃうんですよね。おいしくするために糖分が多いんですよ。「砂糖無添加」って書いてあったりして、じゃあなんでそんなに甘いのかといったら果物由来の糖質が多いんですよね。砂糖じゃない甘味料を使っていることもあります。結局、あんなに飲みやすいのには理由がある。

■コーラの代わりに野菜ジュースなら○

ですので、甘くもなんともない野菜ジュースなら、糖質の取りすぎは心配しなくていいんですけど、子どもが喜ぶようなものは大体……ジュースみたいなものです。嗜好(しこう)品としてのジュースに栄養感がプラスされているという捉え方ですね。

だから普段コーラやサイダーを飲んでいる人が野菜ジュースにシフトするのは、栄養がプラスされる分オッケーですが、健康を目的とするなら、野菜ジュースだけだと難しいです。

――なるほど。野菜への考え方が刷新された思いです。

この度は、楽しくためになるお話を聞かせていただき、ありがとうございました。僕自身とても勉強になりました。

【成田さん】よかったです(笑)。ありがとうございました。

■「適度に力を抜く」ことの大切さ

全4回にわたってお伝えした食の真実に、常識を覆された諸氏もいるはずである。

自分のことならある程度いい加減にできる、献立による栄養管理も、子どものこととなるとどうしても満点を目指したくなる。しかし高すぎる理想は食事を用意する親・保護者自身を疲弊させてしまう結果になりかねない。偏った知識で自分を縛りすぎることなく、適度に力を抜きながら献立と向き合っていきたいものだ。

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成田 崇信(なりた・たかのぶ)
管理栄養士
1975年東京生まれ。社会福祉法人で管理栄養士の仕事をするかたわら、主にブログ「とらねこ日誌」やSNSなどインターネット上で食と健康関連の情報を発信している。栄養学の妥当な知識に基づく食育書『新装版管理栄養士パパの親子の食育BOOK』(内外出版社)を執筆。共著に『各分野の専門家が伝える子どもを守るために知っておきたいこと』(メタモル出版)、監修として『子どもと野菜をなかよしにする図鑑 すごいぞ! やさいーズ』(オレンジページ)などに携わっている。

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武藤 弘樹(むとう・こうき)
ライター、ミュージシャン
早稲田大学第一文学部卒。広告代理店社員、トラック運転手、築地市場内の魚介類卸売店勤務などさまざまな職歴を重ね、現在はライターとミュージシャンとして活動。

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(管理栄養士 成田 崇信、ライター、ミュージシャン 武藤 弘樹)

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