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幸福度が最も低下するのは「48.3歳」…誰もがハマる"魔の年代"に絶対にやってはいけないこと

プレジデントオンライン / 2024年4月30日 7時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/DNY59

40代にもなると給与も出世も先が見えて、「頑張っても無駄」という気持ちが強くなる。モチベーションはダダ下がり。いったいどうすれば。新著『ライフキャリア』が話題のキャリア未来地図研究所共同所長の千葉智之さんは「定年後に35年もの長い時間が待ち受けているのが『人生100年』という時代。実は“今”が自身の人生キャリアを再設計する最良のタイミングだと気づいてほしい」という――。

■幸福度が最低になるのは「48.3歳」

幸福度と年齢の関係性について世界145カ国で実施された研究がある。

アメリカのダートマス大学のデービッド・ブランチフラワー教授が行った研究(*)によると、ヨーロッパ、アジア、南北アメリカ、オーストラリア、アフリカなどを含む世界145カ国において、幸福度と年齢の関係はU字形になることがわかっている。そして「U字の底」、つまり幸福度が最も低くなる年齢は平均48.3歳である。

*Blanchflower, D. G.(2021). Is happiness U-shaped everywhere? Age and subjective well-being in 145 countries. Journal of Population Economics, 34,575-624.

この研究結果には、豊かな国も貧しい国もあらゆる種類の国々が含まれており、40代後半から50代前半に幸福度が最低になることが世界的な傾向であることを示している。

■50代前半は仕事に対するモチベーションが最低

日本においても、50代前半に対する興味深い調査がある。リクルートワークス研究所が行った仕事に対するモチベーションの調査(「シニア就労実態調査」)だ。

図表1は、仕事に対するモチベーションを表したグラフである。

仕事にどの価値を感じるかを表したグラフ
50代前半が最も仕事に対するモチベーションが低い(『ライフキャリア』より)。リクルートワークス研究所「定年後のキャリア論」を元に作成。

この調査では、仕事に対するモチベーションを以下の6つに分類し、それらが各年代でどのように変化するかを分析している。

①他者への貢献
②生活との調和
③仕事からの体験
④能力の発揮・向上
⑤身体を動かすこと
⑥高い収入や栄誉

グラフは、上に行くほどモチベーションが高く、下に行くほどモチベーションが低いと見ることができる。そしてご覧の通り、50〜54歳が最も仕事に対するモチベーションが下がっていることがわかる。

■サラリーマン「魔の年代」

なぜ、40代後半から50代前半の年代は幸福度が最も低く、仕事へのモチベーションが急激に下がってしまうのか。

日本の場合、この年代はそれまで「高い収入やポジション」を追い求め続けてきた社内の出世競争もほぼ勝負がつき、50代半ばの設定が多い役職定年も身近に感じ始める。リアルで選択肢の少ない、会社での“未来の自分”の姿が頭をよぎる年代。

そうなると、先が見えている仕事に情熱を注ぐことは難しく、仕事に対するモチベーションは急速に下がっていく。

つまりは「自分の対する希望、可能性の減退」である。

しかし、頭ではわかっていても、家のローンもまだまだあるし、子供の教育費も掛かる。自身の身体も老いてくると同時に、親の介護が始まる人もいる。そんな状況の中、おいそれと転職するわけにもいかない。「しようがないな」と自分を納得させつつも、くすぶった気持ちが蓄積していく。

それが40代後半のサラリーマン、「魔の年代」の正体である。

■50代での転職は想像以上に難しい

ただ会社の現実から逃れるように、新しい環境を求め、「早期退職」制度などを利用して転職を試みる人もいるかもしれない。その場合も、とても厳しい現実が待っている。

転職が一般的になってきたとはいえ、年代によって転職の難易度は大きな差がある。

厚生労働省の「令和2年 雇用動向調査」によれば、1年以内の転職者の割合を示す転職入職率は、男性の場合、20代後半12.4%、30代前半11.1%に対して、50代前半ではその半分にも満たない、わずか4.2%というシビアな数字がある。

安易な転職は注意が必要である。

本当の想いに蓋(ふた)をして、現状維持で過ごしても気持ちはくすぶる。思い切って転職をしようにも厳しい現実が待っている。いったいどうすれば、このモヤモヤした気持ちを打破できるのだろうか。

■50歳から必要な「人生の再設計」

もし、これから人生の選択肢が広がるとしたら?

原尻淳一、千葉智之『ライフキャリア』(プレジデント社)

若い頃と同じように、広くて選択肢の多い、希望に満ちたキャリアがこれから先の未来にイメージできるとしたら、元気が出るとは思わないだろうか。

人生100年時代のちょうど2回目の人生に当たる、50歳からの人生を再設計していく。これができれば、仕事や人生に対するモチベーションも再上昇していくに違いない。

筆者はこれまで1万人を超える人々に、マネジメントやマーケティング、キャリアの研修を行った経験がある。大勢のサラリーマンからリアルな生の声やキャリアにまつわる悩みなど数多く聞いてきた。

その中には、50代で人生を再設計して、イキイキと充実したキャリアを過ごしている人たちがいる。その人たちを見ていて、「まだ見ぬ自分を創り出す方法」の共通点に気づいた。

■無意識に刷り込まれた「キャリア」のイメージ

まず、そもそもキャリアと聞いて何をイメージするだろうか。仕事をするうえでのスキルや経験。会社に勤めた実績や、役職や肩書といったポジションを思い浮かべる人もいるかもしれない。

世間一般のキャリアに対するイメージはそんなところだろう。

ただし、これらはすべて会社に関連する内容ではないだろうか。キャリアといえば会社の中での仕事や能力だと無意識に思い込んではいないだろうか。

人生を再設計する自分自身のことなのに、あまりに思考が会社に偏りすぎていないだろうか。

とはいえ、それも無理のない話で、長らく終身雇用、年功序列が当たり前だった時代には、キャリア=会社であり、キャリアの概念そのものが必要なかった。

それが、仕事の主体が会社から個人に変わっていき、転職も一般化していった。最近では、会社の寿命より個人の寿命が長くなり、会社も一生面倒をみることが難しくなってきたため、副業と兼業を推進する側にさえなっている。

■「ワークキャリア」を「ライフキャリア」に切り替えよう

そうなってくると、キャリアを考えるときに、会社や仕事だけではカバーしきれなくなってくる。プライベートも含めて、人生全体で考える「ライフキャリア」の考え方が今の時代には必要になってくる。

そもそも、40代後半になり、気持ちがくすぶり、モヤモヤした気持ちを抱えている最大の理由は、収入も能力も肩書も会社に依存しすぎているからである。自分の人生の舵(かじ)取りを会社に任せてしまっているからである。

50代を超えてからキャリアを再設計してイキイキと毎日過ごしている人の共通点は、会社とプライベートのバランスが取れている点である。

充実したキャリア設計のポイントは、会社中心の「ワークキャリア」から、人生全体をカバーする「ライフキャリア」に意識転換をしていくことである。今風にいえば、キャリア・オーナーシップを持つのである。

■定年した後の35年間をどう生きる?

人生100年時代の課題は、65歳で退職したあと、残り35年間をどう過ごしていくのか、という点である。

これまでは「人生80年時代」といわれ、退職金と年金で老後を暮らす算段がついていた。今ではプラス20年の時間を自力で賄(まかな)わなければいけない。老後資金の不足を表した「老後2000万円問題」は記憶に新しいところだ。

多くの人は、現役時代も我慢の連続だったのに、老いてなお「やらされ仕事」をする必要があるのか、とうんざりするかもしれない。

■「パーソナル・ビジネス」が人生を変える

その解決策として、筆者は退職金と年金に加えて、「第3のパーソナル・ビジネス(小さな個人事業)」を持つことを提案する。つまり、3つ目の収益源を構築し、お金に関する不安を解消するのだ。

「第3のパーソナル・ビジネス(小さな個人事業)」をつくろう
「第3のパーソナル・ビジネス(小さな個人事業)」をつくろう(『ライフキャリア』より)。

そして、それはやらされ仕事ではなく、やりがいのある自分がオーナーの小さな事業をつくることで実現する。そのために、あなたのキャリアを人生全体で捉えてデザインしていくのである。

■団塊ジュニアが人生を再設計するのは「今」

データや情報から、40代後半から50代前半世代、いわゆる「団塊ジュニア世代」が直面する未来はとても厳しいものになることが容易に予測されている。

しかし、退職を迎える65歳までに、まだ時間は十分ある。積極的に行動し、「第2の人生」を再設計するタイミングはまさに「今」である。

労働人口のボリュームゾーンである団塊ジュニア世代一人ひとりが、会社主導から自らオーナーシップを持って自発的にキャリアを考えていけば、日本全体が元気になると本気で思っている。

流行りの新NISAばかりに頼らない、希望のライフキャリアを描いてみよう。

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千葉 智之(ちば・ともゆき)
合同会社GENSO代表、キャリア未来地図研究所共同所長
1973年広島県生まれ。広島大学経済学部卒業後、鹿島建設に新卒入社し大規模プロジェクトを手掛ける。31歳で総合メディア企業へ転職するという異色のキャリア。美容業界向け経営支援スクール部門およびリサーチ部門の責任者として会員7万人の業界最大規模の経営支援スクールを設立し、講師としての延べ受講者人数実績は1万人を超える。2011~2017年、立教大学経営学部兼任講師。著書には『出逢いの大学』『やる気の大学』(以上、東洋経済新報社)、『「キャリア未来地図」の描き方』(ダイヤモンド社)などがある。

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(合同会社GENSO代表、キャリア未来地図研究所共同所長 千葉 智之)

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