会議中に寝る人がいるのは日本だけ…スティーブ・ジョブズが日本のアップル社に来て話したこと【2023編集部セレクション】
プレジデントオンライン / 2024年5月7日 16時15分
※本稿は、山元賢治『世界の先人たちに学ぶ 次世代リーダー脳』(日刊現代)の一部を再編集したものです。
■ジョブズは「会議に必要ない人」を退場させた
スティーブ・ジョブズは会議の冒頭で、その会議に必要ないと判断した相手を退場させていました。当事者意識を持ち、主体的に参加できる人だけを選抜していたからこそ、緊張感のある、生産性の高い会議ができていたのでしょう。
思い返せば、ジョブズほど当事者意識の高いリーダーを見たことがありません。一年に一度開催されるリーダー会議でも、必ず前日から会場に詰め、自らセットアップとリハーサルに励んでいたものです。
この姿勢は講演会でも同じでした。ジョブズが2005年、有楽町で講演したときのこと。前日のリハーサルでは、3時間にわたって「私はこう感じる。みんなはどうだ?」「私はこの資料を1ページ前にもっていきたい。全体の流れに影響はあるか?」などと、主語を“I”にし、積極的に意見を伝えていたのです。
ジョブズほどの人であれば、資料の作成からリハーサルまですべて部下に任せることもできたでしょう。それでも当事者意識を持ち、自らの手で一つひとつ作り上げる――。今でも鮮明に思い出せる、衝撃的なワンシーンでした。
主語を“I”にし、高い当事者意識を持って行動する。逃げない姿勢を貫き、いつでも責任を取る覚悟をする。リーダーであれば、この2つを常に意識してください。
■日本のリーダーに足りないもの
残念ながら、日本では主語を“I”にできるリーダーをほとんど見かけません。周囲から「いい人」と思われたいという気持ちが強いのでしょう。
同様に、いつでも責任を取る覚悟ができている人もほとんどいないようですね。なぜなら誰しも、責任を取るのは怖いからです。最悪の場合、リーダーの立場から降ろされたり、会社を退職したりすることになるかもしれませんから。
そうした覚悟をするのは誰でも怖いからこそ、チャンスです。
高い当事者意識を持って行動することができたなら、周囲の人があなたを見る目はみるみるうちに変わっていくでしょう。
上層部は、あなたをもっと引き上げたい、より重要な役職につけて幅広く活躍させたいと思うはずです。
同僚や後輩は、ぜひこの人に協力したい、この人のようになりたいと思ってくれるでしょう。
顧客や取引先は「この人から買いたい」「この人と一緒に仕事をしたい」「うちの会社で働いてくれないだろうか」と思うことでしょう。
意識を変えることで、あなたの市場価値はグンと大きく上がるはずです。
■1時間の会議でも「数百万円」かかっている
あなたの会社にも、きっと定例会議があるでしょう。その会議は、活発に意見が交わされる、有意義な時間でしょうか。それとも週末の疲れを癒やすコーヒーブレイクや、スマホを見たり他の仕事をしたりする“内職タイム”になっているでしょうか。
日本の会議では、意見を言うのは上層部の数人だけ、後の人は黙って話を聞いている……といった場面をよく目にします。上司に遠慮して発言を控えているのかもしれません。資料を読み上げるだけの会議や、出席人数が多すぎる会議も散見されます。
経営者として、そんな会議風景を見るとゾッとします。出席している人の給料を時給に換算して、その時給が人数分、会議の時間分かかっていると考えると、たった1時間の会議であっても、何十万円、何百万円という単位でチャリン、チャリンとお金が落ちているのです。
昔、ジョブズがいる会議で、私の他にも日本人が出席していたことがありました。その人は典型的な日本人のパターンで、あまりに疲れていたのか、何の発言もせずジョブズの目の前で眠りこけていました。数カ月後にその人がいなくなっていたことは言うまでもありません。
■会議中に寝ているのは世界中で日本人だけ
残念ですが、世界中を見渡しても、会議中に寝ているのは日本人だけです。そろそろ日本での会議のあり方を変えませんか。
会議を設定するのであれば、その目的を明らかにしましょう。情報共有が目的であれば、テキストでも構わないはずです。また、バリューを出せない人や発言のない人を外し、少ない人数での開催にするのも一つの手です。
会議に参加する側は「バリューを出せない人は給料泥棒だ」「会議は意思決定のための場だ」と認識し、「出席するからには必ずバリューを出す」と決めること。そのためには、次の3つが有効です。
・目的に合わせて事前準備をすること
・会議では必ず発言すること
もし自分にバリューが出せそうにないと感じたら、その旨を上司に率直に相談してみるのもいいかもしれません。「この会議ではバリューが出せそうにないので、欠席してもよろしいでしょうか。その分の時間を使ってA社の提案準備を進めたほうがチームのためになると思っております」などと言われて、イヤな顔をする上司はほとんどいないはずです。むしろ「チームの利益を真剣に考えてくれている」と、あなたの評価を上げるでしょう。
■「自分が社長だったら」という視点で考える
あなたも「この会社は終わっている」「なんであいつが昇進するんだ」「社長はいったい何を考えているんだろう」などと、会社の姿勢や方針に対する批判を口にしたことがあるのではないでしょうか。そんな人にはぜひ、次のようなことを考えてみてほしいと思います。
・自分が社長なら、どんな人を昇進させたか?
・自分が社長なら、「いったい何を考えているんだろう」と言ったその意思決定や発言について、どのように行動するか?
つまり、「自分が社長だったら」という視点で、あらゆる物事を考えてみてほしいのです。視座を上げてみると、まったく別のものが見えてくるのではないでしょうか。
私は専務時代、「No.2理論」という名のもとに、仕事を好き勝手に楽しんでいたものです。社長にさえならなければ、会社員は楽しいですし、苦しみは限定的なものにとどまります。極端に考えると、営業役員は売り上げ目標を達成できれば万々歳。売り上げ目標を達成することだけがミッションで、厄介なトラブルが起こったとしても、最終的には社長が責任を負ってくれます。
■社長になって、土下座も生まれて初めて経験した
私の身を振り返ると、専務時代は接待費の使い方もルーズだったと思います。社用車を使わせてもらえることも「当然だ」と思っていましたし、そこにかかる経費に関してはほとんど意識していませんでした。
しかしジョブズに出会い、アップル・ジャパンの社長という大役を任されるようになって、考え方は180度変わりました。製品の不良などにより、土下座も生まれて初めて経験しました。毎週のグローバル営業会議では、科学者のように数式を用いて販売予測をする必要がありました。もちろん、経営や人事に関する全責任は私にあります。
こうした経験から、社員が「毎月給与が自動的に口座に振り込まれて当然」と考え、のほほんと働いている裏で走りまわっているのは社長なのだ、ということがわかりました。
社長の意思決定や言動に不満を覚えることがあっても、社長の立場で考えてみると、その意思決定や言動の理由が理解できるはずです。きちんと理解できたら、社長を真剣にサポートできる人になってください。
そして普段、愚痴をこぼし、被害者意識が染みついている部下にも、トップの目線で物事を考えることの大切さを教えてあげましょう。社員がみんなこの意識で行動できるようになると、会社は大きく変わっていきます。
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アップル・ジャパン元社長、コミュニカCTO兼Founder
1959年生まれ。神戸大学卒業後、日本IBMに入社。日本オラクル、ケイデンスを経て、EMCジャパン副社長。2002年、日本オラクルへ復帰。専務として営業・マーケティング・開発にわたる総勢1600人の責任者となる。2004年にスティーブ・ジョブズに指名され、アップル・ジャパンの代表取締役社長に就任。現在は株式会社コミュニカのCTO兼Founderとして自らの経験をもとに、これからの世界で活躍できるリーダーの育成、英語教育に力を注いでいる。著書に、『ハイタッチ』『外資で結果を出せる人 出せない人』(共に日本経済新聞出版社)、『「これからの世界」で働く君たちへ』(ダイヤモンド社)、『情熱を注いで、働く』(大和書房)などがある。
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(アップル・ジャパン元社長、コミュニカCTO兼Founder 山元 賢治)
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