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「ずっと働き続けるのは無理」外資系企業で大量の業務をこなす社員が取っている"昼休み以外の休憩"

プレジデントオンライン / 2024年10月2日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/PeopleImages

外資系企業でたくさんの業務をこなせる人は何が違うのか。大手外資系企業を中心に年間1000件以上の相談を行っている産業医の武神健之さんは「多数の業務を並行して進められる人は、さまざまな業務を俯瞰して見ることができている。加えて、しっかりとオフを取って仕事に緩急をつけ、作戦を立てて臨んでいる」という――。

■「仕事がつらい」の内容はさまざま

こんにちは。産業医の武神です。私は毎月100件以上の産業医面談をしていますが、その中で毎月一定数あるのが、仕事がつらいという相談です。

仕事のつらさはさまざまです。多すぎる残業、プレッシャー、タイムリミット、人間関係、そもそも仕事が面白くないなど、本当にいろいろな理由があります。今日はその中でも、決して残業が多いわけではないけれど、業務が多くて毎日が忙しい職場において、仕事をこなしている人たちと、そうでない人たちの違いについて述べたいと思います。

Aさんは新卒で入社し昨年昇進した業務部の20代後半の女性でした。過去にも何度か産業医面談に来たことがあり、Aさんはいつも率直にその時々の状況を教えてくれました。昇進後の様子を聞くと、業務範囲が広がったこと、後輩ができたこと、残業はさほどせずに帰れていることを教えてくれました。

■日中の業務が忙しすぎて睡眠障害に

「順調だね」と私が言うと、「そんなことない、日中が忙しすぎて、もう持たないかもしれない」と言い始めました。詳しく聞いてみると、昇進したもののまだ部署内では若手のため、日々のルーチン業務は同じものを任されている。その上にさらに担当業務が増えたため、明らかに業務過多であること、残業は意地でもしたくないためなんとか日中に終わらせているが、日中はトイレに行く時も早足になっているとのことでした。最近では、朝のアラームは7時なのに6時になぜか目が覚めてしまうようになったことを心配し、今日は産業医面談に来たのでした。

残業が増えたわけではないけれど、日中の業務の密度が濃すぎる。これが緊張感を生み出し、毎朝予定よりも早く目が覚めてしまっている原因であると推測されました。典型的な「早期覚醒」という睡眠障害の一種です。幸い頻度は少なく、また、他の症状はなかったため、まだ医療受診を勧めるほどではないと判断し、気分転換や本人ができそうな睡眠前の習慣についての話をさせていただきました。

そしてこの面談中の雑談の中で、私が他社で見てきた、同じように残業はなくても業務が多く、就業中は密度の高い時間を平然とこなせている人に共通する点についてお話しさせていただきました。

■業務量が多くても平然とこなせる人の違い

まず、業務量が多くてもそれを平然とこなしている人本人は、業務量が多いとか、マルチタスクという言葉を使いません。そもそも、そのような認識をしていることが少ないと私は感じています。

例えば、請求書絡みの業務が5社分ある時、業務量が多いと言っている人は「A社の請求書」「B社の請求書」「C社の請求書」……と5つの業務として捉えがちですが、平然とこなすことができる人は、「請求書業務」という1つの業務と捉えている傾向があります。

また例えば、プロジェクト単位で仕事を請け負う部署で働いている人で、業務量が多いと言っている人は、「Aプロジェクト」の業務B、業務C、業務D、「Eプロジェクト」の業務F、業務G、業務Hと、細かく捉えていることが多いですが、平然とこなすことができる人は「Aプロジェクト業務」「Eプロジェクト業務」と捉えている傾向があります。

複数の書類を開いて業務をこなすビジネスマン
写真=iStock.com/ipuwadol
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ipuwadol

■マルチタスクをこなせる人は「視点が高い」

多数の業務を並行してすすめることをマルチタスクといいますが、マルチタスクをそつなくこなしている人は、そもそも業務がマルチにある(多数ある)という認識ではなく、1つ上の次元で捉えています。さまざまな業務を俯瞰することができており、少ない数の業務として集約できているから、そこまでマルチには感じていないのです。抽象度が高い、視点が高い、大きな視点をもっているという言葉も当てはまるかもしれません。

抽象度高く物事を捉えて全体を俯瞰するためには、その物事の本質を捉えたり、共通事項(最大公約数)を把握したりする能力が必要です。これはテストの点数や偏差値のように数字で表すことができる能力(認知能力)ではなく、非認知能力に入るものです。マルチタスクをそつなくこなしている人たちは、タスクをこなすのに必要な認知能力(=偏差値的な頭の良さ)を備えた上で、この非認知能力が高いのです。

■23時以降は働かない、午後も1度は休憩する

しかし、抽象度が高いだけでは外資系企業のマルチタスクをこなし続けることができるとは限りません。

私は過去に何度か、邦人企業からヘッドハンティングされて、外資系企業にきた社員に、入社した企業の印象を聞いたことがあります。社員たちは「元の会社の10年が、この会社では3年でした」とか、「元の会社の3人分をこの会社では皆一人で普通にこなしています」と答えていました。

では、外資系企業の過多な業務(マルチタスク)を、そつなくこなしている人たちは何が違うのでしょうか。

Bさんは同じ会社のもっと忙しいとされる部署で働く30代の男性でした。何度か検診結果の相談で産業医面談にきてくれていたので、ある産業医面談で私から、「今の忙しい部署で10年間働き続けられたのってすごいと思うけど、何か意識していることってあるの?」と聞きました。

するとBさんは、仕事が多く忙しいことは仕方がないと思っていること、最近は在宅でも仕事ができるが、23時以降は意地でも仕事をしないようにしていることを教えてくれました。そうやってオフをしっかり取らないと、働き続けられないと考えているようです。また、日中は疲れないのかを聞いてみると、お昼休み以外に、午後から夕方にかけて一度は必ず休憩を入れているとのことでした。Bさん曰く、「ずっと働き続けるのは無理だから、休み休みやっています」とのことでした。

夜にパソコンを使って仕事をする人
写真=iStock.com/dusanpetkovic
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/dusanpetkovic

■仕事に緩急をつけ、作戦を立てて臨んでいる

マルチタスクをそつなくこなし続けることができる人は、タフで多忙な時間を乗り越えるためにも、しっかりとオフを取れています。さらに、仕事とプライベート(オンとオフ)の切り替えだけでなく、仕事の中でも緩急をつけることができています。

マラソンだって、途中途中で給水しなければ走り続けることはできませんし、いいタイムを出そうと思ったら、緩急をつけてペース配分を考えて走る必要があります。筋トレだって、インターバル(休憩)を十分取らなければ、自分のベストは出せません。また、自己ベストを更新し続けるためには、トレーニングのタイミングなどにも気を配るなどしなければなりません。

仕事も同じです。抽象度の高い視点で業務を捉えることができても、やるべき工程数は変わりません。だからこそ、オンとオフのメリハリ、それぞれの業務のタイミング(会社でやるか在宅勤務時にやるか、日中にやるか静かな始業前にやるかなど)に気を配って作戦を立てる必要があるのです。

■マルチタスクをこなせる人は「No」も言える

マルチタスクをそつなくこなし続けることができる人について、もう一つ私が他に感じることは、仕事として自分がやるべきこと、自分ができること、自分の仕事ではないことなどをちゃんとわかっているだけでなく、必要な時はNoと言えています。そして、自分がやるべき仕事をマルチにこなしているのです。決して、やらないでいいことを自分の業務にはしていません。

一方、Noと言えない人は、本来ならばやらなくてもいい業務や自分が不得意(で他人が得意)な業務も抱えてしまう傾向にあります。これでは、なかなか本来すべき過多な業務に全能力を集中できません。

以上の話をすると、Aさんは何か思うところがあったようでした。

数カ月後、少し元気な顔をしてAさんはまた産業医面談にきてくれました。

今はもう早期覚醒はないようです。初めての昇進で頑張らなくてはと思い、必要以上に仕事を受け入れてしまっているかもしれないと気がついたこと、今は、メリハリを持って仕事はしていること、新人時代と同じように業務ごとのToDoリストを日々のカレンダーに入れるのはやめて、もう少しまとめた業務としてとらえ、なるべくリストの数を減らすように心がけているとのことでした。

産業医として、Aさんのこの先の成長が楽しみに感じています。

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武神 健之(たけがみ・けんじ)
医師
医学博士、日本医師会認定産業医。一般社団法人日本ストレスチェック協会代表理事。ドイツ銀行グループ、バンク・オブ・アメリカ、BNPパリバ、ムーディーズ、ソシエテジェネラル、フォルクスワーゲングループ、BMWグループ、エリクソンジャパン、テンプル大学日本校、アドビージャパン、テスラ、S&Pといった大手外資系企業を中心に、年間1000件以上の健康相談やストレス・メンタルヘルス相談を実施。働く人の「こころとからだ」の健康管理を手伝う。2014年6月には、一般社団法人日本ストレスチェック協会を設立し、「不安とストレスに上手に対処するための技術」、「落ち込まないための手法」などを説いている。著書に、『職場のストレスが消える コミュニケーションの教科書』や『不安やストレスに悩まされない人が身につけている7つの習慣』『外資系エリート1万人をみてきた産業医が教える メンタルが強い人の習慣』などがある。公式サイト

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(医師 武神 健之)

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