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iDeCoでもNISAでもない…税理士が「脱サラした人は真っ先に加入すべき」という節税効果抜群の制度

プレジデントオンライン / 2025年1月11日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kieferpix

働き方が多様化する今、会社員より自由なフリーランスへの転向を考える人は増えているようだ。しかし、税理士の廣岡実氏は「いっときの憧れだけでフリーランスになるのは危険。50代までは高収入でも、60代を過ぎて急に困窮する人が少なくない。老後も不自由なく暮らせるフリーランスは、大体5パターンに限られる」という――。

■フリーランスの世界は甘くない

なかなか上がらない給与。煩わしい会社の人間関係。いっそのことフリーランスになってしまおうか、と考える人は少なくないでしょう。

また、若い人の中には「自分の才能を活かして、一生フリーランスとしてやっていこう」と思っている人もいるかもしれません。しかし、フリーランスの世界は思ったほど甘くはありません。

40~50代までは毎日忙しく仕事ができていたフリーランスも、歳を取ります。世間でもよく言われるように60歳を超えると急に体も気力も「ガックリ」来てしまう人が多いようです。

■税の支払いに追われる現実

そこそこ大きな会社に勤めてきた人であれば、退職金が出ます。また、現役時代に給料から随分と差し引かれていた厚生年金で、十分ではないとはいえ、老後に毎月一定額をもらえるようになるのはとてもありがたいことです。

これがフリーランスの同世代の場合、とても心もとない状況となります。社員がいなくても法人組織にして社会保険に加入していたならまだしも、個人事業でやってきたフリーランスにとって、もらえる年金はとても期待できる金額ではありません。現役時代だって、一部の売れっ子のフリーランスを除いて裕福といえるほどの稼ぎは難しいのが現実です。

しかも若い世代のフリーランスは入ってくるお金をそのまま使ってしまう傾向にあり、確定申告ではっきりする所得税、住民税、消費税の支払いにも追われて、とても十分な蓄えを作ることはかないません。

歳は急にとるのです。私の顧問先や知り合いのフリーランスの「老後」についてお話ししておこうと思います。

■30代で脱サラ、50代までは裕福な暮らしを満喫していたが…

ケース1は、時代の流れを読み損なったAさんの話です。

30代で脱サラし、ギフト商品を商う仕事を始めました。

会社組織にして社員もいました。最初の頃は業績も良く、仕入れのために海外出張へ飛び回ったり、ベンツを乗り回したりしていました。奥様は趣味の教室を開いていて、子どもがいないこともあって、お金廻りは結構裕福な印象でした。

会社の業績に陰りが出てきたのは社長が60歳を超えたころから。扱っていた商品が徐々に売れなくなってきました。

商品が売れなくなった原因の一つは「目利きのある顧客が少なくなった」こと。少し価格が高くても、商品を見る目のある人が顧客の中心でした。

しかし、ニトリやIKEAなどの台頭で、同じような品が安く手に入るようになると、消費者は価格が安い方に流れてしまいました。消費性向が時代によって変化することに、この会社の社長は気がつかなかったのですね。価格以上の価値を感じさせる、商品の魅力を打ち出せなかったことも原因でしょう。

また、業績が良かったころは世間でよくあるように「税金を払いたくないから」と、毎年経費をバンバン使って大した利益を出さないようにしてきました。

■借入金が億単位に……自己破産する費用もなくなった

商品の売り上げが低迷してからも、やり方を変えられず、経費を抑えなかったため、金融機関からの借入金が増えていきました。在庫も多く余るようになりました。そのうちに借入金で仕入れた商品が売れないからと、価格を下げて叩き売りをし、評価損を出すようになりました。

金融機関からの借り入れが年々増え、結局、業績悪化してから10年、借入金は億単位に。とうとう社長はやる気を失ってしまいました。気が付けば74歳。自己破産する費用もなくなり、ひっそりこっそり生きていくことにしました。

ちなみに自己破産するにも裁判所や弁護士にかかる費用で100万円ほどかかるといわれています。確かに、これだけのお金をかけて自己破産しても、担保に入れている自宅は取られてしまいますし、以後10年はクレジットカードも使えませんし、会社の役員になることもできません。74歳から10年といえば84歳です。はっきり言って人生の再起は難しいと言わざるを得ません。

といっても、融資はチャラにはできません。家も競売にかけられますし、一生にわたって信用保証協会に少しずつ返済して、彼と奥さんは年金の範囲で細々と生活することになりました。

通帳を見ている夫婦
写真=iStock.com/itakayuki
高収入な時代の浪費のしわ寄せが老後に……(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/itakayuki

■この先の不安がぬぐえない50代女性

ケース2は、40代後半で潮目が変わってしまったスタイリストBさんの話です。

50歳を過ぎた女性スタイリストBさんは、20代のころはあちこちから声がかかり、忙しい毎日を過ごしていました。30代になっても勢いは衰えず、法人を設立。仕事柄、お付き合いやお誘いも多く、BMWで仕事場に乗り付け、派手な生活をしていました。

陰りが出てきたのは40代も後半になってから。それまで声をかけてくれた有名タレントが、若い女性のスタイリストを指名するようになったのです。それを皮切りに、他からもあまりお声がかからなくなってしまいました。

また、忙しさにかまけたせいもあって「お金」の管理がルーズになっていました。入ってくるお金は右から左へと使い、たいした貯蓄もしていませんでした。この先、仕事のお声がかからなくなるなんてことは全く考えないで毎日を過ごしていたので貯蓄まで気が回らなかったのです。

銀行の通帳を見てびっくりした高齢者
写真=iStock.com/kazuma seki
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kazuma seki

人は歳をとることで初めて現実に気が付き始めます。

Bさんの場合、お父様が会社を経営していて、実家が比較的裕福な家庭環境でした。しかしお父様も年を取り、会社も傾き始め、あまり親に頼ることもできなくなってきたといいます。

50歳を過ぎて、これから先の暮らしへの不安はぬぐい切れないでしょう。

■劇団のスターの辛すぎる最期

ケース3は、才能豊かな男性ダンサーCさんの話です。

Cさんは有名な劇団のダンサーでした。有名なミュージカルの主演をはったり、テレビにも出たりと引っ張りだこ。見た目が若いので、50歳を過ぎても30代のイメージで売っていて、忙しく舞台を駆け回っていました。

変化が訪れたのは50歳も半ばを過ぎてから。舞台から声がかからなくなり、テレビ出演もなくなりました。若いイメージで売っていたので役柄に合わなくなってきたのかもしれません。

彼は60歳をむかえたころに、なんと自宅で自らの命を絶ってしまいます。

彼が何を思って自殺したのか。それは知る由もありませんが、次第に老けていく容姿、かすれていく声……自分が老けていくことに耐えられなかったのかもしれません。

私としてはCさんなりの人生を全うしたのだと思いたいですが、芸能分野で働くフリーランスの老後の難しさをつくづく感じました。

■悲惨な老後を迎えていないフリーランスも…

辛い例がつづきましたが、最後に紹介する作曲家のDさんは、老後を見据えた貯蓄が功を奏したケース。現在お聞きしている話では、悲惨な老後とはなっていないようです。

作曲家のDさんは、世間的な知名度はそこまでなものの、若いころからそれなりに仕事がある人でした。50代まで精力的に仕事をこなしていましたが、60歳を超えたころから「気力」が衰えてきたといいます。

ずっと同じ仕事をしてきて「飽き」が来てしまい、モチベーションが落ちてきてしまった、とおっしゃっていました。

ただしDさんは、仕事の調子がいい頃から会社組織にし、仕事とプライベートのお金をきちんと分け、給料の範囲内で自由にお金を使ってきました。会社も赤字とならない範囲で経費を使うなど、堅実な会社経営をしてきたのです。

(この人自身はお金にルーズな面もありましたが、奥様がとても堅実な人で、会社が儲かっても社長の給料はそこそこに抑える。夫が全部使ってしまっても奥様の給料で十分に生活できる、というように采配していました。堅実なパートナーの存在は大きいでしょう)

また、かつては会社でかける生命保険の保険料を「経費」にできる商品が多かったため、せっせと生命保険に加入して「将来のお金を作ること」もしていました。事務所も、もともとは別に借りていたのですが、収入に応じて自宅兼事務所に借り換えるなど、しなやかに家賃という固定費を変化させてきました。

63歳になったころには東京を離れ、家賃10万円の神奈川の一戸建てへ。東京にいなくてもできる仕事だったことも幸いしたのでしょう。

収入は減ったものの、生活費を抑え、せっせと加入した生命保険を少しずつ解約しては、その保険金を会社の収入の補塡に使うなどし、そこから給料を捻出して生活しています。

それと、これはとても幸いなことなのですが、奥様の実家が千葉県にあり、年金暮らしではありますがお母様が住んでいるそうです。最終的にはこの実家も活用できるでしょう。

■稼いだお金の半分は「税の支払い」に

ここまで読んでも「私は大丈夫」と思っている人もいるかもしれません。例えば、カメラマン、スタイリスト、編集者などのフリーランスは、特に若い頃は結構いい稼ぎができます。本人もやる気満々だし、周りからもちやほやされて毎日忙しい日々が続きます。

個人事業でやっているフリーランスの経理で一番の悩みは「資金繰り」。中でも「税金の支払い」でしょう。稼いだ翌年にかかる所得税、住民税、消費税は、実際、かなりのダメージとなります。

ざっくり言って、稼いだお金の半分はこれらに消えていくことになります。加えて、生きのいいフリーランス時代はお金の使い方も派手になりがち。お金が入ってくるし、外食や衣装代、車などを経費にできることもあり、どうしても派手に使ってしまいます。老後の不安もあるからと各種保険で賄うと、手元に残るお金は本当に少なくなってしまいます。

そして、これらのある意味で派手な職業はいつか、お声がかからなくなります。それは突然やってくるのです。お声がかかっても安い仕事になってしまうこともあるでしょう。フリーランスで明るい老後が見込めるのは、私の経験上では、次のパターンに限られる気がします。

・配偶者が大企業のサラリーマンであること
・親にそこそこの財産があって「相続に期待できる」こと
・ある程度の規模になったら会社組織にして、生活費と活動費を明確に分けるようにして「節税」すること
・お金の勉強をしっかりして「経理に明るくなる」こと
・早くからコツコツと貯蓄をし「堅実な生活ができる」こと

■老後のために今すぐすべきこと

退職金がないフリーランスは、将来への備えも重要です。

まず、最初の加入をおすすめしているのが「小規模企業共済」。これは中小企業基盤整備機構が運営する積立制度です。掛け金を全額所得控除できるので、節税効果があるのがメリットです。

預金通帳の残高に悩む女性
写真=iStock.com/mapo
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mapo

投資も考えた方がいいでしょう。すでにご存知かと思いますが、「iDeCo」と「NISA」があります。今年から始まった「新NISA」では年間投資額の上限が今までの一般NISAと比べて3倍に拡大し、生涯で投資できる総額も大きくなりました。

通常の投資では株式・投資信託の配当金(分配金)や値上がり益に対しては、約20%の税金がかかりますが、「iDeCo」と「NISA」口座で運用した利益には税金がかかりません。

何度でもお伝えしますが、フリーランスは資金繰り対策が大事。

経費を増やすことを「節税」だと考えている人ほど、こういった「iDeCo」と「NISA」を利用していない人が多いのはなんとも不思議なことです。

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廣岡 実(ひろおか・みのる)
税理士法人TOTAL丸の内事務所・税理士
1959年生まれ。神奈川県出身。明治大学商学部を卒業。大学卒業後、大手商社に就職。会社員として経理・総務部門の実績を積む。税理士であった父親の病気をきっかけに退職し、父の税理士事務所で修行。1995年、税理士資格取得と同時に「税理士廣岡事務所」を設立。2024年1月より税理士法人TOTALのパートナーとして合流。「みんなが儲けてほしい」をモットーに顧客の立場に寄り添ったきめ細かいアドバイスが人気を集め、各種フリーランスや中小企業の顧客を増やす。ファイナンシャルプランナー(AFP2級)の資格も持ち、お金の知識、経営のノウハウを月一度のレターで25年以上顧客に発信し続け、「先生のおかげで起業できた」「事業が拡大した」という声も多い。近著は『お金の管理が苦手なフリーランスのための お金と税金のことが90分でわかる本』。

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(税理士法人TOTAL丸の内事務所・税理士 廣岡 実)

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