だから中居正広は電撃引退した…「女性トラブル報道」から35日の間にあったトップアイドルの知られざる苦悶
プレジデントオンライン / 2025年1月24日 19時50分
■突然の引退発表のウラにある3つの要因
1月23日、女性トラブルで渦中の中居正広が同日での芸能界引退を発表した。発端となった週刊誌報道は昨年12月19日だけに「わずか35日での電撃引退」と言っていいだろう。
ただ、中居の引退発表は、示談をした相手女性との守秘義務があるためか、文章でのコメントのみだった。騒動以降、その声を発することなく引退を発表したことにモヤモヤを感じている人も多いのではないか。実際、ネット上には「逃げた」「無責任」などの批判と、複雑な心境で引退を惜しむような声が錯綜している。
それにしても、かつて「国民的アイドル」と言われたSMAPのリーダーであり、日本のテレビ業界を代表するMCとしては、何とも虚しい結末となってしまった。
なぜ中居は1カ月あまりで芸能界引退を決断するに至ったのか。その背景には3つのポイントがある。
引退を発表した中居のコメントに、「ご報告にあたりましては、私がこれまでに携わらせて頂きましたテレビ各局、ラジオ、スポンサーの皆さまとの、打ち切り・降板・中止・契約解除などに関する会談がすべて終了し、本日となった次第でございます」というフレーズがあった。
事実、中居の出演番組がなくなったタイミングでの発表であり、裏を返せば、それがなければもっと早く引退していたということだろう。これまで中居はジャニーズ事務所からの独立会見などで「番組が終わってしまうかもしれない」などとリスクを語っていたように「自分が求められているか」に敏感なところがあった。裏を返せば、そんな敏感さがあるからこそ老若男女を束ねるMCを高いレベルでこなせたのかもしれない。
■要因①人前に出られない
ただ、1月9日に発表した声明では、女性とのトラブルを「事実」と認めつつも、「暴力はなかった」「示談が成立した」「芸能活動を支障なく続けられることになった」ことを強調していた。これは少なからず「芸能活動を続けたい」という意思表示だろう。
しかし、この声明が世間の猛烈な怒りを買ったことで、その気持ちは一気に引退へと傾いたのではないか。少年時代からアイドルとして人前に立ち、MCとして番組の顔を務めるなど、最前線で注目を集めることの難しさやプレッシャーが中居ほど体に染みついているタレントはいない。それは筆者が『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)などの取材時にも感じたことであり、本人があえて「のんびりなかい」という会社名を選んだことからもうかがえる。
声を発することなく文章の発表に留めたことから、「もう人前に出られない」という意識がうかがえた。実際のところ、スポンサーのいるテレビは難しくても、配信コンテンツなら芸能活動は続けられるはずだが、それすら選択肢にないのは、これまで感じてきた難しさやプレッシャーに加えて、9日の声明で猛批判を受けたからではないか。
とはいえ、トーク力でMCという芸能界のトップにのぼり詰めたタレントだけに、口をつぐんでの引退は理解が得られづらいだろう。
■要因②守秘義務
もう1つ、中居の電撃引退にふれるうえで忘れてはいけないのが、相手女性側との示談における守秘義務。本来、これは女性側だけでなく、中居の仕事も守るためのものだが、今回はこれがあだになったという感もある。
会見をしたところで、話せないことばかりであり、自分の言葉で語ることはできない。さらに、そんな会見を開いても、さらに怒りを買ってしまうだけで意味がない。もはや示談の意味合いは薄く、逆に身動きが取れない状況になってしまったという芸能人ならではのケースだろう。
そんな身動きの取れない状況が、「世間の人々は中居が何をしたのかわからないまま憶測を目にする機会が増え、批判するしかない」という結果につながってしまった。中居がどれだけの悪事を犯したのかはわからないが、語れないからこそ「相当悪いことをした」という見方で集約されがちなのは確かだ。
そして見逃せないのは、週刊誌報道の中に相手女性の「許せない」というコメントがあったこと。芸能活動という点では、示談や守秘義務を無力化させるようなコメントであるほか、これが世間の批判につながっていった。
世間の人々にとって「芸能人における疑わしきはグレーではなくクロだろう」。第三者に過ぎないことはわかっていつつも、「自分たちが納得できるか」という基準で人間の是非を決めようとする世の中に変わったのかもしれない。
いずれにしても、示談という民法上の和解よりも、民意に左右されやすい世の中になったことが、中居の引退を早めた理由の1つだろう。
■要因③フジテレビの危機に対する自責
週刊誌の続報によって騒動の中心がフジテレビに移り、多くの人々を巻き込んでしまったことも中居の引退を早めた感がある。
75社超がCMを控え、「フジテレビの番組はACジャパンばかりになる」という前代未聞の状況に中居が責任を感じたことは間違いないだろう。
ネット上では一部で「中居はフジテレビのために口を開かず引退させられた」などと疑いの目を向けるコメントもあるが、これは見当違いだろう。徹底した調査を行う第三者委員会に加えて内部告発なども含め、もはや中居が口をつぐむだけで同社を守り切れるはずがない。
それよりも中居の言動を振り返ると、早期の引退を選んだ理由が見えてくる。
かねて中居はスタッフの生活を気にかける言葉を発していた。特にSMAPの解散時やジャニーズ事務所からの独立時は、自分の番組が終了することで出入り業者を含めたスタッフたちが仕事を失うことは避けたい。当時、取材しながらそんな思いを感じさせられたことを覚えている。
その点、今回の騒動では中居の問題がフジテレビ全体に広がり、多くの社員や業者の生活をおびやかす状況に陥ってしまった。報道が事実であればフジテレビにも非があり、会見などで対応を間違えたのも同社だが、これまでの言動を見る限り、中居がスタッフの顔を思い浮かべ、責任を感じないとは考えづらい。
■二度とテレビでは見られないのか
さらに中居は被災地への炊き出しや寄付、コロナ禍における医療従事者への差し入れなど、チャリティーに積極的だったのはよく知られる話。業界内でその総額は数億円と言われるほどであり、独身にしてはあまりある収入を必要な人に分配するようなニュアンスを感じさせていた。今回の女性トラブルが報道の通りであれば擁護できないが、そういう人柄もあることは確かだ。
思えば中居は「自分はどうにでもなる身軽な独身だけど、家族のいる共演者やスタッフは大変」と語ることも多かっただけに、23日に開かれたフジテレビの社員説明会における混乱、27日に予定されている再会見なども含め、「やはり自分は引退するしかなかった」という思いを深めているのではないか。
ここまで「人前に出られない」「守秘義務」「フジテレビの危機に対する自責」という3つのポイントから中居の引退を掘り下げてきたが、「これでその姿を二度と見られなくなるのか」と言えばそんなことはないだろう。
実際、24日は朝から中居の姿を映す番組が多く、なかにはデビュー時からの歩みを映像で振り返るようなものあった。今回は許諾不要な報道での引用であることを差し引いても、相手女性と示談が成立しているだけに「中居を映してはいけない」ということは考えづらく、SMAPの再結成こそ絶望的だが、過去の映像を見ることはできそうだ。
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コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者
テレビ、エンタメ、時事、人間関係を専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、2万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。
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(コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者 木村 隆志)
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