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「手取り800万貯金ゼロ」vs「300万で貯金1千万間近」お財布比べ

プレジデントオンライン / 2013年4月15日 8時45分

堀井貴之さん(仮名・36歳)

■お金はあるだけ使っちゃうんです

「僕は今でも“給料は必ず右肩上がりになる”と信じてるんですよ」

ほとんどの人が給与頭打ちで、先行きに不安を抱えているこの時代にあって、こんな能天気とも取れる発言をするのは、堀井貴之さん(36歳)だ。

いわゆる就職氷河期世代である堀井さんは大学卒業後、銀行に就職し、その後3度の転職を経て、現在は外資系IT企業で部長を務めている。現在の税込み年収はおよそ1100万円。住まいはベイエリアのタワーマンション、共稼ぎの妻と2人で暮らしている。だが、現在の貯蓄額は「50万円程度」で、貯まってもすぐ使い切ってしまうという。

「お金はあるだけ使っちゃうんです。まずは旅行。ひと味違った旅行が好きなんですよ。欧州クルーズとか南極大陸とか、1回100万~200万円は使います」

衝動買いはしょっちゅう。ブランド物も好きだという。たしかに身につけているのは一見して高級とわかるものばかり。バブル世代顔負けの「肉食系消費パワー」である。

「でも、一番使っているのは飲み食い、かな」

ベンチャー起業家などの仲間と毎晩のように食事をしながら親交を深める。支払いはすべて堀井さんのおごりだ。

「将来は“いつもは社内でフラフラして、イザというときは素早く人を集めてプロジェクトをバシっと決められるおっさん”になりたいんです」

その鍵になるのが“人脈”。毎晩の交流会は、その目標に向けた投資というわけだ。

銀行からベンチャー企業に転職したときは、年収が600万円まで下がり、一時は4つのカードローンの合計が500万円にまで膨らんだこともある。実は、結婚費用もカードローンで払ったという。

「年収が下がっても転職したのは、経験を積むためです。最初から、お金が足りなければ借金するつもりでした。借金しても自分に“投資”したほうがレバレッジが効く。その投資が今の自分に活きている、と信じたいですね」

カードローンはすでに完済し、今は6000万円で買ったマンションの住宅ローンだけ。妻とは別々にローンを組み、支払いも別々にした。

「実は、妻のほうが年収が多いんです。住宅ローンも、妻は自分の分は繰り上げ返済してもう終わらせたようです」

どうやら妻はかなりのしっかり者のようだ。そんな妻との2人暮らしだから、今の生活ができているのでは?

「子供ができて、いずれ『ピアノ習いたい』なんて言うようになったら、今みたいな生活はできませんね。そしたら、仲間に『ごめん、もうおごれない』って言います(笑)」

しかし、たとえ子供のためでも、積立貯金などはまったくするつもりはないという。

「お金がすぐ使えるような状況でないといやなんです。ほしいものがあったときに買えないと後悔しますからね。お金が足りなくなったら借りればいい、とも思うんですよ」

あまりにも楽観的な発言だが、リストラにあったら? 妻が働けなくなったら? 大病を患ったら? という不安はないのだろうか。

実は、そんな堀井さんも虎の子の財産を持っている。これまで勤めた会社の自社株とストックオプション(株式をあらかじめ決まった価格で買い取る権利)だ。現在の価値は総額で1000万円ほどあるという。「お金はいつでもあるもの」という幻想の中で浪費していたバブル世代と比べて、あくまで自分の中では計画性を持ってお金とつきあっているように思える。

「僕の老後って、いっぱいお金を持っているか、のたれ死んでいるか、どちらかでしょうね」

堀井さんはそう言って、屈託なく笑った。

■草食系節約女子は積み立てで貯金

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沢 スミレさん(仮名・29歳)

そんな堀井さんと正反対ともいえる金銭感覚を持つのが、少し下の世代の沢スミレさん(29歳)。首都圏郊外の病院で、作業療法士として働いている。1人暮らしで手取り年収は300万円台だが、貯金はもうすぐ1000万円に届きそうだ。

「貯金は先取り貯蓄だけです。毎月の積み立ては定期預金に3万円、投資信託に2万円。このほか6月と12月に10万円ずつ貯めています」

最初は毎月、ゆうちょ銀行に預けていた。書店でマネー雑誌を見て、ネット銀行の自動積み立て定期預金と投信積み立てに替えたという。

「就職したとき、社会人として貯金がないと恥ずかしい、って思ったんです。周りの人も同じように貯金しているものだと思っていました」

慣れない取材に、俯きがちに話す沢さん。鮮やかな青のセーターに大きなペンダント。清楚でお洒落なOL、といった雰囲気だ。ケチな人にありがちな、なんとなくガツガツした印象は微塵もない。

沢さんは極端な節約に邁進したりするタイプではない。ただ、ブランドにはまったく興味がなく、同僚のように毎月洋服を買ったりしないだけである。

「職場ではトレーナーなので、外出用の服が少しあれば十分なんです」

昼食は病院で給食がある。1人分の朝食と夕食を作るだけだから月に1万5000円ですむ。飲み会にも参加して、食費は合わせて月2万円だ。

しかし、節約一辺倒ではなく、好きなことにはお金を使う。化粧品は有名ブランドで揃えているし、週に1回、スポーツジムにも通っている。

「家計簿は就職してからずっと付けています」

沢さんには、自然にお金が貯まる習慣が身についているようだ。それは、いったいいつ覚えたのだろうか?

「自営業で苦労していた両親を見て“お金は大事だな、ちゃんと手に職を持とう”って思ったんです。高校生のときに、将来性があるのは医療と福祉の分野だって考えました。それで、専門学校に進学して資格をとったんです」

周囲にそんなことを考えている同級生は1人もいなかったという。それはそうだろう。

勤務する病院の始業は朝8時半。だが、沢さんは1時間前には病院に行く。

「この仕事を選んで本当によかった、と思います。ずっと続けられることもありますが、私は患者さんと向き合うこの仕事が大好きなんです」

まさに「草食系節約女子」とでもいおうか。自然にキャリアもお金も積み上がっていくタイプだ。

もうすぐ貯金は1000万円に手が届く。次の目標は2000万円だろうか。

「その前に、結婚して子供のために使ってしまうと思います。家庭を持って、自分で家を買うのが夢なんです」

もしお金持ちの男性と結婚しても、仕事は絶対に続けるつもりだ。

「自分の社会的立場もほしいですし、夫に買ってもらうのは抵抗があるんです。高い化粧品だって、自分で働いたお金なら堂々と買えますよね」

■ポリシーを持ってお金に向き合う

「肉食系消費男」と、「草食系節約女子」──。10年後、2人はどんな生活を送っているのだろうか。

沢さんはこの先、たとえ大きな試練にみまわれたとしても、風にしなる草木のごとく、着実に堅実にお金を貯めていくのだろう。堀井さんは希望どおりフラフラしたおっさんになり、かわいい子供はピアノ教室に通っているのか……。

正反対に見える2人だが、何にせよ自分なりの目標を持って、たくましくお金に向き合っているところは共通しているように思う。

ちなみに、この記事を読んだ独身男性諸氏が「沢さんを嫁にほしい」と編集部に電話をいただいてもお取り次ぎはしません。あしからず。

(プレジデント編集部 澁谷高晴=撮影)

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