レーザーフュージョンターゲット追尾・レーザー制御・照射システム実証のための研究施設を開設
PR TIMES / 2024年4月5日 11時15分
株式会社EX-Fusion(代表取締役社長: 松尾一輝、以下「EX-Fusion」)は、レーザーフュージョンエネルギー実現の基盤技術であるターゲット追尾・レーザー制御・照射システムの実証研究を行う自社研究拠点を中小機構が運営するHi-Cube(静岡県浜松市内)に開設しましたので、お知らせいたします。
1.背景・目的
温室効果ガスを排出しないエネルギー源が求められる中、レーザーフュージョンは、持続可能なエネルギー源として国内外から高い期待が寄せられています。2022年、米国でレーザー投入エネルギーを上回るフュージョンエネルギーが達成され、発電炉の開発に向けた研究開発が加速しています。レーザーフュージョンは、運用の周波数を調整することで電力供給の負荷変動に柔軟に対応できる能力があり、エネルギー供給の脱炭素化への貢献が期待されています。
2023年4月、日本政府は「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」を策定し、国内でフュージョンエネルギーの研究・開発が加速する環境が整いつつあります。今後、国際的な競争が激化する中で、日本独自のフュージョン技術群の開発とその応用の重要性が高まっています。
このような背景を踏まえ、レーザーフュージョンエネルギー実現に向けた研究・開発を行うEX-Fusionは静岡県浜松市内に、要素技術の統合実証を行う研究拠点を開設しました。 研究拠点では、これまで要素技術として開発してきたターゲットの連続供給技術、ターゲット追尾技術、繰り返しハイパワーパルスレーザーの制御・照射技術を統合し、研究開発を加速させていきます。
ここで得られる知見とレーザー技術群は、フュージョンに加えて、レーザー加工、半導体製造技術、レーザー宇宙デブリ除去など多様な応用分野での利用が期待されます。EX-Fusionは、このような広範な技術応用にも取り組み、技術の社会実装を最大限に推進していきます。
2.研究の内容
レーザーフュージョン炉では、直径3-4mmの氷状の水素同位体燃料球を炉の中心めがけて速度100s/sで射出し、照準を合わせてレーザーを多方面から集光照射します。確実にフュージョン反応を発生するためには、反射ミラーから約10m先にある速度100m/sで飛翔するターゲットに対して、位置精度50μm以内でレーザーを集光照射する技術が必要です。EX-Fusionは、国内の大学研究機関と連携して、ターゲット供給、追尾システム、レーザー制御・照射システムの要素技術開発に取り組んできました。今回開設する研究拠点では、ターゲット供給の精度とレーザーの集光照射精度を向上させ、それらを統合させたシステムで、最終的に炉の実現に求められる目標精度を達成するための基盤技術を開発実証していきます。
これまでのレーザーフュージョン研究開発では、レーザー照射頻度が1日に数回と低いため、フュージョン燃料となるターゲットは炉の中心で位置調整してから、レーザーを照射する方式が一般的でした。一方、将来の発電炉では、10Hz程度の繰り返し数でターゲットを連続供給して、レーザーを照射する必要があり、発電炉実現にむけた重要課題の一つとなっていました。EX-Fusionでは、日本の強みであるハイパワーレーザー技術を活用しながら、コンパクトな装置で要素技術の統合実証を行い、発電炉に向けてシステムをスケールアップしてく方針を掲げています。
3. 今後について
2026年までの3年間では、レーザーフュージョンエネルギーの実現に向けた要となるレーザー照射システムの統合試験と実証を進めます。この活動を通じて、商用炉の基盤技術の一つを確立することを目指しています。急速に進化しているレーザー技術をさらに発展させ、未知の領域への挑戦を通じて、新しい産業や先進的な光技術の発展の原動力としての役割を果たします。そして、これらの技術を社会に導入する際の取り組みを加速させることを目指します。
[画像: https://prtimes.jp/i/86624/15/resize/d86624-15-d7d50eed240f549c0157-3.jpg ]
【用語説明】
(1) レーザー核融合商用炉: 安全で信頼性が高く、 高レベルの放射性廃棄物を生成しないクリーンエネルギー。 海水から採れる豊富な燃料を使用した核融合炉によって生成されます。 原子炉と同等以上の発電量と従来の再生可能エネルギーの安全性を備えていると同時に、レーザーの繰り返し数を変えることで負荷変動にも対応できます。
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