ナイジェリア:過去にない栄養危機の恐れ、人道援助の急拡大を
PR TIMES / 2022年7月1日 19時45分
今年5月以降、ナイジェリア北東部のボルノ州マイドゥグリにある国境なき医師団(MSF)の栄養治療センターには、過去にないほど多数の栄養失調児が来院。深刻な栄養危機が懸念されている。現在の傾向が続けば、食糧難のピーク時には、栄養危機が例年よりもはるかに深刻になる可能性があり、MSFはボルノ州での人道援助を急拡大するよう訴える。
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例年以上の栄養失調の患者数
MSFが入院栄養治療センター(ITFC)で、今年1月から6月までの期間に治療した栄養失調児は2140人で、前年同期比で約50%も増加している。
ナイジェリアでMSFの活動責任者を務める、シャウカト・ムッタキは「備蓄食料がなくなり、栄養失調の患者が増える例年のピーク時を前に、これ以上事態が悪化しないよう、いますぐ行動を起こすことが必要です」と指摘。「MSFの病院や診療所は2017年のプロジェクト開設以来、月単位で見たこともないほどの患者ですでにあふれています。食糧難のピーク時に備えて緊急の措置を講じない限り、マイドゥグリは致命的な状況になってしまいます」
直近6週間は、食糧難の時期が始まったばかりにもかかわらず、例年よりも早いペースで栄養失調の患者が急増。5月までに外来栄養治療プログラムで治療を開始した患者数は前年比で25%増加した。これに対しMSFは急遽、ITFCの受け入れを120床から200床に増やしたが、6月には栄養失調の子どもが殺到し、病床が足りない日もあった。
医療も食糧も予防接種も……
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他の人道援助団体も、限界を上回る水準で活動しており、資金不足のために活動を縮小せざるを得ない団体も出てきた。重要な役割を担っている16カ所の外来栄養治療センターも閉鎖に追い込まれている。現在の傾向が続けば、診療が限界に達し、さらに多くの栄養失調児が死の危険にさらされる。
「最も緊急に必要なのは、重度栄養失調児の治療ができる病院の受け入れ態勢の拡充です。同時に、最悪の事態を未然に防ぐには、地域レベルでの援助活動を大幅に拡充する必要があります。外来栄養治療プログラムや食糧安全保障、予防接種、清潔な水と整った衛生環境へのアクセスを拡大する必要があるのです」とムッタキは話す。
栄養失調はボルノ州における慢性的で多面的な問題であり、避難民、治安問題、貧困、医療へのアクセス不足などが重なって起きている。歴史的には6月下旬から9月上旬、作物の植え付けから収穫までの食糧難の時期に最も深刻化する。さらに、予防接種率の低さ、清潔な水や衛生、医療へのアクセス不足といったストレス要因が、慢性的な食糧不足と相まって、子どもたちに壊滅的な影響を与えることも少なくない。
はしかやコレラといった感染症の集団発生や、マラリアの季節的なピークは状況をさらに悪化させる。2021年にナイジェリアは異例のコレラの大流行に見舞われたが、ボルノ州にいる子どもたちの予防接種率は現在でも非常に低い。医療へのアクセスは、避難生活を送っている人びとを中心に日常的な課題となっている。
「私の子どもたちは、生まれた時の予防接種以外、一度も予防接種を受けたことがありません。4歳の息子は毎年、雨期になると体調を崩します。この地域には無料の医療機関がないので、薬局に連れて行って薬をもらうしかありません」と話すフサイナ・アリさんの末っ子も、ITFCで栄養失調の治療を受けている。
援助の拡大と食糧難のピークへの備え
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長年にわたる紛争と治安悪化で、人びとは長期的に避難せざるを得ない中、作物を育てることも医療にアクセスすることもできない。食糧価格の高騰は避難民にとって重い負担となっている。MSFのITFCで受け入れた栄養失調児の32%は、人道援助に頼らざるを得ない国内避難民の世帯から来ている。
ナイジェリアでMSFの医療コーディネーターを務めるヘット・アウン・チー医師は、「例年の食糧難のピークが近づく中、ボルノは数千人の子どもたちの命を危険にさらす危機の瀬戸際に立たされているのです。ただちに栄養面での対応を急拡大するとともに、人道援助団体はピークに備えて一層の準備をしなければなりません。医療援助の拡大は、栄養失調の対策に取り組むと同時に、はしかやコレラなどの感染症の流行防止も期待できます」と訴える。
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