【ファンケル研究情報】エラスチンを構成する重要なタンパク質の産生に表皮と真皮が互いに働きかけていることを発見
PR TIMES / 2024年4月8日 12時45分
エラスチンの構造維持に重要であることも確認
株式会社ファンケルは、2016年からシワやたるみのメカニズムの解明の一つとして、加齢によりエラスチン1)の「量」が減少するだけでなく、形などの「質」の変化にも着目して研究を行っています。今回、エラスチンを構成する重要なタンパク質「EMILIN-1」2)の産生には、表皮角化細胞3)と真皮線維芽細胞4)が互いに働きかけていることを発見し、エラスチンの構造維持にそれらの働きが重要であることを発見しましたので、お知らせします。
本研究成果は、肌本来の機能を高めてアンチエイジングにつながるエラスチン研究の新たな知見とし、関連する化粧品の開発に応用してまいります。
なお、本研究成果と共にこれまでに報告した内容(※1参考資料)の一部は、学術雑誌International journal of cosmetic science(※2)に掲載されました。
【研究結果】
<表皮角化細胞と真皮線維芽細胞のお互いの働きかけでEMILIN-1の量が増加>
皮膚は、主に上から表皮と真皮の二層で構成され、エラスチン線維は真皮に存在しています。エラスチン線維を構成するタンパク質の中で、特にエラスチン線維の構造維持に重要で肌の弾力に影響するEMILIN-1の局在について、ヒト皮膚組織5)を共焦点レーザー顕微鏡で確認したところ、表皮の非常に近いところまでエラスチン線維の先端が伸びていることが分かりました(図1)。
[画像1: https://prtimes.jp/i/17666/1182/resize/d17666-1182-3770387136f96bbd3fa4-0.jpg ]
さらに、真皮線維芽細胞によって産生されるEMILIN-1が表皮に近い部位にも局在することから、表皮角化細胞も、EMILIN-1の産生に影響している可能性があると考え、真皮線維芽細胞を表皮角化細胞の存在下で培養し、EMILIN-1の産生量を評価しました。
その結果、真皮線維芽細胞の単独培養よりも、表皮角化細胞との培養(共培養)で、産生するEMILIN-1の量は増加することが分かりました(図2)。
併せて、表皮角化細胞に紫外線や酸化ストレスの刺激を加えてから、真皮線維芽細胞と共培養すると、EMILIN-1の量は減少することも分かりました(図2)。
[画像2: https://prtimes.jp/i/17666/1182/resize/d17666-1182-1591729e32400e8885d5-1.jpg ]
<表皮角化細胞由来の「AREG6)」と「IL-1α7)」が真皮線維芽細胞のEMILIN-1産生を調節>
表皮角化細胞と真皮線維芽細胞の共培養によるEMILIN-1産生量の増加や、表皮角化細胞のストレスによる減少などの調節には、両細胞間にお互いの働きかけが考えられます。そこで、表皮角化細胞から分泌され、真皮線維芽細胞に働きかける成分を検証しました。その結果、表皮角化細胞から分泌されているタンパク質「AREG」と「IL-1α」が、真皮線維芽細胞に働きかけることによって、EMILIN-1の産生を調整していることが分かりました。真皮線維芽細胞を「AREG」で刺激するとEMILIN-1の量は増加し、「IL-1α」で刺激するとEMILIN-1の量は減少することを確認しました(図3)。
また「IL-1α」で刺激するとEMILIN-1の量は減少し、EMILIN-1の分解酵素である「カテプシンK8)」が増加していることが分かりました(図3)。
[画像3: https://prtimes.jp/i/17666/1182/resize/d17666-1182-fb05889dbd6b9367951e-2.jpg ]
以上の結果から、EMILIN-1の産生は、表皮と真皮のお互いの働きによって調整されていることを発見し、これらの働きはエラスチン線維の構造維持に重要な役割を持つことも同時に確認しました。
エラスチン線維の構造変化は、シワやたるみの重要なメカニズムの一つです。エラスチンの「質」の変化は、皮膚の真皮だけでなく表皮にも影響していることから、真皮と表皮の両状態を良くすることが、エラスチン線維の構造維持に重要であることが示唆されました。
【研究目的】
当社は、透明化した皮膚組織を三次元的に構造解析し、加齢に伴ってエラスチン線維の構造変化にEMILIN-1 が関わっているということを確認し、エラスチン線維の構造維持に重要であることを示唆してきました。しかし、EMILIN-1がどのように変化し、エラスチン線維の構造変化に影響を与えているかが解明できていませんでした。そこで、EMILIN-1の産生に着目し、産生の調整要因を明らかにすることを目的として研究を行いました。
【用語説明】
(※1)参考資料
https://www.fancl.jp/laboratory/pdf/20191129_hifunotoumeikakijutsuemilin1.pdf
https://www.fancl.jp/laboratory/pdf/20210929_shiwabuinoerasuchin.pdf
https://www.fancl.jp/laboratory/pdf/20211101_erasuchinnokouzouijinihabunkaisasenai.pdf
https://www.fancl.jp/news/pdf/20211221_shiwanogenindearuerasuchin.pdf
https://www.fancl.jp/news/20230016/pdf/20230222_erasuchinseninoshitsu.pdf
(※2) Int J Cosmet Sci. 2024 Feb 14. doi: 10.1111/ics.12947.
「Elastin microfibril interface-located protein 1 in fibroblasts is regulated by amphiregulin and interleukin-1α produced by keratinocytes」
1) エラスチン:
皮膚の真皮に存在し、弾力をつかさどる弾性線維。
2) EMILIN(Elastin Microfibril Interface-located protein)-1:
弾性線維を構成するフィブリリンとトロポエラスチンの間に存在し、接着の役割を持つタンパク質。
3) 表皮角化細胞:
皮膚のバリア性を保つために存在する表皮を構成する表皮角化細胞。
4) 真皮線維芽細胞:
真皮に存在するコラーゲンやエラスチンを生み出す細胞。
5) ヒト皮膚組織:
本研究はヘルシンキ宣言の倫理的原則に基づき、倫理的配慮のもとに入手した皮膚組織を用いて行っています。
6) AREG(Amphiregulin):
細胞の生存、増殖、運動性の制御に関わるタンパク質。
7) IL(Interleukin)-1α:
炎症や組織損傷が起きた時に分泌されるタンパク質。
8) カテプシンK:
ファンケルがEMILIN-1の分解酵素として機能することを明らかとした。システインプロテアーゼの一種。
https://www.fancl.jp/laboratory/pdf/20211101_erasuchinnokouzouijinihabunkaisasenai.pdf
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