「女の人生フルコース」を歩む。シェイクスピアとともに歩む。各界から注目の翻訳家、初の評伝『逃げても、逃げてもシェイクスピア 翻訳家・松岡和子の仕事』本日発売!
PR TIMES / 2024年4月20日 21時40分
坪内逍遥、小田島雄志に続く全作品翻訳を成し遂げた翻訳家の仕事と人生はこんなにも密接につながっていた――。
結婚、出産、働きながらの育児、そして義母の介護をこなしながら、28年かけてシェイクスピアの全作品に新たな命を吹き込んだ松岡和子さん。その人生と仕事の流儀を草生亜紀子さんが丁寧に聞き取って紡いだ初の評伝『逃げても、逃げてもシェイクスピア 翻訳家・松岡和子の仕事』を新潮社から4月17日に刊行します。
[画像: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/47877/1442/47877-1442-5bcfce51ad2c18baf6f0f5b4aaf672cc-1280x1880.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
実は苦手だったシェイクスピア。避けて通るはずが、運命の糸は翻訳家を全戯曲完訳の偉業達成へと導く。そして、人生の経験すべてが、古の大作家が遺した名作群の一言ひとことに血を通わせていった。ソ連に11年抑留された父。女手一つで子供達を守り育てた母。自身の進学、結婚、子育て、介護、そして大切な人達との別れ。蜷川幸雄らとの交流、一語へのこだわりを巡る真田広之や松たか子、蒼井優といった俳優たちとの交感まで、すべてを明かす宝物のような一冊。
【目次】
プロローグ
第1章 父と母
引き揚げ後の暮らし/明治生まれの母・幸子/犬に噛まれる/ソ連獄窓11年/いわれなき懲役25年/驚異のロシア語習得/許された家族への手紙/脳出血で倒れる/待ちに待った日──「さあ! 手紙だよ」/政治状況の変化に翻弄される/さらなる病状の悪化/ダモイへの道
第2章 学生時代
勉強か青春謳歌か/大学選択でまた悩む/シェイクスピアからの逃走その1/劇団研究生になる/シェイクスピアからの逃走その2/「この人と結婚するかも」/学生運動の真っただ中で
第3章 仕事・家族
初めての翻訳/弟が設計した自宅/姑との関係/触れるとやさしさが流れる
第4章 劇評・翻訳
戯曲翻訳の世界へ/ドラマ仕掛けの空間/シェイクスピアに向かう運命の糸/天寿を全うして──父の死/「生きている側に軸足を」/「いい施設を探してちょうだい」
第5章 シェイクスピアとの格闘
自分が新訳する意味は何か?/夜は明けるのか明けないのか/女性キャラクターの言葉遣い/シェイクスピアの追体験/シェイクスピアと向き合うための「頭がまえ」/読むと訳すとは大違い/書かれていないことを決める苦悩/「馬は一頭たりとも狸にしてはならない」/挫けそうになった作品/全集に込めた「お買い得感」/シェイクスピアとともに生きた28年間/完訳の先に続く挑戦/「ジュリエットとロミオ」/看取る人
エピローグ
あとがき
参考文献
松岡和子に関する資料
■著者コメント
“Allʼs well that ends well; still the fineʼs the crown; Whate’er the course, the end is the renown.”……英王室を描いたドラマ「The Crown」の最終回の締めくくり、カメラマンの台詞に耳が引き寄せられた。あれ? 聞き覚えがある。シェイクスピアだ。『終わりよければすべてよし』から、「終わりよければすべてよし。おしまいには王冠が待っています。どんな紆余曲折があろうとも、終わりにあるのは名声です」。実写版の映画「美女と野獣」を見ていた時にも似たようなことがあった。主人公ベルが「野獣」の知性に気づくきっかけは彼が諳んじたシェイクスピアの詩だった。四百年前に書かれたものながら、シェイクスピアからの引用や作品を踏まえた表現は、身の回りにたくさんある。だが、私はそんなことは知らなかった。
文学は大の苦手だ。まして古典など理解できない。そう思っていた私が、シェイクスピアの引用に気づく日が来るなんて想像もしないことだった。これを現実のものにしてくれたのは東大大学院教授の河合祥一郎さんと翻訳家の松岡和子さん。縁あって「ほぼ日の学校シェイクスピア講座」の立ち上げに関わった私は、講師陣の中心であったおふたりの導きでシェイクスピア劇の世界に触れることができた。
講座のたびにお会いする松岡さんはいつもお洒落で快活で、笑みを絶やすことなく、情熱的にシェイクスピアの話をしてくれた。ただ、私はそれ以上に松岡さん自身の物語に魅了された。満州からの引き揚げやお父様のソ連抑留など、朝の連続テレビ小説でも見ているかのようなドラマだった。この物語を私ひとりで聞いているのはもったいないと思ったのが執筆のきっかけだ。この稀有な女性はどのようにして育ったのか、ここに至るまでに何を乗り越えてきたのか、翻訳の仕事を齧る者として、働く母として、大先輩の話を聞いてみたいと思った。
ご自身もよくその表現を使われるので、本書のタイトルは『逃げても、逃げてもシェイクスピア』とユーモラスなものになったが、最終的に松岡さんは逃げていない。シェイクスピアにとことん向き合った。私の力不足で松岡さんの仕事の全貌はとても描き切れていない自覚はあるが、三十七作品完訳という偉業の背後にあった波乱万丈のほんの一部でもお伝えすることができれば幸いだ。
■書籍内容紹介
完訳を成し遂げた翻訳家の仕事と人生はこんなにも密接につながっていた。仕事の流儀から生い立ちまですべてを明かす宝物のような一冊。
実は苦手だったシェイクスピア。避けて通るはずが運命の糸は翻訳家を全戯曲完訳の偉業達成へと導く。初めて語る人生の手本である父母のこと、結婚・子育て・介護、蜷川幸雄らとの交流、そして訳者という仕事のすべて。
■著者紹介
草生亜紀子(くさおい・あきこ)
国際基督教大学、米Wartburg大学卒業。産経新聞、The Japan Times記者、新潮社、株式会社ほぼ日を経て独立。2024年4月現在、国際人道支援NGOで働きながら、フリーランスとして翻訳・原稿執筆を行う。著書に『理想の小学校を探して』(新潮社刊)、中川亜紀子名義で訳した絵本に『ふたりママの家で』(絵・文パトリシア・ポラッコ、サウザンブックス社刊)がある。
■書籍データ
【タイトル】逃げても、逃げてもシェイクスピア――翻訳家・松岡和子の仕事
【著者名】草生亜紀子
【発売日】2004年4月17日
【造本】四六判、三方立ちカバー
【定価】1,760円(税込)
【ISBN】978-4-10-464002-7
【URL】https://www.shinchosha.co.jp/book/464002/
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