治療の選択肢が増えた今こそ、HAEの認知向上が重要に
QLife / 2024年5月2日 13時0分
確定診断が難しく、悩んでいる人がたくさんいる
顔や手足、咽頭や腸など体のさまざまな部位に突然腫れが生じる——。これは、HAE(遺伝性血管性浮腫)という遺伝性の希少疾患の症状とされています。腫れの症状が出る発作は繰り返し起こりますが、その頻度は人によって大きく異なり、1年間に一度も発作が起こらない患者さんもいれば、年間30回以上も起こる患者さんもいます1)。
手足や顔の腫れ、腹痛など他の疾患と類似の症状が多い上、認知度もあまり高くないため、確定診断までに平均13.8年かかると言われています1)。しかし近年は治療環境が大きく改善しており、適切な発作抑制の治療を行うことで健常に近い生活が目指せるようになってきました。そのため、早期診断・治療がますます重要になっています。
こうした状況を受けて製薬会社の武田薬品工業株式会社は、2024年4月22日にHAEの認知拡大に向けたメディア向けのイベントを開催しました。
福田先生
HAEの患者さんは5万人に1人と推定されており2)、日本には2,000~3,000人いると言われています。しかし実際には約400~500人しか治療を受けていないのが現状です3)。こうした状況について埼玉医科大学総合医療センター教授の福田知雄先生は「確定診断が難しい病気であるため、自分がHAEだと知らずに悩んでいる患者さんが大勢いる」と話しました。
また、HAEの症状の一つに頭の腫れがありますが、腫れにより気道がふさがれてしまい、最悪の場合、死に至ることもあります。福田先生は「特に上気道に影響が及ぶ発作では速やかな治療が必須で、HAEの診断がついているかどうかによって致死率は大きく変わる」と話し、早期治療の重要性を訴えました。
治療環境が大きく変わり、発作の頻度や重症度が低下HAEを取り巻く環境はここ数年で大きく変化しています。1990年に最初のHAE治療薬が発売された後、約30年間新しい治療薬は発売されていなかったのですが、2018年以降、次々に新しい薬が登場したためです。現在では急性発作が起こった時の治療(オンデマンド治療)だけではなく、発作の発症抑制も可能となっています。
「いつ発作が起きるかわからないという状態から、発作の頻度・重症度ともに低下させることができるようになった。これにより、病気をコントロールし、普通の日常生活を送れる患者さんが増えている」と福田先生。さらに、「新しい薬が発売され、注目が集まっている今だからこそ、啓発に力を入れなければならない」と強調しました。
イベントには、HAEの患者会であるNPO法人HAEJで理事長を務める松山真樹子さん、HAE患者さんも参加し、「未診断で苦しんでいる患者さんを1人でも減らし、HAEの患者さんがイキイキと生活できるようにするためにも、もっと多くの人にHAEについて知ってほしい」と訴えました。
QLifeでは「遺伝性疾患プラス」でHAEの概要のほか、治療施設や患者会に関する情報を掲載しています。ぜひアクセスしてみてくださいね。(QLife編集部)
1)Ohsawa I et al. Ann Allergy Asthma Immunol 2015; 114: 492-498. 2)Longhurst HJ, Bork K. Hereditary angioedema: causes, manifestations, and treatment. Br J Hosp Med. 2006; 67(12): 654-657. 3)Hide M, Horiuchi T et al. Management of hereditary angioedema in Japan: Focus on icatibant for the treatment of acute attacks. Allergology International 70(2021)45-54.
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