やりすぎ!? 三菱アウトランダーが進化、高音質にこだわったカーオーディオ
レスポンス / 2024年10月9日 13時30分
三菱自動車のクロスオーバーSUVであるアウトランダーのプラグインハイブリッドEVモデルが大幅改良してデビュー。そんな新型アウトランダーPHEVに音質にこだわりヤマハと共同開発したプレミアムなオーディオシステムが搭載されているので注目した。
◆航続距離伸長&出力UPだけじゃなく大幅に変化したこととは
三菱自動車のアウトランダーPHEVが大幅進化して登場した。駆動用のバッテリーを刷新(バッテリー容量を約13%増)して航続を約20km伸長。最高出力も約20%アップさせることで走りの余裕をさらにアップさせているのが魅力となった。またインテリアデザインを変更し上質さをさらに追求することで、高級SUV路線をさらに進めるモデルへと進化している点でも注目。
そんな新型アウトランダーPHEVの進化の中で、編集部が着目したのが高音質に徹底してこだわった新しいオーディオシステムだった。PHEVはその静粛性の高さから車内エンタメ性能、特に音に関する性能とは密接に関わる。つまり静かなクルマだからこそ車内で良い音のオーディオを存分に楽しめるということ。そんな背景もありアウトランダーPHEVの開発陣はこれまで以上にオーディオに力を入れることになる。
本気度の現れとしてホームオーディオなどの音響機器で世界的なブランドであるヤマハとの共同開発をした点だ。近年の世界各国のクルマメーカーのトレンドとしてオーディオブランドとの協業は増えつつあるのだが、三菱自動車×ヤマハの共同開発はオーディオブランドのイメージを踏襲するだけでは無く、本当にクルマの中で良い音を実現するための開発を実施しているのが特徴だ。
アウトランダーPHEVの新型車発表会の場にヤマハ側の担当者が多数来場し、クルマの中で良い音を再現するためのノウハウを熱く語ってくれたことも両社の関係性を端的に表している。ヤマハでは“車体は楽器の一部”と考え、クルマに取り付けて最良のサウンドを発揮することを念頭に置いて、オーディオユニットのみならず、ドアの構造をはじめ車両側にまでオーディオ的な高音質思想を注入し、まさに共同開発ならではの完成度を引き出すこととなった。
◆“標準”でも高音質、それを越える“アルティメイト”に驚愕
アウトランダーPHEVに搭載されるオーディオシステムは2種類。すべてのグレードに標準装備される「Dynamic Sound Yamaha Premium(ダイナミックサウンド ヤマハ プレミアム)」と最上級グレードのP Exective Packageに標準装備される(P、Gグレードにはメーカーオプション設定)「Dynamic Sound Yamaha Ultimate(ダイナミックサウンド ヤマハ アルティメイト)」を投入した。
システムを紹介しておくと「ダイナミックサウンド ヤマハ プレミアム」はフロントにツイーター/ウーハーの2ウェイを装備、後席にはコアキシャルスピーカー(2ウェイ/ツイーター&ウーハー)を装備する8スピーカー構成だ。対してより上質なサウンドを求める「ダイナミックサウンド ヤマハ アルティメイト」はフロントにツイーター(高域用)、ミッドレンジ(中域用)、ウーハー(中低域用)の3ウェイを投入、さらにセンタースピーカーも備える構成。また後席にもツイーター/ウーハーの2ウェイを設置、加えてラゲッジの左サイドにはサブウーファーをウォールに埋め込み設置する合計12スピーカーを用いたシステム。また運転席/助手席下にはそれぞれパワーアンプ(DSP内蔵)を設置するなど、メーカー純正のプレミアムオーディオシステムとして見ると過去に例の無いほどのハイエンドなシステムとなっている。
これらのシステムを開発する際のサウンドの狙いは原音に忠実であること、さらには解像度の高い音だった。特に音への影響が大きなスピーカーの開発には力が注ぎ込まれた。ツイーターにはコイルにCCAW(銅クラッドアルミ線)を用いることで駆動力をプレミアムで1.6倍、アルティメイトでは2.5倍にアップし良好な高域特性を引き出した。さらにウーハーユニットはボイスコイルを大径化。一般的なボイスコイル径が20mmなのに対してプレミアムでは25mm、アルティメイトでは38mmとすることで中低域の駆動力を大幅にアップ。ムダなピークを出さないフラットな低音特性を引き出しているのもこのシステムの大きな特徴となった。専用設計したスピーカーを用いることでアウトランダーPHEVでの最適サウンドを引き出す。
取材の際にアルティメイトのウーハーユニットを単体で手に取ることができたのだが、一般的なスピーカーとは段違いの重量感があることを感じた。これはスピーカーのフレーム部分に金属のプレートを巻き、その上を樹脂でモールド処理するという手の込んだ構造としているため。スピーカーは振動板を前後にピストンモーションさせることで音を発生させているが、スピーカーを重くすることでピストンモーションを正しく動作させることができるのだ(スピーカーユニットが軽いと振動板の動きとは反対に動いてしまい音を余すところなく表現しきれなくなる)。特に振動によるパワーの大きな中低域でその効果は顕著なのでアルティメイトのウーハーにユニットにこの処理が施されていることは理にかなっているのだ。
一方、車両側にも高音質化の工夫が込められている。そのひとつがドアパネルの剛性アップだ。新型アウトランダーではドアパネルに用いる補強パーツの大型化&溶接スポットを増やすことで、従来モデルに対して約1.5倍の剛性アップを果たしたのだ。またドアのアウターパネルにも制振材と補強材を追加、サービスホールにカバーを設置したのもスピーカー裏側の音がサービスホールから回り込んで本来の音を邪魔しないためだ。こうすることで中低域の再現性を高め、不要なドアの振動も抑えることで高音質化を果たした。
◆音が出て即理解、美しい音に包まれる車内空間
ひととおりの説明や各スピーカーユニットを見学した上で、「ダイナミックサウンド ヤマハ プレミアム」「ダイナミックサウンド ヤマハ アルティメイト」が搭載された車両で試聴を実施してみた。基準となる車両として従来のアウトランダーも用意され合計3台のオーディオを聴き比べることとなった。
従来のアウトランダーのオーディオを体感した後に、すぐさま「ダイナミックサウンド ヤマハ プレミアム」を搭載した車両を試聴した。すると高域が引き締まってクリア感が格段にアップ、音の輪郭がクリアになるシャープなサウンドが現れる。また低域の厚みもかなりアップしている。ふくよかに車内を漂うサウンドが心地良い。細かな調整はセンターユニットに内蔵しているDSP(デジタル・シグナル・プロセッサー)を用いているとのこと。これまでもさまざまな車種に高品質オーディオのオプション設定があったが、それらを凌駕するサウンドに仕上がっているのは間違いない。しかも新型アウトランダーPHEVにはこのサウンドシステムが標準装備とはまったく贅沢な仕様だと感じる。
次に最上級のシステムとなる「ダイナミックサウンド ヤマハ アルティメイト」の試聴を実施した。するとプレミアムで感じた質の高いサウンドを越えて、全域で音の“質”が大幅にレベルアップしているのを感じる。特に聴いた瞬間に音の躍動感の高さに感銘を受けた。弾むようなサウンド、存在感のあるボーカルなど音のリアルさが際立つ。低域の再生力、中域の厚み、さらには高域のクリアさなど、いずれの帯域もレベルが高い。再生レンジの広さもあって、本来の音源の持つ醍醐味を余すところなくリスナーに伝えてくれるサウンドだと感じた。また音像の表現でもこのシステムは優れている。まさに目の前で演奏している雰囲気が車内で再現されているのだ。またリスニングポジションは全席、運転席、助手席、前席、後席と設定できるのだが、運転席にピンポイントに合わせた設定にするとピタリと目の前に音像が現れる。前席に設定しただけでもダッシュパネルの前に音像が定位し、楽器の位置なども感じられるサウンドに仕上がっているのが心地良い体験となった。
クルマメーカー純正のプレミアムオーディオの概念さえも覆す新型アウトランダーPHEVの2つのオーディオシステム。コクピットのドレスアップのために有名オーディオブランドのエンブレムを仕込むケースもある中、本物志向の高音質化を果たした新型アウトランダーPHEVの「ダイナミックサウンド ヤマハ プレミアム」と「ダイナミックサウンド ヤマハ アルティメイト」。静かなPHEVによる上質な車内空間を堪能する、まさに新時代のメーカー純正プレミアム・カーオーディオを感じさせるサウンドだった。
土田康弘|ライター
デジタル音声に関わるエンジニアを経験した後に出版社の編集者に転職。バイク雑誌や4WD雑誌の編集部で勤務。独立後はカーオーディオ、クルマ、腕時計、モノ系、インテリア、アウトドア関連などのライティングを手がけ、カーオーディオ雑誌の編集長も請負。現在もカーオーディオをはじめとしたライティング中心に活動中。
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