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退職代行サービス人気の背景「入社して間もないから自分で言う勇気がない」「説得されて丸め込まれるリスクが怖い」早期退職のいちばんの理由は…

集英社オンライン / 2024年4月26日 11時0分

最近よく耳にするようになった「退職代行サービス」。まだ4月にもかかわらず、今春の新社会人から早くも退職代行の依頼が相次いでいるという。なぜ若者たちは短期間で辞めてしまうのだろうか。

【画像】4月に生命保険会社に入社したSさんが恐れたリスク

新卒者からの退職代行依頼は100件越え

退職する際は自分で直接申し出るのが社会人としての礼儀――近ごろ、この常識は揺らぎつつある。

本人に代わって退職の意向を企業に伝える退職代行サービスを提供する「退職代行モームリ」のX公式アカウントのポストが話題となった。そのポストによると、なんと入社初日の4月1から4月4日までの期間で、新卒者計17名の退職を確定させたという。

その後のポストでも、退職者の情報が随時発信されているが、4月19日には、退職代行への依頼は871件、そのうち新卒者からの依頼は135件で、全体の15.5%に上っているそうだ。

新卒者の早期辞職で最近報じられて話題となったのは、缶詰などで知られる大手食品会社の「いなば食品株式会社」の件だ。同社の2024年度入社の一般職の新入社員19名のうち少なくとも17名が入社を辞退したという。これらの新入社員が退職代行を利用したかどうかは定かではないが、このように最近では新卒者の早期退職が目立っているのだ。

退職代行が認知され始めたのは2019年ごろだといわれているが、現在需要がますます拡大している背景にはどういった事情があるのだろうか。また新卒者が早期に退職してしまう要因とは何なのだろうか。

実際に今年4月に退職代行を使って退職したSさんと、「退職代行モームリ」を運営する株式会社アルバトロス代表の谷本慎二氏に話を聞いた。

「事前に聞いていた話と違う…」入社前のイメージとの乖離が早期退職の原因

今年の4月に生命保険会社に入社し、そこで営業に配属されたSさんは、退職代行を利用して4月いっぱいで退職したという。Sさんはなぜ1か月という短い期間で辞めてしまったのか。

「入社前に聞いていた話と違った点が多かったというのが退職した主な理由です。入社前に友人・知人営業はないと聞いていたのに実際はあったこと、聞いていた給与形態と違ったこと、また先輩たちは資格を持っていないのに、FP(ファイナンシャルプランナー)の資格取得を強要されたことなど、最初から違和感だらけでした。

上司や先輩は根性論を語る人が多く、解決に向けて動いてくれそうな雰囲気はありませんでしたし、関係構築もできていなかったので、相談することはできませんでした。『相談してどうにかしよう』という気持ちより『早く辞めてここから逃げ出したい』という気持ちのほうが強かったですね」(Sさん)

「退職代行モームリ」を運営する谷本氏によると、こうした“入社前の話と違う”というケースはかなりあるそうだ。

「正社員として雇用すると聞いていたのに、実際は派遣社員や契約社員だったというケースや、勤務地の希望を配慮すると言われていたのに、全く希望が通らなかったというケースなど、最初の話と違ったということで退職のご相談をされる方が非常に多いです。

早期退職者が出やすい企業の特徴として、人手不足に陥っていることが挙げられます。条件のいい話で釣っておきながら、いざ入社すると新入社員の希望がまったく通らず、人手が足りていない部署に飛ばされたり、給与形態の条件が途中で変更され改悪されたりすることがあるのです。こうしたことは、新卒の方のみならず、中途入社の方も悩むことが多い問題です」(谷本氏)

昨今ではブラック企業が問題となっているが、退職代行が認知され始め、退職のハードルが下がったことで、辛い環境には早期に見切りをつけて、次のステップに進む若者が増えているのかもしれない。

辞めないように説得されて丸め込まれるリスクが怖い

本来であれば、自分自身で退職の意向を伝えるのが当然とされているが、どういった経緯で退職代行を利用しようと思ったのか、Sさんが語ってくれた。

「本来は自分で直接会社に言うべきだということはわかっていましたが、まだ入社して間もなかったので退職したいと伝える勇気もなかったですし、辞めないように説得されて丸め込まれるリスクもあったので退職代行サービスに頼ることにしました。

退職代行を利用するのに3万円支払いましたが、自分で直接言う勇気がない人や、確実に辞めたい人にとってはとてもいいサービスなので、料金が高くても払う価値はあると思います」(Sさん)

ちなみに退職代行の利用料金の相場は約2万円~5万円前後である。決して安くはない料金だが、直接言い出せない人や、リスクを負いたくない人にとっては唯一の救いとなるサービスだからこそ需要があるのだろう。

また退職代行は、第三者が介入することで確実に退職できる可能性が高まるため、あの手この手で引き留めて、なかなか辞めさせてくれないブラック企業に対しては有効な手段といえる。

一方、谷本氏によれば、退職代行を利用する人の中には、直接退職の意向を伝えないことへの罪悪感を抱く人も少なからずいるという。

「退職代行の契約をされた後に、『やっぱり直接自分で言ってみます』と契約を取りやめた方もいます。大体の人が最後の手段として退職代行を利用しますが、一部には直接言わないということへの罪悪感を抱く人もいるようです。

また当社が退職の意向を伝えてから、会社側が態度を改め反省して、本人と和解し、最終的には退職に至らなかったというケースもありました」(谷本氏)

退職代行の様子を利用者本人が見ることも可能

退職したいと考える人にとっての駆け込み寺である「退職代行」だが、実際スムーズに辞めることは可能なのだろうか。利用方法など詳しいサービスの内容について、さらに谷本氏に聞いてみた。

「当社の場合、まずは『モームリ』の公式LINEに登録していただき、チャットで退職したい理由やご希望などについて相談していただきます。オンラインだけでなく、対面での相談も可能です。最終的にご契約となると、本人の希望退職日に私たちが退職の意向を本人に代わって会社に連絡するという流れになります。退職のお手続きはだいたい即日から1週間程度で完了し、スムーズな退職が可能です。

料金プランは2種類あり、オンライン上だけで完結する場合、正社員や契約社員、派遣社員の方で2万2千円、パート・アルバイトの方は1万2千円となっています。対面をご希望の場合は、正社員などが3万円、パート・アルバイトが2万円となっています。

また、追加料金はないですが、オプションとして対面やZoomで退職代行の様子を利用者本人が見ることもできます。

こちらは利用者の方がどのように退職を伝えてくれるのか見届けたいという場合や、パワハラなどを受けていて、退職した後に電話などで引き留められる心配をされている方が、目の前で退職代行をしてもらうことで安心したいという場合に利用されることが多く、毎月20件ほどご依頼をいただきます」(谷本氏)

退職の手続きはすべてオンライン上で完結することや、即日から1週間程度で済むことなど、気軽に利用できることも退職代行の人気の理由なのだろう。

取材・文/瑠璃光丸凪/A4studio 写真/shutterstock

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