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突然違う業者がし尿収集 戸惑う住民に業者も「『許可を取り消すぞ』と言われるのが怖い」 一部事務組合の不透明な決定

RKB毎日放送 / 2024年5月13日 14時14分

中・小規模の市町村が水道や消防、ごみ処理など広い地域で一緒にやった方が良い事業を共同で行なう「一部事務組合」。

この「一部事務組合」の突然の決定で、し尿収集をめぐり住民に不安と混乱が広がっている地域があります。

取材を進めると、加入する自治体すら状況が把握できない不透明な実態が見えてきました。

浄化槽の点検や汚泥の回収 急な変更で不安

福岡県田川市に住む70代の女性は4月、25年間浄化槽の点検や汚泥の回収を依頼していた業者から「別の業者に変更する」という通知を受けました。

田川市民(70代)「私は変わりたくないんですよ。長い間信頼関係が出来上がっているのに、突然そんなことを言われても私は変わる気はないけど」

トイレや台所、風呂など家庭から出る排水を処理する浄化槽。

生活に密着しプライバシーにも関わるもので、定期的な点検と汚泥の収集が欠かせませんが・・・

RKB江里口雄記者「住宅の裏側にはこのようにし尿を処理する浄化槽がありますが、急な業者変更により約2か月点検が行われていないということです」

新たな業者が姿を見せておらず、不具合が起きないか不安が増しているということです。

自治体に問い合わせても「情報もっていない」

田川市役所に問い合わせてみましたが、回答は意外なものでした。

田川市民「詳しいことはクリーンセンターに電話して聞いてくれと。田川市としては一切詳しい情報はもらっていないと言うんですよ。おかしいと思いません?田川市民が田川市に電話して聞くのは当たり前なんです。大任町の町長あたりに聞かないといけないですか」

住民から問い合わせ殺到

田川地区10万人以上のし尿と浄化槽汚泥を処理する田川地区クリーンセンター。8つの自治体で構成される一部事務組合の田川地区広域環境衛生施設組合が運営しています。

田川地区広域環境衛生施設組合は3月15日、業者に対し、し尿を収集するエリア=地区割りを4月1日から変更すると突然通知します。

急な変更に住民から戸惑いと不安の声があがっています。

田川市民「自治体から市民に何も通知がないでね。こんなことされたんでね。憤ったですね」

田川市民「もう50年近くずっと馴染んで顔馴染みで、ある日突然違うところが来て、結構町内でも戸惑っている人が多い。どうしようか、と怖い」

田川地区広域環境衛生施設組合は、問い合わせ件数は「集計中」としていますが、田川市だけでも3月中に200件以上4月には483件の問い合わせが寄せられました。

自治体は「許可権限なく限られた対応しか」

ただ、田川市は組合に業務を委託していることで、「許可権限もなく限られた対応しかできない」としています。

田川市環境政策課峯直樹課長「本市から市民に対する周知を行うためにも施設組合に詳細な情報の提供を求めていきたい」

組合長を務める大任町長は

住民への通知から2週間で収集業者を変えるという決定をした組合。

組合長を務めるのが大任町の永原譲二町長です。

RKB今林隆史記者 Qし尿の運搬業者の区割りを変更したのはなぜですか?突然すぎるという声も上がっていますが

大任町 永原譲二町長「・・・」

組合トップの大任町の永原譲二町長は、記者の質問にこたえることはありませんでした。

「初めて聞いた」副組合長も

撮影と録音は認められなかった3月の組合議会。副組合長を務める自治体トップ7人のうち4人が区割り変更の中身をこの日初めて聞いたと証言しました。

直前の通知 組合長「作業膨大」と弁明

区割り変更の理由として業者間の差をなくす「平準化」のためだと説明した永原組合長。

業者に知らせるのが2週間前となった理由について「作業がものすごく膨大」だったと弁明しました。

自治体や組合からパンフレットなどで住民に知らせるべきではないかとの意見に対しては「時間的にいとまがありません」と拒否。

住民の戸惑いについて「それのないように業者には徹底しています。許可をやっていますから、責任を持ってやりなさい」と伝えたとして、業者任せにしていると説明しました。

業者は「言うこと聞かないと・・・」

その業者は永原組合長から許可を受ける立場で「意見すらできない」と証言しています。

し尿収集運搬業者関係者「言うこと聞かないと『もう許可を取り消すぞ』と言われるのがもう、やはり怖いですよね。許可取り消しになると仕事ができなくなるので。ちょっと反発すると『許可取り消すぞ、許可欲しくないか』とかそういう感じですね」

不透明なし尿処理施設の建設費

し尿処理施設をめぐっては、建設費などについても不透明な状況が続いています。

去年、田川市と川崎町、糸田町の議会は相次いで組合から業務を委託されている大任町に対し、情報を公開するよう求める決議を可決。

田川地区4市町の議員が行なった情報公開請求に対し、大任町はし尿処理施設については非公開と回答しました。

情報公開しない大任町

なぜ公開しないのか、大任町の議員が3月の大任町議会で永原町長に問い質しました。

宮地篤 大任町議「詳細な資料がありながらも大任町が情報公開していないと言われますが、大任町の行政として公開できないのか、業者側から公開しないように言われているのかどちらかだと思いますが、公開した方が良いのではではないか?」これに対し、永原町長は事前に通告が無かったことを理由に質問には答えませんでした。

大任町 永原譲二町長「通告のないものを答えられません。通告書のないものを質問されても困りますので、今後は具体的にこれとこれを質問したいということを言ってください」

宮地議員は、情報を公開すべきだと話します。

宮地篤 大任町議「し尿に関しては会計検査院が調査した内容があるにもかかわらず、それを公表していない。「憶測が飛び交う事態になりかねないのできちんとした数字を出してみなさんが納得いくような説明をしてもらいたいと思います」

施設建設の積算書「存在しない」

し尿処理施設のほか建設中のごみ処理施設の工事費用の内訳などが書かれた積算文書について、永原町長は繰り返し「存在しない」と断言してきました。

大任町 永原譲二町長「ここにいう特殊のプラントについては、市町村、大任町には積算書が存在していないんですよ」「この方式を採って入札した場合については、日本全国探しても積算書は存在していないんですよ」

「存在しない」はずの積算書があった

その積算書について福岡県に情報公開請求してみたところ一部の資料が開示されました。

福岡県の担当者「こちらの方の施設が会計検査の対象になりまして、その関係でたまたま県に大任町から提供いただきました」

し尿処理施設に関し、国の会計検査院は対象でない施設についても交付金を受け取っていたとして大任町に3600万円を返還させました。

開示されたのは過大に請求した交付金を返還したことを報告するため、大任町が福岡県に提出した資料でした。

RKB今林隆史記者「公開された文書には工事に関する詳細な金額が記されています」

これは大任町が「存在しない」と主張してきた積算書なのか?

RKBの取材に対し、大任町は「『工事の積算書がない』というのは、『行政が作成した積算書はない』という意味で、業者が作成した積算書は提出を受けている」と説明しました。

田川市議は大任町に何度も求めてきたのは「行政が作成した積算書」に限定していないと強調します。

田川市議会 佐藤俊一議員「大任町が作ろうが作るまいが、こういったものがないと工事ができないわけです。受託した業者であろうが、大任町が作ろうが、私達が求めているのはこの積算書なんです」

問われる透明性

田川地区ではし尿処理施設だけでなくごみ処理施設も大任町に委託していて、組合長を務める永原町長に権限が集中しています。

ほかの自治体、そして何より住民に十分な説明もなく、区割りを変更した永原組合長。

不透明な意思決定と情報公開に後ろ向きな姿勢に住民の不安と疑念は増すばかりです。

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