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隔離中の変態たちに残された唯一の選択肢、バーチャル乱行パーティとは?|2020年ベスト

Rolling Stone Japan / 2021年1月4日 21時0分

Photo by Shutterstock

2020年(1月~12月)、Rolling Stone Japanで反響の大きかった記事ベストを発表。この記事は「国際部門」第6位。WEB会議のプラットフォームを用いて性行為におよぶ面々が増えてるという。イベントのタイトルは「Couples  PlayDate」。主催している米団体NSFW(NEW SOCIETY FOR WELLNESS)は、「セックスとマリファナに肯定的な体験」を提供するプライベートクラブを自称している。(初公開日:2020年4月19日)

●【画像を見る】絶妙なカメラワーク…バーチャル乱行パーティの様子

参加カップルはみな若くて(または若く見える)魅力的で、照明使いやカメラアングルにことのほか精通しているようだ。NSFWの創始者ダニエル・セイント氏は、オンラインでの会議サービスZoomが最近爆発的人気を遂げたおかげだと考えている。「今じゃ、大勢の人々がカメラアングルや照明に詳しいみたいですね」と彼は言う。「Zoomのおかげで、カメラ写りを心得た世代が増えそうです」

閉鎖を余儀なくされたセックスパーティはNSFWだけではない。ソーシャル・ディスタンシングの時代、どこもデジタル化にシフトせざるを得なくなっている。かつてロンドンに拠点を置くセックスクラブ「Killing Kittens」主催の乱交パーティがあったが、そうしたトレンドも今はポルノの世界へ活動の場を移し、アレクサンドル・サルトル監督などはビデオ会議回線で4方向のレズビアン乱交映像を制作した。NSFWがパーティを開催しているのは別のプラットフォームだが(締め出される恐れがあるため、セイント氏は明言を避けた)、こうしたイベントの多くは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)時代のミレニアル世代のお気に入りプラットフォームZoomで開かれている。生理的解放を提供するにとどまらず、パニックや不安が幅を利かせるこの時代、セラピーに近い役割を果たしているものもある。

「ガイド付きの瞑想へ案内するような感じですね」と言うのはオスカー・バズ氏(仮名)。この数年、ブルックリンでクイア向けにアンダーグラウンドのセックスパーティを主宰していたが、今ははほぼ毎晩、主にゲイやトランスジェンダーの男性向けにZoomでパーティを開いている。「グループで、みんなで一緒にアクティビティをするんです。身をゆだねて、妄想の世界に入っていけるよう手を貸そうとしてるだけです。自由を感じられる空間を作ろうとしているんですよ」

一見すると、セックスパーティをデジタル世界へ移行するのはそもそも無理な相談のように思える。理由は明白だ。画像が固まったり、音声が遅れたりといった技術トラブルは、ユーザーエクスぺリエンス的に決して最適とは言えないし(「こういう飛び飛びの動画を見ると、10歳の時に乳首を拝みたくて『プレイボーイ』チャンネルを覗いたことを思い出すよ」。PlayDateである男性はこう言った)、それにこの手のイベントでは、実際のセックスパーティのような五感を刺激する経験は味わえない(「実際のセックスパーティにあって、バーチャル・セックスパーティに欠けているものは何だろうね?」と、NSFW歴の長い友人に質問してみた。Couples PlayDateに誘ってくれたのも、実は彼女だ。彼女は単刀直入に「ファックする相手よ」と答えた)。

だが、自宅隔離中の独身貴族や、退屈してムラムラしているカップルにとって、Zoomをはじめとするプラットフォームでのバーチャル・セックスパーティは、恐怖――仕事を失う恐怖、自分や愛する人が感染する恐怖――や倦怠に彩られた日常の隙間を埋めてくれるものだ。「ほぼ1日中、電気毛布をつけてベッドに寝そべって、オペラを見ています」と言うバズ氏も、鬱と不安症を抱えている。だがZoomの自慰パーティは、「コミュニティと繋がり、自分は大丈夫だと確認し、自分に自信が持てるようにするための手段なんです」と言う。彼は一種の公共サービスと考えていて、他のセックスパーティとは違い、参加費も一切徴収していない。

かつてはビジネス用会議のプラットフォームと呼ばれていたZoomは、COVID-19時代に爆発的人気を博している。この3カ月で、1日の平均ユーザー数は1000万人から2億人に急増した。いまや大学のオンライン講義から高校生の音楽演奏、そしてついにはパーティまで、あらゆる用途に大活躍している。バズ氏も、当初は連絡を取り合うために始めたそうだ。コミュニティのメンバーと自宅待機中の生活を語り合ったり、ウイルスの症状じゃないかと大騒ぎしたり。だが時が経つにつれ、「なんとなく共通認識で、自慰サークルみたいになったんです」。彼のパーティには、毎晩およそ20~30人の男性が入れ替わりしている。

全てのセックスパーティのオーガナイザーが、こうした目的にZoomを愛用しているわけではない。例えば、より「洗練された」体験を好むNSFWはZoomを忌み嫌っている。黒いウィンドウが果てしなく並び、膨れ上がった性器のアップが点在するのではなく、参加者は4つの「特等席」を競い合い、他のオーディエンスのために実演する。「カメラの前で実演するのを鑑賞する場にしたかったんです」と創始者のセイント氏。「あんなにたくさんウィンドウがあったら、ヤる気も失せますよ」

露出症の人々は以前からこうした目的でZoomを使っている

プライバシー問題で、いまだにZoomを使うのをためらっている人もいる。身バレしないようガードを固めているようなバーチャルセックスの参加者にとっては、特に気がかりな点だ。同プラットフォームには、Zoomボマーと呼ばれるネットトロールも存在している。公開されているリンクを乗っ取って嫌がらせしたり、人種差別的な発言や反ユダヤ的な発言を投稿したりするのだ。イベントの制作会社House of Scorpioの創業者ラリーザ・フックス氏にとっても、こうした違反者は悩みの種だ。参加者の同意なしにコンテンツが録画されたりスクリーンショットされたりする危険もある。

「対人イベントを開催する際は、お客様には一定の安全対策をクリアしてもらい、全員のプライバシーが確実に守られるようにしています。ですが、インターネットでは同じようなことは保証できません」とフックス氏。「お客様にそこまですることはできないでしょう」。House of ScorpioはZoomでセックスビンゴやエロ本クラブのような、セックスに肯定的なイベントを開いているが、セックスパーティの開催には至っていない。

バズ氏のパーティでも何人かの参加者がこうした懸念を口にし、顔が画面に映らないようにしたり画面を暗くしているような他のメンバーを、こっそり録画しているに違いないと非難しているそうだ。「一触即発状態です。みんなこう言っています、『こいつらはどこの誰だ? 録画してるんじゃないか?』って」。彼も実際に録画が行われている現場を見たことはない。録画されている場合は参加者にアラートを流す機能をオンにして、録画の可能性を最小限に抑える努力はしている。だが当然、誰かが携帯電話を抜き出して、誰かがヌイているところを録画していないという保証はない。バーチャル乱交の参加者もそうした現実は十分認識している。「ある意味コミュニティを信頼して、みんながヤってると思わなきゃだめ」と言うのは37歳のエヴリン(仮名)。NSFWのカップルナイトに参加していたNPO職員だ。

数々のソーシャルネットワークと同じくZoomも、他人のマスタベーションを見るためのプラットフォームだとは思われたくない――実際にみな、そうした目的で使っているとしてもだ。「Zoomのユーザー規約は、プラットフォーム上の卑猥で、不適切で、違法または暴力的なアクティビティやコンテンツをはっきり禁じています」と、同社の広報担当者は言った。「ユーザーにも、規約違反と疑わしき行為を報告するよう呼びかけています。またマシンラーニングなどの複数のツールを駆使して、違反していると疑わしきアカウントを積極的に特定するようにしています」。具体的にマシンラーニングがどういうものか、一体どうやって集団マスタべーションを鑑賞している人々を特定できるのか、と続けて質問してみたが、同社の幹部職員から返答はなかった。

だがZoomの広報担当者は、Zoomはビジネス目的のツールであり、「いかなる有害かつ卑猥、または不適切なアクティビティ」、とくに「ヌードや暴力、ポルノ、(および)性的にあからさまな素材を提示した業務」で使用している人々には「様々な措置」を講じるつもりだ、と述べた。

バズ氏はこれを戯言と称し、露出症の人々は以前からこうした目的でZoomを使っている、と言った。「こういうことが行われていないと思い込みたがる、企業の典型ですよ。もちろん、実際はやっているんです」(こうした背景から、彼は一度Zoomセックスパーティで「ビジネススーツナイト」というテーマのパーティを開催した。参加者は、実際にZoomで会議を開いているかのように振舞い、バズ氏の合図で一斉にパンツを下ろし――「我々のサービスは企業ツールです」というZoomのメッセージに答えた)。それでも、パーティがZoomボマーの関心を引いたり、同社から締め出されるのを恐れて、本名は伏せてほしいと言う――もっとも、現在Zoomがデータの扱いやセキュリティ管理で調査されていることを考えれば、自宅待機中に狭い部屋の中で自慰している20~30人の男性が真っ先に狙われることはほぼないだろう。

NSFWは独自のプラットフォームを開発中

Zoomを使用していないセックスパーティのオーガナイザーさえも、性風俗にまつわる偏見ゆえの問題をそれぞれ経験している。例えばNSFWも、すでにビデオ会議プラットフォームGetVoklから締め出しを食らっているため、現在セックスパーティを開催しているプラットフォームの名前は明らかにしたがらなかった。「彼らは、我々がポルノだと言って締め出したんです。僕も言ったんですよ、『それは我々の商品じゃありません。我々はライブチャットです』とね」とセイント氏。「でも、どこのプラットフォームでも厳しいでしょうね。InstagramやFacebookやGoogleでも同じで、我々の活動に基づく広告やコンテンツは投稿することができないんです」

NSFWではこうした理由から、増築可能で、かつ他のオーガナイザーにもライセンスを発行できるような現在独自のプラットフォームを開発している――長期のビジネスプランが実現すれば、ニューヨークをはじめとする感染地域で封鎖が解除された後も、今と同じようなデジタルイベントが開けるようになる。「最大50人のイベントを開催できるようになるまで、少なくともあと6カ月はかかるでしょう」とセイント氏は予想する。「大規模な検査が行われるようになるのもだいぶ先でしょうし……どうやってイベントを開催するか、考えなくてはいけないことが山のように出てくるでしょう」

セイント氏は、バーチャル・セックスパーティが定着している事実に賭けている。単純に、しばらくはこれが隔離中の変態たちに残された唯一の選択肢になるからだ。もうひとつ彼が頼みにしているのが、他人との繋がりや親近感のようなものを持つために、人々が多くのもの――プライバシーなど――を人目にさらすことを厭わなくなっている、という事実だ。ただし、バーチャル乱交パーティの参加者が信用できれば、の話だ。検疫と隔離で、日常生活の大部分は思いもよらない方向へ変化した。だが、予測もしなかった影響がひとつある。一部の人々は、以前は想像もできなかったようなプライベートな部分をさらさざるを得なくなっている。「まさかこの手のものを、誰が見てるのかもわからない公の方法でやることになるなんて、思いもしませんでした」とバズ氏も認めている。「でも、『素晴らしき新世界』といった感じでしょうか――みんなやっていることですしね」

「この前も、今じゃみんながチャットガールみたいね、って友だちと話してたばかりよ」と、パーティ参加者のエヴリンは言う。「みんな少しばかり露出狂化してるわね。だって、つながりを持つためにはそうするしかないんだもの」

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