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P!NKが「愛と信頼」のメッセージを届ける理由、音楽の力を信じるスーパースターの新境地

Rolling Stone Japan / 2023年2月17日 17時45分

P!NK

P!NK(ピンク)が通算9作目の最新アルバム『TRUSTFALL | トラストフォール』をリリース。全米屈指のポップアイコンによる新境地を、音楽ライターの村上ひさしに解説してもらった。

「Get The Party Started」(2001年)、「So What」(2008年)、「Raise Your Glass」(2010年)、「Just Give Me A Reason」(2013年)などなど、数々のシングルヒットを続出していた一時期に比べると、最近のP!NKは大人しくなった……そう感じている人は少なくないだろう。特に日本においては、彼女がスタジアム級の大会場で展開するアクロバティックでエンターテイニングなステージが未だ実現しておらず、そもそも彼女の豪快でパワフルなキャラというのが、いまひとつ上手く伝わっていない気がする。一方の本国アメリカはといえば、『The Truth About Love』(2012年)、『Beautiful Trauma』(2017年)、『Hurts 2B Human』(2019年)の直近アルバムが3作連続でNo.1を記録するなど絶好調。いまや紛れもなく国民的シンガーという位置付けだ。通算9作目となるニューアルバム『TRUSTFALL』に対しても、当然ながら大きな期待が寄せられている。

アルバムのタイトル”TRUSTFALL”とは、後ろ向きに倒れて、背後の人に受け止めてもらうという、子どもたちがよくやる遊びのような行為。後ろの人がちゃんと受け止めてくれることが大前提にあるわけで、信用できるかどうかが鍵となる。彼女の場合は、それが夫であったり、子どもたちであったり、もっと広義なら、ファンやスタッフ、友人なども含まれているだろう。ジャケットに写る彼女は、崖の上から背後を見下ろし、まるで皆に向かって”信じてるよ”と言わんばかり。アルバムにはこれまで以上に親愛の情や家族愛が満ち溢れ、真摯でエモーショナルな感情が渦巻いている。

昨年11月にリリースされたリードシングル「Never Gonna Not Dance Again」では、”もう踊らないとか絶対ないし”と高らかに歌って、自身がアンストッパブルであることを宣言した。パワフルでフィールグッドなこのダンスアンセムのプロデュースにあたったのは、マルーン5からテイラー・スウィフトまでを手掛けるマックス・マーティンとシェルバックのコンビ。彼女とはすっかりお馴染みの2人は、ソングライティングにも参加している。ちょっぴり懐かしいレトロ風サウンドに合わせて、ミュージックビデオではローラースケートを履いてダンスを披露。ここ最近のローラーディスコの再々ブームの動向も、ちゃっかり押さえられている。



2ndシングルとして今年1月に公表されたタイトル曲「TRUSTFALL」もアッパー系。ロビンの「Dancing On My Own」を彷彿とさせる繊細かつドラマチックなダンスアンセムには、エド・シーランやリタ・オラなどを手掛ける英国人DJ /プロデューサー、フレッド・アゲインが協力。最近メキメキ頭角を表してきた彼は、2020年のブリット・アワードで最優秀プロデューサー賞を受賞しており、2023年も3部門でノミネートを受けている。”信頼して身を任せるの、ベイビー”と繰り返し歌われる同曲のミュージックビデオでは”倒れ込むこと”、つまり”思い切って飛び込むことに意義がある”と冒頭で呟かれて、如何にもP!NKらしいバイタリティ溢れる人生観ではないかと唸らされる。




メロディックなポップチューン「Turbulence」には、マシュー・コーマが参加。EDMプロデューサーとして活躍する傍ら、カーリー・レイ・ジェプセンやペンタトニックスなども手掛ける彼が、共作とプロデュースを担当し、P!NKの伸びやかな歌声を、いっそう鮮やかに聴かせている。その他、彼女のキャリア初期から多数のヒット曲に携わってきたビリー・マン(セリーヌ・ディオン、ジェシカ・シンプソン他)、グレッグ・カースティン(アデル、シーア他)といったお馴染みのヒットメーカーたちもアルバムには参加。レイベルやテディ・ガイガーといった以前から繋がりのあるシンガー・ソングライターも共作などで協力する。

フォーク系への傾倒、情感豊かなナンバーが意味するもの

P!NKといえば大声でシャウトして、常にパワー全開というイメージが強いかもしれないが、本作にはアコースティック楽器をバックに素朴な歌を聴かせたり、ムーディなナンバーも多数並んでいる。トラックリストを見てまず気づかされるのが、ユニークなゲスト陣の顔ぶれだ。「Ho Hey」などのヒットで知られるアメリカのオルタナティブ・フォーク・バンドのザ・ルミニアーズ、スウェーデンのフォーク姉妹デュオのファースト・エイド・キット、前作でもコラボしたアメリカ人カントリーシンガーのクリス・ステイプルトン。それぞれフォーキーでシンプルな楽器演奏をバックに、彼女と味わい深いデュエットを聴かせてくれる。ザ・ルミニアーズとの「Long Way To Go」では、ハモンドオルガンの美しい音色に乗せて、大自然に向かって歌っているかのようだし、ファースト・エイド・キットとの「Kids In Love」では一転して、屋内で膝を突き合わせてアコースティック・ギターを爪弾いているかのよう。かと思えば、アルバム本編のラストを締めくくる「Just Say Im Sorry」では、まるで映画のワンシーンのように神々しいデュエットを、魂を込めてクリス・ステイプルトンと披露する。以前にもインディゴ・ガールズらともコラボしていた彼女だけに、フォーク系への傾倒はそれほど意外ではないけれど、アルバムのオープニング曲「When I Get There」から、しっとり歌い上げられ、後半には素朴なバラードが続くのには驚かされる。そんな構成も、きっとアルバムの全体像として彼女が思い描いていたものだろう。



本作『TRUSTFALL』には、緩急を付けて情感豊かに歌い上げられるナンバーも多い。もともと懐の深さや器の大きさを感じさせるキャラクターだったP!NKだが、二児の母としてのプライベートの変化や、数年前に父親と親友を亡くしたことも、作風に大きな影響を及ぼしているという。家族との関係や人との繋がりを改めて考えるきっかけにもなったというし、そんな自身の変化も素直に受け入れているそうだ。だからこのアルバムには、こんなに温かい感情が流れており、聴いていると優しい気持ちにさせらせたり、希望が湧いてくるのかと納得させられる。

6月からは欧米で『Summer Carnival』と題された大規模なワールドツアーもスタート。53回の公演が全てスタジアムという、驚くべき規模で実施される。シルク・ドゥ・ソレイユのようなエアリアル(宙乗り)演出で知られる彼女だが、ますます進化したサーカス的なショーを披露してくれるという。それこそ体を張った”TRUSTFALL”の連続。本作のテーマを全身全霊で体現してくれるに違いない。





P!NK(ピンク)
『TRUSTFALL | トラストフォール』
再生・購入:https://PinkJP.lnk.to/TRUSTFALLRS

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