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60歳以上が半数占める山岳遭難 低い山でも事前準備と冷静な判断必要 これから 100歳時代の歩き方

産経ニュース / 2024年5月5日 9時0分

雄大な自然を楽しむ非日常に加え、体力づくりなどさまざまな効果が望める登山。しかし、一歩間違えれば遭難という危険と隣り合わせのレジャーでもある。全国の山岳遭難者数は増加傾向にあり、令和4年には過去最多を更新。60歳以上が過半数を占め、初心者向きの低山での事故が目立つ。夏に向けて遭難者が増える季節でもあり、高齢の登山者は自身の命を守るためにも、より綿密な事前準備と山中での冷静な判断が必要になる。

「登山計画書を提出していないばかりでなく、周囲の誰にも言わずに山に入り、遭難してしまう人が後を絶たない」。ある警察関係者は最近の山岳遭難の傾向について、こう嘆息する。

警察庁のまとめによると、山岳遭難は統計が残る昭和36年以降、新型コロナウイルス禍などで一時落ち込む年はあったものの増加傾向が続く。令和4年に山で遭難した人は3506人を記録し、過去最多となった。60歳以上が遭難者全体の50・7%を占め、遭難による死者・行方不明者数(327人)では70・6%にも上る。

また、富士山(静岡県、山梨県)が63人、穂高山系(長野県、岐阜県)が61人と、3千メートル級の山での遭難は数十人にとどまったのに対し、標高599メートルの高尾山(東京都)では108人が遭難しており、登山の難易度が比較的低いはずの山の方が遭難者が多いという結果になった。都道府県別でみても、比較的行きやすい東京都が220人と2番目に多い。

普段着で登る人も

4月初旬、東京都八王子市の高尾山登山口は平日にもかかわらず、多くの家族連れや若者グループ、高齢者グループでにぎわい、登山前の記念撮影などを楽しむ姿があった。

「雨が上がったばかりで路面が滑りやすいので気を付けてくださいね」

警視庁高尾署員が山岳遭難を防ぐためのパンフレットを配布しながら、こう呼びかけた。登山は初心者という高齢者を含む家族連れのグループは署員に声をかけられ、「ありがとうございます」と説明に聞き入っていた。

高尾山は都心から近く、標高が低い。中腹までケーブルカーやリフトで上がることができ、体力や経験に応じて複数の登山道を選ぶことができるなど、初心者にも「優しい」山だ。メインの登山道は緊急車両が通行できるほどで、舗装されている箇所も多いという。

それでも、遭難者が多い。高尾署で山岳救助隊員を務める桑原陽一警部補(42)は「急に暗くなって迷ってしまう人や、『天気が良くて思い立った』と、普段着のような服装で登ってくる人もいる」と明かす。初心者に人気で登りやすいからこそ、安易な気持ちで登る人が後を絶たず、遭難につながってしまっているようだ。

家族に事前連絡を

遭難を防ぐために心がけなければならないことは何か。桑原さんは「登山計画書を提出し、家族や友人にも計画を伝えるようにすることだ」と指摘する。計画を広く周知しておけば、遭難した場合でも、どの辺りなのか一定程度絞り込むことができ、捜索で見つかる確率が上がるという。

装備品の確認も重要になる。水や食料はもちろん、天気の急変や気温の低下に備え、雨具や暗くなった場合のライトも用意したほうがよい。「遭難時には携帯電話が命綱になる。上限まで充電していくだけでなく、予備のバッテリーも用意してあると安心だ」

自身の体力や日没の時間を考え、早めに下山する判断も必要だ。桑原さんは「しっかりと準備をすれば、高尾山の危険性はそれほど大きくない。気を付けて楽しんでもらいたい」と話している。(橋本昌宗)

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