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「能登の好き」のため、七尾・フレンチ料理店が食堂として再開 東京から移住のオーナー  能登半島地震

産経ニュース / 2024年5月7日 12時0分

仲間とともに炊き出しを行う日野さん=1月22日、石川県珠洲市(本人提供)

能登半島地震で被災した石川県七尾市のフレンチレストランが「気軽に集える自然派食堂」として営業を再開、金沢市内での2店舗目オープンに向けて動き始めている。能登にほれ込んで東京から移住、3年前に開業したオーナーの日野貴明さん(26)は、「能登が好きだから続けてきた店を、『能登の好き』のために続ける、と決めました」と話す。

JR七尾駅前を流れる御祓(みそぎ)川にかかる橋から450メートルほど続く「一本杉通」。寄棟造りの町家が並ぶ歴史ある町並みは地震で軒並み被害を受け、創業116年の「鳥居醤油(しょうゆ)店」など、国登録有形文化財5軒が損壊した。その近くに立つ日野さんの店「ひのともり」は、建物に大きな損傷はなかったものの、地元の作家に特注した数十枚の皿が割れ、器具は損壊。断水は3カ月続いた。

発災時、日野さんは7年ぶりに東京都立川市の実家で家族と正月を過ごしていた。午後4時過ぎ、緊急地震速報に続いて能登に大津波警報が出され、現地の映像を見ると、居てもたってもいられなくなった。

翌日から友人と予定していた韓国旅行をキャンセルし、支援物資を持てるだけ買い込んで新幹線に乗った。米原から特急に乗り継いで金沢へ。友人が車で迎えに来てくれ、2日のうちに店にたどり着いた。大好きな能登は知らない土地のように変わり果て、恐怖すら覚えたが、東京に戻るという選択肢はみじんも浮かばなかったという。

飲食店仲間らと七尾や輪島、珠洲(すず)で炊き出しに注力した。皆で道具を持ち寄り集まると、誰かが食材を持ってきてくれた。「能登はこういうところがすごいんです」。店の向かいの会社社長は欲しい人が使えるようにと敷地内の井戸に配管を施し、開放してくれた。過酷な状況下でも支えあい、前向きに明るく進む能登の人々がさらに好きになり、「能登の好き」のために店を続けようと心が定まったという。

10日ほどたったとき、日野さんは交流サイト(SNS)に断水が終われば弁当やオンライン販売を始めると告知した。「いつまでも『被災地』でいたくない」と、「能登の美味しい」を届けてまっとうな対価を得たいとの思いもつづった。

高校卒業後、東京のミシュラン1つ星フレンチで修行した日野さんは、平成30年9月に総務省のワーキングホリデーを機に珠洲に移住。古民家レストランを手伝う中で「能登で自分の店を持ちたい」と考え、知人の紹介で今の店舗に巡り合った。自分の名字と「能登」、「火の灯(とも)り」を掛け合わせた店名「ひのともり」には「皆の心に火が灯る場所に」との思いがこめられている。

6千円~のディナーを提供していた店は「気軽に集える自然派食堂」に転換させ、先月12日に再開。新たに雇ったスタッフ4人のうち2人は県外からの移住で、知人の紹介で「社員寮」も確保した。座席数を変えず単価を5~10分の1に下げたため経営としては厳しくなる中、「能登で続けるため」に、6月にも金沢に2店舗目をオープンする計画だ。

ただ、被災後3カ月間は店舗の売り上げはほぼゼロ。クラウドファンディングで支援を募りながらの運営だ。それでも、いつもの通り早朝に湧き水をくみ、花山椒やツクシを摘んで季節らしい料理を作る日々に、喜びを感じている。

「元気なんだから、希望しかない。食は希望だと思います」

クラウドファンディングはhttps://readyfor.jp/projects/Hinotomoriで受け付けている。

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