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苦境のパン店を救え「冷凍×IT」 個人商店〝味と物語〟を全国へ定期便 近ごろ都に流行るもの

産経ニュース / 2024年4月27日 13時0分

全国の提携パン屋さんから自慢の品が、冷凍定期便で届く「パンスク」(重松明子撮影)

地方を旅していると、田舎にこんなにおいしいパン屋さんが! と感動することがある。一方で、昨年度のパン屋さんの倒産は過去最多の37件(東京商工リサーチ調査)という苦境も…。今回は、各地の味が自宅にいながら楽しめるサブスクリプション(定期購入)「パンスク」に注目したい。パン屋さん側にとっては、冷凍配送により消費期限が延びて商圏が広がり、食品ロス削減のメリットがある。夏場に売り上げが落ちるパン屋さんの応援策として「ひんやりパンスイーツ」企画も始動した。

焼きたて復元 ロス削減

届いた箱から「ラフテーカレーパン」を説明書通りに解凍、温めていただく。カリッ、モチッと焼きたての生地が復元! スパイシーな角煮がトロリと混ざり合った。大人の味だ。添付のカードを読むと、和歌山県有田川町で沖縄県出身者が作っているパンだった。

「うちのメンバーが全国を飛び回って、おいしいパン屋さんを探しています」と、パンスクを展開するパンフォーユーの矢野健太社長(35)。提携店の基準は? 「まず第一は味。そして、地域密着で希少性のある個人経営。誰かに話したくなるような物語を持ったお店です」

どこのパン屋さんから届くかはお楽しみ(指定できない)。1回当たり送料込み3990円で1箱約8個のパンが届けられる。提携店は北海道から沖縄県まで100店舗、会員登録は4万5千人を超えている。

各店が焼きたてを冷凍したパンの注文・配送をスマートフォンで一元管理するシステムを開発し、令和2年2月にスタート。その2年後には、革新的な優れたサービスに贈られる「日本サービス大賞」農林水産大臣賞を受賞している。

矢野社長は京都大卒業後、電通を経て、郷里の群馬県桐生市にUターンして起業。人口10万規模の市内にも魅力的なパン屋さんがあることに気付いた。「その土地らしい独自性を持つパンを全国に流通させて、地方経済に貢献したい」

パンスクを運営するなかで判明したのは、8割以上の提携店が夏場に売り上げが落ちることだった。「猛暑による外出控え」「さっぱりしたものを食べたい」という消費者心理も分析し、このほど「パン救(すく)プロジェクト」として、提携店と開発した冷菓「ひんやりパンスイーツ」セットを商品化した。

都内で開かれた試食会では、冷たい生地と果実が爽快な「もちもちみかん大福ぱん」(大阪府大阪狭山市)、四角いパン内部にカフェオレクリーム、外側にチョコレートを流した「カフェオレキューブ」(愛媛県東温市)など夏向けの創意工夫が光る。パンスクでは新規会員限定商品としてこの夏、8個入り1千箱の販売を見込んでいる。

パンスク提携店には、どんな変化があったのか?

山梨県山梨市「製パン麦玄(むぎはる)」のパン職人・店主、高宮和広さん(44)は、売れ残るパンが課題だった。自家製天然酵母、県産小麦粉「かいほのか」、無農薬玄米粉など国産素材を追求した「体にやさしいパン」。原価も手間もかけているだけに、ロスになるのは心が痛い。

平日で300~400個、土曜はもっと多く焼くが、多い日で60個、平均20個のロスが発生していた。それが、提携後は半分以下に減らせている。

「雨天などで売れ行きが悪い場合、午後からパンスク用の製造に切り替えて、生産調整をしています。安定した注文がもらえ、売り上げへの貢献も大きい」と高宮さん。驚きは、パンスクのお客さんが「おいしかった」とインスタグラムに投稿してくれたり、北海道などの遠方からも旅行がてら店を訪ねてくれたりすること。「パンとともにメッセージも届けられる。新しいつながりができてうれしい」

原料費高騰や後継者難など個人商店には冬の時代だが、どこでも同じチェーン店ではまさに味気ない。遠くのまちのパン屋さんを応援する、こんな手もある。(重松明子)

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