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塔身の刷毛書きに鎌倉時代の美 般若寺笠塔婆㊦ 石仏は語る

産経ニュース / 2024年5月10日 15時30分

般若寺の北笠塔婆(かさとうば)の正面上部には「阿弥陀如来(キリーク)、観音菩薩(サ)、勢至菩薩(サク)」と阿弥陀三尊が蓮華座上月輪内に大きく刻まれ、金剛界五仏の種子「大日如来(バン)、阿閦(あしゅく)如来(ウーン)、宝生(ほうしょう)如来(タラーク)、阿弥陀如来(キリーク)、不空成就(ふくうじょうじゅ)如来(アク)」を薬研彫りとします。

正面下部には「二基以一本廻過去慈考以一本宛/現在悲母就中般若寺大石塔婆為/果大工本趣□為□彼影像所写也/此□□建立也然与今以企□□□/□上同合与力幷阿□上人修石/壇大功聊結縁畢願以此功徳/救□亡□□□苦偏□/常扨利天今一人行吉造石□都婆/詣極楽界都一切衆生□/弘長元年辛酉七月十一日伊行吉敬白」という十行の刻銘が記されています。

それは、「父の一周忌にあたって弘長元(1261)年7月11日に卒塔婆二基を建立する。一基は父の菩提を弔い、別の一基は現存する母の善行のために、般若寺石塔も伊行末一派の造立です。その功徳によって、一切の衆生とともに、極楽の世界に生をうけんことを願います」という内容です。

右側面には「如来証涅槃/永断於生死/若有至心聴/常得無量楽(如来は涅槃を証して、永く生死を絶つ。もし至心に聴くもの有れば、常に無量の楽を得ん)」と涅槃経偈があり、左側面には「孝養父母心/功徳最第一/是心発起者/成就自然智(父母を孝養する心は、功徳の最第一なり。この心を起せば、自然に悟りを成就すべし)」とあります。

裏面上部には月輪内に「胎蔵界大日如来(ア)」、下部には大随求陀羅尼小呪梵文二行「オン、バ、ラ、バ、ラ、サン、バ、ラ、サン、バ、ラ、イ、ンヂリ、ヤ、ビ、シュ、ダ、ニ、ム、ム、ロ、ロ、シャ、レイ、ソワー、カー」と刻んでいます。塔身に刻まれた梵字種子や偈文に見られる刷毛(はけ)書きは鎌倉時代独特の美しさがあり、特徴のひとつです。

鎌倉時代初期に東大寺再興の功績を修めた宋人石工の伊派の業績をはっきりと示している銘文は、石造美術の確実な史料となっています。 (地域歴史民俗考古研究所所長 辻尾榮市)

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