明暗分かれたＷＥリーグの平日開催 過密日程回避は喫緊の課題 北川信行の女子サッカー通信

サッカー女子プロ、ＷＥリーグは日程消化の関係で、平日の１８日に第１５節が行われた。６試合全てがナイトゲームで、案の定、４試合が１千人未満と観客動員に苦しんだ。一方、残る２試合は２８３４人と２５０５人とリーグ平均（１５５８人）を大きく上回る観客を集め、明暗が分かれた。

最多と最少は７・８倍もの差

６試合を結果とともに、観客数の多い順に並べてみる（※チーム名の頭の丸数字は１８日現在の順位）。

【２８３４人】エディオンピースウイング広島＝⑥サンフレッチェ広島レジーナ２－０②ＩＮＡＣ神戸レオネッサ

【２５０５人】ＮＡＣＫ５スタジアム大宮＝⑤大宮アルディージャＶＥＮＴＵＳ０－４①三菱重工浦和レッズレディース

【６５３人】長野Ｕスタジアム＝⑪ＡＣ長野パルセイロ・レディース２－２⑨マイナビ仙台レディース

【５６５人】味の素フィールド西が丘＝④日テレ・東京ヴェルディベレーザ３－１⑫ノジマステラ神奈川相模原

【４４１人】熊谷スポーツ文化公園陸上競技場＝⑦ちふれＡＳエルフェン埼玉１－２③アルビレックス新潟レディース

【３６１人】フクダ電子アリーナ＝⑧ジェフ千葉レディース０－２⑩セレッソ大阪ヤンマーレディース

最多の観客を集めたエディオンピースウイング広島で、サポーターの後押しも受けながら、開幕から１４試合無敗を続けていたＩＮＡＣ神戸に今季初めて土をつけた広島レジーナの中村伸監督は応援に感謝した上で「（こういった環境を）われわれから発信していけるようにしたい」と言葉に力を込めた。

一方、最も観客が少なかったフクダ電子アリーナでは、アウェーのセレッソ大阪ヤンマーレディースが連敗を４試合で脱し、昨年１２月３０日以来８試合ぶりの白星を挙げた。鳥居塚伸人監督は「ミスを恐れずチャレンジしようと臨んだ結果が、こういう形になったと思います。これがウチのベースだと思うので、これを継続して（ホームゲームの）次節も臨みたい」と話した。

観客数に応じた評価の導入を

ただ、最も観客の多かったエディオンピースウイング広島の２８３４人は、最も少なかったフクダ電子アリーナの３６１人の約７・８倍。エディオンピースウイング広島が開業後、男子も含めて初めてのナイトゲームで、しかも２位のＩＮＡＣ神戸を迎える好ゲームだったとはいえ、試合ごとに観客数に差がありすぎる感は否めない。この〝格差〟が、クラブごとに事情が大きく異なるＷＥリーグの課題を示しているようにも思う。

ちなみにＮＡＣＫ５スタジアム大宮の試合は「さいたまダービー」として開催。ＷＥリーグ公式マスコット「ウィーナ」も来場したという。

ともあれ、今回の平日開催は、「新スタジアムのナイター初開催」「ダービー」といった試合によっては、観客が集まるだけの価値があることを証明した。一方で、ファンやサポーターに刺さるようなトピックがなければ、惨憺たる数字に終わることも判明した。

こうした結果に鑑み、各クラブが集客に腐心していることを踏まえた上で、酷な言い方になるかもしれないが、これからは「成果＝観客数」に応じてリーグからの配分金に差をつけるなど、クラブごとの努力を評価する仕組みを導入することも考える段階にきているのではないかと思う。

また、日程についても熟考を促したい。

後に突如中止が発表されたアジア女子クラブチャンピオンシップの決勝に三菱重工浦和が出場する関係で、３月に７試合を戦い、しかも１６日から３０日までの２週間に５試合（中３日、中３日、中２日、中２日）の強行日程となった新潟レディースの橋川和晃監督が試合後の記者会見で「選手たちはタイトな日程の５連戦を戦い、身体はボロボロです」と訴えたことがＳＮＳ（交流サイト）上で話題となった。４月も全クラブが１４、１８、２１日と中３日、中２日の試合が続く。しかも国際親善大会「シービリーブスカップ」参加のため米国遠征していた女子日本代表「なでしこジャパン」のメンバーは現地時間の６日に米国、９日にブラジルと戦って１１日に帰国し、１４日からの〝連戦〟に臨んでいる。

広島レジーナに今季初黒星を喫した後、ＩＮＡＣ神戸のジョルディ・フェロン監督は「選手には疲れがあった」と打ち明けた。疲労が蓄積すればけがのリスクも高くなる。ＷＥリーグ勢がなでしこジャパンで活躍することを願うのであれば、今後は代表活動の期間も考慮に入れた上での細心のスケジュール立案も必要不可欠だと思う。

（サンケイスポーツ編集委員）