世界初「咀嚼ロボット」開発 ヒトの動作を再現、食品評価に活用期待 J-オイルミルズと大阪大
食品新聞 / 2024年4月8日 13時40分
J-オイルミルズは大阪大学大学院工学研究科の東森充教授と共同で、ヒトの咀嚼過程を再現できる咀嚼ロボットを開発し、その研究成果が「日本機械学会学術誌」に掲載された。今回の研究成果の活用により、食品評価の質向上への寄与が期待されている。
咀嚼とは、食物を口に入れてから食べ物を飲み込みやすいように歯で食物を咬み、口の中で唾液と混ぜながら食塊を作る一連の動作のこと。咀嚼には、食べ物を歯で咬み(咬断)、すりつぶし(臼磨)、舌で唾液と混ぜ合わせ(撹拌)、整えて「まとめる」という工程がある。
食品のおいしさには味や香り、歯ごたえ、弾力、舌触りなどの食感も重要な要素であり、食品メーカーとして食感を正しく評価することは必要不可欠で、食感の評価にあたって咀嚼は重要な構成要素という。
食品の開発現場では、食感の評価としてヒトが風味や物性などを測定する官能評価と、食品の硬さや弾力を測定する機械測定を行っているが、従来の装置はほとんどが咀嚼工程のうち、咬断のみを対象としており、「まとめる」機能が再現されないため食塊を作ることができず、食感の一部分しか評価できなかった。具体的には、噛んで潰した食べ物の硬さや弾力性など力学データの評価にとどまっていたという。
J-オイルミルズは18年から、大阪大学大学院工学研究科の東森教授と食品の評価に重要な咀嚼に関する共同研究をスタート。ヒトの咀嚼機能を整理し、必要な機能を検討したことにより、咀嚼の最終工程である「まとめる」機能を持った咀嚼ロボットを開発した。
咀嚼ロボットは従来の装置と同様に力学データを取得できるだけでなく、咀嚼過程の視覚データも取得可能。従来の装置では不足していた時間軸での変化や咀嚼工程の見える化を実現したことで「今までよりもヒトの感じる複雑な食感の評価が可能になる」という。
J-オイルミルズは、油脂製品のほか、テクスチャー素材(でんぷんなど)の製造・販売を行っている。でんぷんは食感を多種多様にコントロールすることで、ジューシーさの実現や食感の改良など、食品の機能性向上に役立っている。
今後は咀嚼ロボットを用いて、ヒトの咀嚼の仕組みを再現することで、同社製品の販売拡大やテクスチャー素材の新規開発につなげるとともに、「おいしさ×健康×低負荷」の実現を目指し、咀嚼評価を必要とする異業種とのコラボレーションなども検討する。
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