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浮気が一番多いのは結婚して何年目? 人生で2番目にストレスが大きいといわれる「離婚」は刑務所に入る以上のストレスで、さらに悪いことに…

集英社オンライン / 2023年4月19日 18時1分

人生においてただ一つ、本当に重要なものは「他者との関係」である。人間関係の意外な真実と確かな戦略を集めた『残酷すぎる人間法則 9割まちがえる「対人関係のウソ」を科学する』(飛鳥新社)より一部抜粋・再構成してお届けする。(全3回の2回目)

浮気は4年目に一番多い

紀元前38年ごろ、ローマの詩人ウェルギリウスは「omnia vincit amor」、すなわち、「愛はすべてに打ち勝つ」と書いた。

聖書のなかにも同様の言葉がある。コリント人への手紙13章7節には、「愛はすべてを忍び、すべてを信じ、すべてを望み、すべてに耐える」とある。この言葉は今日でも、歌や映画、結婚式などで耳にする。


しかし、それは真実だろうか? 愛は本当にすべてを克服するのだろうか? もちろん、そんなことはない(この調子では、本章はとても短く終わりそうだ)。

私は詩的許容を大いに支持するほうなのだが、最近の離婚の統計を見たことがあるだろうか? あなたがグーグルで検索する手間を省こう。

アメリカでは、結婚の約40%が離婚にいたっている。「七年目の浮気」とよく言われるが、浮気はむしろ4年目に多く、結婚から四年後の離婚が最も多い。しかも、こうした統計は世界的に見られる(人類学者のヘレン・フィッシャーは、アメリカでは、10人に1人の女性が40歳まで に3回以上結婚すると指摘している)。

がっかりさせることばかり言いたくないが、もし40%の確率で衝突事故を起こす車が、「わが社の車はすべてを克服します」というスローガンを掲げていたら、集団訴訟を起こされるだろう。ファイザー社が当初、バイアグラを見誤っていたように、私たちは愛について多くの神話や誤解を抱いている。

一例を挙げると、愛は、中世の宮廷恋愛から始まったわけではない。ロマンチックな愛は、ずっと昔からあった。最古の恋愛詩は、3500年以上前のエジプトまで遡る。そして愛は、世界共通のものだ。人類学者が調査した168にのぼる文化の90%に愛の概念があり、残りの10%は、確認に必要なデータが不足していただけだった。

恋愛の経験に関しては、調査対象となった国、年齢、性別、志向、民族の違いにかかわらず、おおむね一貫性が見られる。歴史上、多くの文化(シェーカー教徒、モルモン教徒、東ドイツを含 む)が恋愛を抑えつけようと試み、いずれも見事な失敗に終わったことから、ほぼ間違いなく 生得的な感情だとわかっている。

「配偶者は親友?」への答えは文化で異なる

とはいえ、詳細についてはさまざまに異なる。フロリダ州ジャクソンビルで行われた調査では、60%の人びとが、配偶者は親友だと答えた。メキシコシティでは、何人が同じ答えをしただろうか? ゼロだ。

また、ロマンチックなキスをする文化はじつは少数派で、被験者168人中、46%に過ぎなかった。さらに、愛は必ずしも心臓と結びつけられるものでもない。西アフリカでは、愛と言えば鼻であり、ニューギニア島東部沖にあるトロブリアンド諸島では腸である(こうなると、くしゃみや消化不良は何を意味するのか、真剣な再解釈を要する)。

長期的な愛の形の大半は結婚であり、それにより私たちが戦うべき神話のラスボスに行きつく。結婚すれば、より健康でより幸福になれる、という記事は世の中に溢れているが、それは違う。そうした報告の多くは、単に既婚者と独身者の幸福度を調査して比較し、既婚者のほうが高いことを見いだし、「ほらね、結婚すると健康で幸せになれる」と得意げに言っているにすぎない。

しかし、それでは「生存者バイアス」と呼ばれる間違いを犯している。もし「結婚するこ と」が人を幸せにするかどうかを調べたいのなら、別居者、離婚者、死別者を、独身者ではな く、現既婚者と一緒にするべきだ。そうしなければ、大ヒット映画のスターばかりを調査して、

「俳優になることは、明らかに素晴らしい職業選択である」と言うようなものだ。

バージンロードを歩いたことのある人、ない人を調べると、健康度や幸福度はさまざまに異なる。簡単に言えば、結婚すれば健康で幸福になれるわけではなく、良い結婚をすれば健康で幸せになれるのだ。かたや悪い結婚は、たとえ過去のものであっても、とても(あるいは、とてもとてもとても)悪影響を及ぼす。

「幸せな結婚」は寿命を伸ばすが、離婚は刑務所以上のストレス

では、結婚は健康にどのような影響をもたらすのだろうか?

もしあなたが結婚というゲームショーの勝者であれば、プラスの効果がたくさんある。心臓発作、がん、認知症、さまざまな病気、血圧等の指標、あるいは端的に死亡率など、すべてが改善する(現在結婚している男性は、寿命が平均7年延びる)。

しかしここで、「ただし」という厄介な言葉を入れなければならない。不幸な結婚生活を送っていると、一度も結婚しなかった場合に比べ、健康状態が著しく悪化する可能性がある。結婚生活が破綻していると、病気になる可能性が35%高くなり、寿命が4年短くなる。9000人を対象にした調査によると、離婚者および死別者は、健康問題(心臓病、がんなど)を20%多く抱えている。

さらに驚くべきことに、こうしたマイナス影響には、たとえ再婚しても持続するものもあった。再婚者は、まったく離別しなかった人に比べて深刻な健康問題を抱えている人が12%多く、また、離婚経験のある女性は、再婚してもなお心血管疾患になる可能性が60%高かった。

では、幸福度についてはどうだろうか?

円満な結婚生活を送っていれば、結婚によって幸福度が高まるのは間違いない。2010年 にオーストラリアで行われた研究は、素晴らしい結婚をした人びとがどれほど幸福かについて、従来の研究では過小評価されているのではないかとさえ指摘している。

離婚は人生で経験する2番目にストレスの大きなもの


裏を返せば、良い結婚に恵まれない人びとは、想像以上に不利だということになる。ある研究で、5000人の患者の医療記録を調べ、人生で経験する最もストレスの多い出来事を分析したところ、離婚は2番目にストレスが大きいことがわかった(一番は、配偶者との死別)。離婚は、なんと刑務所に入るよりストレスが大きかった。

いや、もっと悪いことがある。本来、人間にはかなり回復力がある。どんなに悪いことが起ころうと、ほとんどの場合、幸福度はいずれ基準値に戻る。ところが離婚の場合は違う。3万人を対象とした18年間におよぶ調査によると、結婚が破綻した後、主観的な幸福度は回復を示すものの、元のレベルには戻らないことがわかった。つまり離婚すると、幸福度が持続的に低下するようだ。

そして、前述の2010年オーストラリアの調査で、未婚者、既婚者、離婚者等を含めた
「結婚スペクトラム」全体で見ると、不幸な結婚生活を送っている人が最も落胆していることがわかった。どうせ孤独になるなら、一人でなるほうがましだ。

というわけで、結婚は健康や幸福を保証してくれるものではなく、大勝ちか大負けかというギャンブルのようなものだ。さらにギャンブルの喩えでいえば、勝ち負けの確率は五分五分ではない。

『ニューヨーク・タイムズ』紙のコラムニスト、デイビッド・ブルックスが述べたように、ア メリカでは、離婚率が40%に近く、離婚に至らないが別居中の夫婦が10~15%、さらに同居を続けているが慢性的に不幸な既婚者が7%ほどいる。どう考えても、健康や幸福の保証にはならない。幸せな結婚生活を持続できる夫婦のほうが少数派なのだ。

『残酷すぎる人間法則 9割まちがえる「対人関係のウソ」を科学する』(飛鳥新社)

エリック・バーカー (著), 橘玲 (監修), 竹中てる実 (翻訳)

2023年3月24日

1760円(税込)

404ページ

ISBN:

978-4864109499

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