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ジャガイモの皮もむけなかったスヌープは“愛情”で料理に目覚めた――異色のレシピ本『スヌープ・ドッグのお料理教室』(後編)

集英社オンライン / 2022年5月20日 13時1分

アメリカのカリスマ主婦、マーサ・スチュワートとの料理番組を持つほどの腕前を誇るスヌープ・ドッグ。そんな彼が愛する人に振る舞ってきたレシピを紹介する料理本『スヌープ・ドッグのお料理教室――ボス・ドッグのキッチンから60のプラチナ極上レシピ』は、スヌープのルーツやアーティスト性も詰まった1冊だ。本書の翻訳者のKANAさんに出版の経緯や訳へのこだわりを聞いた前編に続いて、後編では、スヌープの料理への思いや、レシピ本としての面白さを語ってもらった。

スヌープにとって料理は愛情そのもの

目を覚ませ、料理初心者たち! さぁ、とっとと起きてクッキング始めるぜ……。

――この本は、作ったり食べたりする想像をするだけでも気分を上げてくれるレシピ本ですが、単に料理本として楽しめるだけではなくて、すごくいろいろなことを伝えていますね。



私は、スヌープは今まで音楽を通じてそれをやってきたと思ってるんです。自分と家族の命を守るためにギャングに入って、自分なりの人生と音楽を確立してきた中で、過去の自分のように苦しい状況にいる子たちに、世界の前向きな側面を伝えている。彼の表現に通じるそういう姿勢は、この本でも、翻訳で曲げたくなかったんですよね。彼は茶化すような言葉も使っていますけど、そういう伝え方で受け入れてもらおうという気持ちを原書から理解したので、そこは日本語でも同じように読者に伝えようと思いました。

「ダ・ドッグファーザーな俺様はハード(タフ)なタイプで、誰も俺をソフト(柔い)だとは呼べないってことはわかってるよな。だが、ソフトタコス? それはまた別の話だ」<本文引用>

――KANAさんは、スヌープにとって料理ってどういうものだと思いますか?

愛情だと思いますね。自分のお腹を満たすという意味で自分への愛でもあるし、仲間や家族に対する愛情でもあると思います。アメリカ人にとって家族で食事をすることは最大の喜びですけど、黒人は特に、家庭に恵まれない子どもも多くて。だからこそ美味しいものを食べる間だけでも愛情を感じられる、それがアメリカ人やスヌープにとっての料理だと思うんです。マーサ(・スチュワート)との出会いも大きかったと思います。

中流家庭以上の人をターゲットにしたビジネスや番組をやっている白人女性とスヌープが出会い、お互いの文化を理解していくと同時に、スヌープ自身、周りへの愛情と料理がつながったんだと思います。

――スヌープは、マーサに出会ってから料理を始めたんですか?

マーサの番組に初めて出たのが2008年ですから、その頃からだと思います。そのときはマッシュポテトを作ったんですけど、スヌープは茹でたジャガイモの皮をむくように言われてナイフで削り始めたんですね(笑)。当時、料理の腕はそのレベルでした。

ふたりの料理番組では同じものをそれぞれ作るんですけど、スヌープは自分のマッシュポテトには高級コニャックを入れたりして(笑)。この本の原書が出たのが2018年ですから、10年ぐらいで料理の楽しさを覚えていったようです。

音楽も料理も同じくらいクリエイティブ

――スヌープの作る料理は、すごくクリエイティブですよね。

私は、料理はアートだと思っているんです。アートだからこそ好みが分かれるかもしれないけど、人が作ったものに対しては、文化と同じように敬意を忘れちゃいけないと思います。だから、彼のアートそのものがこの本に詰まっていますね。彼から湧き出てくるものを形にした1冊です。

――日本のレシピ本と、アメリカのレシピ本はけっこう作りが違うそうですね。

日本のレシピ本は手順も含めて写真が丁寧に載っていますけど、アメリカのレシピ本は写真が載ってる方が少ないんですよ。完成写真すらほぼありません。でも、日本の料理本はわかりやすいですけど、写真のとおりに作らなきゃと思ってしまうから、アレンジがしにくい。もしくは、アレンジできないような気になってしまうこともあるかと思います。

アメリカの料理本は、想像しながら作る必要があるので、自分の想像を膨らませられる楽しみはありますね。日本とアメリカの料理本を足して2で割ったらちょうどいいかもしれないですね。この本は完成写真がある料理も多めなので、他の料理本よりは親切です(笑)。

「ビッグ・スヌープ流にさらにアレンジするとしたら、グリルした胸肉の代わりにチップ・プライド・チキンウィングスを使う。そう、チキンウィングのウメェ肉をぶっかけちまえ。それでカンペキ」<本文引用>

――日本の読者に、この本をどういうふうに楽しんでほしいと思いますか?

知らなかったものを知って、楽しんでもらうきっかけになったら嬉しいです。この本を読んで初めて料理にチャレンジして、YouTubeチャンネルで、スヌープのレシピを作るところを動画で公開している方もいるんです。そういうふうに、ヒップホップ好きでこの本を手に取った方が料理に興味を持ってくれたら嬉しいし、アメリカ料理を知りたいという理由で手にした方にも、この本でヒップホップの本当の文化を知ってもらいたいですね。

新しい発見にワクワクしたり、幸せを感じてもらうのが、この本の目的です。まだまだ制限が多い時代ですけど、夏にはこのレシピをバーベキューで作れるかなとか、そういう期待が気持ちを上げると思うので、この本でそういう気分になってもらえたら嬉しいですね。

前編(なぜスヌープ・ドッグの料理は胸を熱くするのか?)はこちらから

取材・文/川辺美希 ©スヌープドッグ・KANA/晶文社

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