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『ジョジョ』『コナン』『ガンダム』の驚きの共通点とは? 「月9」や「大河」にも…“処刑用BGM”が約1億回再生の作曲家・菅野祐悟「日の丸背負って曲作ってるっていう気持ちも少しあるんですよ」

集英社オンライン / 2023年9月22日 18時1分

アニメ『ジョジョの奇妙な冒険』の戦闘シーンの曲がネットで“処刑用BGM”としてバズッた作曲家・菅野祐悟。実は『名探偵コナン』最新作や、NHKの大河ドラマに朝ドラ、フジの月9にTBSの日曜劇場と、数々のドラマやアニメの楽曲を手掛ける菅野氏とはどんな人物なのか。

「作曲家以外になりたいと思ったことは1回も、1秒もない」

作品名を聞いただけで、その劇中のBGMを思い出せる作品が、誰しもきっとあるはずだ。

連続ドラマなら『ガリレオ』、『SP』、『MR.BRAIN』、『新参者』、『謎解きはディナーのあとで』、『安堂ロイド』、『軍師官兵衛』、『花咲舞が黙ってない』、『昼顔』、『銭の戦争』、『東京タラレバ娘』、『半分、青い。』、『リーガルV 元弁護士・小鳥遊翔子』、『テセウスの船』、『日本沈没ー希望のひとー』など70番組以上。



テレビアニメなら『PSYCHO-PASS』、『ジョジョの奇妙な冒険』(3部以降)、『ガンダム Gのレコンギスタ』など多数。

映画なら『踊る大捜査線』(THE MOVIE3、4)、『3月のライオン』、『亜人』、『カイジ ファイナルゲーム』、『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』など、これまた多数。

そして、これらは彼が手掛けた作品のごく一部。
「作曲家・菅野祐悟」の名前は知らなくても、ここに列挙した作品のどれかは観たことがある人が大半だろう。

――27歳でフジテレビ系月9ドラマ『ラストクリスマス』にてドラマ劇伴(映画やテレビドラマ、演劇、アニメ等の視覚作品に合わせて流される音楽)デビューした菅野さんですが、いつ頃から作曲家を目指していたんでしょうか?

小学校1年のときの「将来の夢」の作文で「作曲家」と書いていました。そのころから「作曲家になる」って思ってましたね。父親は普通のサラリーマンなんですけど、オーディオマニアだったこともあって、小さいころからジャズやクラシックを聴いて育ったんですよ。

それで4歳からピアノを習い始めてたんですけど、1年生のときにピアノ教室のレッスンの一環で作曲してみようっていうのがあって、お世辞だったのかもしれないですけど、先生にすごくほめられたんです。なんかそのときに「あ、自分は天才なんだ」って(笑)。

菅野祐悟氏

――小1で作曲して、もうすでに才能を自覚していたと。

それ以来、作曲はずっとしているんですよね。勉強は好きじゃなかったし、運動は苦手だったし、あとはピアノも実は自分では得意だとは思ってなくて。でも作曲は好きだし、すぐにできたんですよ。

だから僕にはそれしかなくて、生まれてこのかた作曲家以外になりたいと思ったことは1回も、1秒もない。小学生時点で「作曲家になりたい」ではなくて、当たり前のように「作曲家になる」って思ってました。

――ちなみにJ-POPはあまり聴いてなかったですか?

いやいや、聴いてましたよ。TM NETWORKとかB'zとかX JAPANとかBOØWYあたりは世代なんでCD持ってましたし。小室哲哉さんの影響はけっこう受けてると思います。

「大河ドラマは1年に1人しか選ばれない、ひとつの到達点」

――東京音楽大学在学中にアーティストへの楽曲提供をはじめ、卒業後は「森永」(モリナガ♪)、「HOYU」(ホーユー♪)など、有名企業のCMサウンドロゴを手掛けていたとか。そして27歳で月9作品に抜擢ですから、早くに才能が認められていました。

普通にコンビニやテレアポのバイトをしてる時期もあったので、自分的には作曲家一本でやっていけるかどうか不安でした。音楽制作会社に入ったはいいものの、試用期間中の3ヶ月でクビになったこともありましたし。

今の事務所に入ってからも、ドラマの劇伴のコンペに何回出しても通らない。たまたま『ラストクリスマス』で引っかかって劇伴デビューできて、そこからようやくドラマの仕事をいただけるようになったって感じです。

――2014年放送のNHK大河ドラマ『軍師官兵衛』の劇伴を担当した際には、相当な感慨深さがあったそうですね。

大河ドラマは国民的なドラマ枠だし、1年に1人しか選ばれないので、作曲家としてひとつの到達点だと思っています。それに大河ドラマは小さいころから親と一緒に毎週観ていて、小学生時代から漠然と大河ドラマの音楽を作りたいという気持ちは持っていたし、中学生のときにはもう現実的な目標として考えてましたから、うれしかったですね。

しかもショパンの祖国のポーランドのオーケストラとレコーディングをできたのも、とても大きな価値のある経験だったなぁと思います。

――大河ドラマ以外に目標としていることはありましたか?

今の事務所は社長と縁があって所属したんですけど、入った当時社長に「僕は月9と大河とガンダムをやれる作曲家になりたいんです」って言っていたんです。宣言っていうほどではないんですけど、20年ぐらい前から目標として思っていたんですよ。

――2004年の『ラストクリスマス』、2014年の『軍師官兵衛』、同年の『ガンダム Gのレコンギスタ』で見事コンプリートしたわけですね。それだけでなく菅野さんは『踊る大捜査線』や『名探偵コナン』といった、90年代から大人気だった国民的作品の劇伴も担当されています。

『踊る~』は2010年の劇場版『踊る大捜査線 THE MOVIE3 ヤツらを解放せよ!』からで、『名探偵コナン』は2022年の劇場版『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』から担当させてもらっているんですけど、最初はやっぱり「僕が引き継いで大丈夫ですか?」っていう気持ちはありました。

作曲家が変わることなんて求めてないファンもいるわけだし。でもやっぱり、監督やプロデューサーさんに「新しい風を入れてもらいたい」ってオファーをもらったからには、昔からのファンのみなさんにも受け入れてもらって喜んでもらって、そのうえで僕だからできる曲を作っていかないとと思うようになってましたね。プレッシャーを感じつつも、粛々と曲作りをしていくっていう感じでした。

「あ、この曲は“処刑用BGM”って言うんだ、って思いました」

――『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズも2014年の第3部から菅野さんが引き継ぎ、その後の第4部、第5部、第6部も担当されています。『ジョジョ』は特に、戦闘シーンに使われる曲がいつのころからかネットで“処刑用BGM”と呼ばれバズッていましたが……最初にそのワードを菅野さん自身が耳にしたときはどう思われましたか?

ネットで話題になっているっていうの聞いて、「あ、この曲は“処刑用BGM”って言うんだ」って思いました(笑)。ファンの方々がそういう言葉を作ってくれて喜んでくれているとは、作った本人からすると思いもよらないわけですよ。

『ジョジョ』に限った話ではなくて、自分としては全部の作品の1曲1曲を全力で作ってるので、そのなかの1曲がそういうふうに呼ばれるようになるとは思ってなくて。でも2007年の『SP 警視庁警備部警護課第四係』のメインテーマも、突然思いもよらない盛り上がり方で評価してもらえたんです。

それから10年ぐらいは“『SP』の菅野”って言われるほど僕の代名詞のようになっていって。『ジョジョ』の“処刑用BGM”は『SP』のときとはまた盛り上がり方が違いますけど、うれしいですよね。

――さらに『ジョジョ』第5部の「il vento d'oro」が“処刑用BGM”としてさらに跳ねた感があります。Spotifyで公開された同曲は、大台の1億回再生に迫る勢いですよね。(※2023年9月14日時点で8411万回再生)

菅野氏作曲の「il vento d'oro」は約1億回再生。Spotifyでも視聴可能。Warner Bros. Japan Anime『TVアニメ「ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風」キャラクターPV:ジョルノ・ジョバァーナ』より

3部、4部で“処刑用BGM”という呼ばれ方が定着していたので、「il vento d'oro」のときは、もう僕のなかでも「5部用の“処刑用BGM”作らなきゃな」って考えながら作ったんですけど(笑)、狙って当ててやったみたいな気持ちはまったくなくて。予想以上にファンの方々が盛り上がってくれたのは驚きましたね。

まあこういうのは運というか、長い間、劇伴の曲を手抜かずに作り続けて来たから神様が与えてくれたのかなって思ってます。

――菅野さんの仕事ぶりはとてもハイペースだと伺いました。年に10作品以上に携わり、年間400曲は作るというのは本当ですか?

そうですね、なので1日1曲作っても足りないペースで作っていかないといけない(笑)。だけど1曲にかかる時間はバラバラで、3分間の曲がそのまま3分で作れるときもあるし、極端な話、その曲を作るのに2年かかる場合もあるんですよ。

――素人でも尋常じゃないハイペースだということはわかります。ご自身で働き過ぎだとは思いませんか(笑)?

う~ん……働き過ぎかどうかはおいておいて、たとえば1年に3曲しか作らないとしたら、その3曲とも大ヒットさせるのってかなり難しいですよね。3打席立って3本ホームラン打てるとしたら、そのほうが尋常じゃない。

僕の場合は常に打席に立って、年間400打席でそのなかからホームランが何本か打てればいいなってスタンスなんです。

「僕が作った曲で日本の音楽のレベルを問われるかもしれない」

――最終的にどんな作曲家になりたいとか、どういう曲を作りたいとか、なにかビジョンはありますか?

“今を生きる作曲家”になりたいんですよ。今なら2020年代という時代を切り取りたい、2023年を感じる曲を作りたいんです。ベートーヴェンの時代の曲を、今の僕が焼き直しても音楽史には刻まれない。ベートーヴェンはその時代の曲を作っていたし、バッハもその時代の曲を作っていたし。だから僕も今を生きて今の音楽を生み出して、それをこの時代の音楽として多くの人に聴いてもらいたいんです。

――後世にも残る曲を生み出していきたいと。

まぁそんな大げさなことをいつも考えてるわけじゃなくて、普段は「好きな音楽をやって飯食っていければいいか」ぐらいの感じですよ。ただもし、アメリカ人が日本人の友達に「最近日本でなにが流行ってるの?」って聞いたとしたら、『ジョジョの奇妙な冒険』とか『名探偵コナン』とかを紹介する可能性は充分あるわけで。そうしたら、僕が作った曲が“世界から見た日本の音楽”ってとらえられて、日本の音楽のレベルを問われるかもしれない。だから日の丸を背負ってるっていう気持ちも少しあるんですよ。

取材・文/堺屋大地 写真/下城英悟

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