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3年半で271店舗!“ガシャ活”が「ガシャポンのデパート」で全国規模に…空きスペース活用の立地戦略から「ついで買い」需要で急成長した理由

集英社オンライン / 2024年3月7日 11時1分

コロナ禍の影響でリアル店舗の閉店が相次ぎ、テナントの空きスペース増が問題になっている。そんな中、ポップアップショップや、居抜き物件の活用がトレンドになりつつある。2020年に1号店をオープンし、現在大量出店を続ける「ガシャポンのデパート」「ガシャポンバンダイオフィシャルショップ」はどういった立地戦略を展開しているのか。担当者に話を聞いた。

誰もが一度は遊んだことのある「ガシャポン」。

そんなカプセルトイ自販機を一堂に集めた「カプセルトイ専門店」がここ最近増えている。これまでも、駅構内やショッピングモールのトイレの前など、カプセルトイが並ぶ空間はあったが、看板を出して「ガシャポンの店」としてショップ営業をしているのだ。



本記事では、全国に幅広く店舗展開している、バンダイナムコアミューズメントが手掛ける「ガシャポンのデパート」と「ガシャポンバンダイオフィシャルショップ」に注目した。

「ガシャポンのデパート」の外観

お話をうかがったのは、バンダイナムコアミューズメント ベンダー事業部のゼネラルマネージャーである山田昇平さんだ。

想定以上の人気と出店スピードの早さで、全国271店舗へ

「ガシャポンのデパート」は2020年8月、コロナ禍の最中に生まれた。1号店はショッピングモール・横浜ワールドポーターズ内にできた。その1年後の2021年9月に、バンダイ商品のみを扱う「ガシャポンバンダイオフィシャルショップ」がショッピングモール・東京ソラマチ内にオープン。

2024年2月時点では、「ガシャポンのデパート」が115店舗、「ガシャポンバンダイオフィシャルショップ」が156店舗。わずか3年半の間に計271店舗を展開している。

横浜ワールドポーターズがある、みなとみらい 写真/Shutterstock.

「今年は100店舗以上を開店させました。当初の想像以上に成功したので、年々、出店数を加速させています」

店舗数の増加を支えるのが、出店スピードの速さだ。

「規模にもよりますが、最短3か月で店舗を完成させます。ゲームセンターだと、電気工事などに時間がかかりますが、カプセルトイ専門店の場合、カプセルトイ自販機を用意できればそこまで時間はかからない。しかも当社の場合、自販機はグループ会社の製品であることも多いので、スピーディーに用意できます」

出店攻勢は、コロナ禍だけが原因ではない

カプセルトイのみを置いたショップのアイデアは、2020年のコロナ禍がきっかけとなって生まれた。

「コロナ禍で施設事業全体の集客を再考する必要があり、その中で生まれたアイデアのひとつでした。そこで、ゲームセンターのオペレーションほど人を介さずに楽しむことができる場所として、カプセルトイ専門店が候補に挙がりました」

コロナ禍の東京の様子 写真/Shutterstock.

多くの出店を可能にした背景には、コロナ禍で空きテナントや空きスペースが増えたこともある。しかし、山田さんは、それだけが原因ではない、と言う。

「確かにコロナ禍によって、出店機会は増えました。しかし最近では、オーナーさんが明確に自分のテナントとしてカプセルトイ専門店を展開したい、という事例が増えています。カプセルトイ専門店は空きテナントがあったから発展してきたと捉えられがちですが、そもそも顧客支持がないと発展はできない。出店を続けて、カプセルトイ自体に価値を感じる人が多いことがわかりました」

「ついで買い」を狙った立地戦略

実際、バンダイナムコアミューズメントでは、さまざまなニーズを予測した上で慎重に出店を行うそうだ。

「その場所にどれぐらいの人がいて、その前をどれぐらいの人が通るのかを重視しています。『ガシャポンのデパート』はもともと、ゲームセンターと併設させる形でスタートしました。でも、カプセルトイのいいところはふらっと気軽に立ち寄って、ついつい買ってしまうこと。そんな『ついで買い』を起こしやすい場所も狙っています。ですから、日常的に人が集まる場所、例えば書店などにも出店しています」

「ガシャポンのデパート」のロゴ

一方、バンダイ商品のみで構成される「ガシャポンバンダイオフィシャルショップ」でも、別の形で「ついで買い」が起こる。

「『ガシャポンバンダイオフィシャルショップ』は、バンダイから発売されたガシャポンを全店に導入するというコンセプトなので、『あの商品が欲しい』という目的を持って来てもらえます。一方で、同じ空間に別の商品を併設することで狙いの商品以外にも目がいくわけです」

「一期一会」の出会いと、立地によって変わる商品

顧客ニーズを満たす工夫は、そのラインナップにもある。

「カプセルトイは毎月200〜300ぐらいの新商品が発売されるので、毎週ラインナップを入れ替えます。訪れるたびに商品が変わる『一期一会』性が、カプセルトイ専門店の価値になっているとも聞いています。お客さんにインタビューしたら、どの店舗に何が入ったのかを見周りする『店舗パトロール』という文化もあるらしいです(笑)」

店の立地によって、商品ラインナップを変えることもある。

「映画館に隣接している店舗は、映画関連の商品を集めるといった工夫もしています」

「ガシャポンバンダイオフィシャルショップ」のロゴ

ニーズに合わせたラインナップを提供できるのは、全国各地にある店舗でのデータを活用することができるからだ。そのデータをもとに、商品ラインナップを決めていく。

「お客さんの好みの傾向がわかるということが、たくさん店舗を持つ当社の強みにもなっていると思います」

出店してみてわかることも多い

とはいえ、消費者の傾向は、出店前にはわからないことも多いという。トライアンドエラーでさまざまに出店した結果、見えてくることもある。

「意外な鉱脈だったのは、近くに大型ショッピングセンターなどの娯楽のスポットがあまりない場所です。こうした土地の店舗は、全国での平均的な売上よりもすごく高く、ときには都心部を超えることまであります。

例えば、地方の書店。書店自体も本だけでは商売にならないそうで、カフェを併設させたり、ネイルサロンを入れたり、いろんな業態をつくっています。書店の社長さんとお話すると、書店はそれぞれの地域で、なくてはならない公共インフラだった。そのため、本の売上は落ちているけど、そこにお客さんが集まる現象は起き続けている。時間をつぶす場所としての価値がいまだにある、とおっしゃっていました。

だからそこにカプセルトイ専門店が入ったことで、相乗効果で数字が伸びたんじゃないでしょうか」

「こうしたことは実際に出店してみないとわからなかった」と山田さんは振り返る。

「無目的」の人々と「目的を持つ」人々のニーズを拾い上げる出店戦略

出店を続けるうちに、山田さんはカプセルトイが持つ体験価値に改めて気がついたという。

「ガシャポンは、気軽に楽しめるコンテンツだと再確認しました。目的のお店の隣にカプセルトイ専門店があると、そこにすっと入ることが多い。『ついで需要』が非常に多いんです」

こうした「無目的」の人を取り込むために、どのような出店戦略を立てているのか。

「今狙っている場所は、駅ナカや空港のような公共交通機関や、日常生活の動線になっている生活インフラに溶け込んだ場所です。例えば、バスの待ち時間で利用してもらえるバスターミナルも狙いたい。究極はコンビニや100均です。無目的で集まる側面が強いので、相性がいいと思います。

駅ナカには数多くのテナントが立ち並んでいる 写真/Shutterstock.

また積極的に業態変化をしているテナントに提案したいとも思っていて、例えばケータイショップはかつてたくさんありましたが、徐々にオーナーさんたちがそれを持て余すようになって、そこを他の業態に変えていく動きがあります。そういったところも狙いたい」

「ガシャポンバンダイオフィシャルショップ」ではさらに別の出店戦略も立てている。

「『ガシャポンバンダイオフィシャルショップ』は、そこに来ればバンダイの新商品があるので目的を持つお客さんが多い。今の目標は、全都道府県に最低1店舗は出店することです」

無目的の人々と目的を持つ人々の両方のニーズを拾い上げる。これが、出店戦略の本質だ。

カプセルトイの体験価値を推し出してく

山田さんは「カプセルトイの体験価値」についてこう語る。

「ガシャポンの商品は年々質が上がっています。最近では推し活文化とも連動して人気も上がってきた。でも、それだけがカプセルトイの魅力ではなく、たくさんのカプセルトイ自販機の中から選ぶ楽しみや、欲しい商品が出るか出ないかドキドキして回す体験も重要。

それはリアルでしか感じられない価値です。どうやったらこの場所でワクワクドキドキしてもらえるのか、それをこれからも意識していきたいです」

実際店内は、カプセルトイを撮影するためのブースがあったり、ポイントを貯めることができる空きカプセルの回収機があったりと、ワクワクしながら体験できる工夫に満ちている。

「ガシャポンバンダイオフィシャルショップ」の外観

最後に、リアルな場での体験価値を高めるために、ファンミーティングの開催も行いたいと山田さん。

「現在はカプセルトイ専門店ブームと言われていますが、これがブームで終わらないように、その体験価値を推し出して、ファンの心をしっかりと掴みたいです」

取材・文/谷頭和希

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