私が好きな言葉の一つに、「情けは人の為ならず」というものがあります。
シンプルに言い換えれば、人に対する情けは、相手のためではなく、巡りめぐって自分のためになる……という意味です。
この言葉は、人に優しくすることの「核心」を教えてくれるものだと思います。
旧5000円札の肖像画で知られる教育者で思想家の新渡戸稲造は、1915年(大正4年)に著した『一日一言』の中で、次のように記しています。
施せし情けは人の為ならず
己 おのがこころの慰めと知れ
我れ人にかけし恵は忘れども
人の恩をば長く忘るな
これを現代語に訳すと、次のようになります。
情けをかけるのは、人のためではない。
ただ自分が満足できれば、それだけでいいと知っておこう。
人にかけた情けは忘れても、
自分がかけられた情けは、ずっと忘れないようにしよう。