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「情けは人のためならず」は、科学的にも正しかった! 優しい人は損をしない「返報性の法則」とは

集英社オンライン / 2024年3月13日 17時1分

「“優しい人”は損をするのでは?」という疑問に精神科医の視点から応えた新刊『なぜか人生がうまくいく「優しい人」の科学』。実は「情けは人のためならず」は本当だった!? 書籍より一部抜粋、再編集してお届けする。

「情けは人の為ならず」 は、科学的にも正しい考え方

私が好きな言葉の一つに、「情けは人の為ならず」というものがあります。

シンプルに言い換えれば、人に対する情けは、相手のためではなく、巡りめぐって自分のためになる……という意味です。

この言葉は、人に優しくすることの「核心」を教えてくれるものだと思います。

旧5000円札の肖像画で知られる教育者で思想家の新渡戸稲造は、1915年(大正4年)に著した『一日一言』の中で、次のように記しています。



施せし情けは人の為ならず
己 おのがこころの慰めと知れ
我れ人にかけし恵は忘れども
人の恩をば長く忘るな

これを現代語に訳すと、次のようになります。

情けをかけるのは、人のためではない。
ただ自分が満足できれば、それだけでいいと知っておこう。
人にかけた情けは忘れても、
自分がかけられた情けは、ずっと忘れないようにしよう。

要するに、人に優しくすることは、相手のためだけでなく、後で自分にも還ってくるのだから、人に見返りなど求めず、自分が満足するだけにしておこう……ということですから、この考え方に私も同感です。

精神科医として補足するならば、新渡戸稲造の考え方は、単なる人としての教訓ではなく、科学的にも正しい視点だと思います。

人間の心理には、 「返報性の法則」と呼ばれる原理があるからです。

返報性の法則とは、相手から優しくされたり、親切にされると、その好意に対して「お返しをしたい」と感じる人間の心理のことです。

友人や同僚にピンチを救ってもらったら、 「次は自分が相手を助けてあげたい」と思うのではないでしょうか?

相手に何かしてもらったら、その好意に報いるために、今度は相手にも何かしてあげないと気がすまない……という心理が人間には備わっているのです。

その一方で、返報性の法則には、マイナスの要素もあります。

相手に嫌なことをされた場合には、それに対して「仕返し」をしたい、復讐したいという気持ちが生まれてしまうことです。

周囲の人に優しく接している人と、冷たい態度を取っている人では、人に優しくしている方が、結果的にいいことがある……というのは、こうした人間の心理が働いていることに理由があります。

普段から人に優しくしていると、たくさんの「チャンス」 が生まれます

多くの人が、自分の経験知として「優しい人の方がいいことがあるだろう」と知っているでしょうが、「情けは人の為ならず」や「返報性の法則」の意味をきちんと理解しておけば、漠然とした感覚ではなく、合理的に判断できると思います。

人に優しくできる人は、周囲の人から信頼されるため、一緒にいて気持ちのいい人たちが自然に集まってきます。

相手の幸せを喜べる人は、周りの人から慕われるため、親切にしてもらえることが多くなります。

会社でも同じで、部下の面倒見が良かったり、成長を喜べる上司は、信頼されるだけでなく、部下の成長を促すことにつながります。

部下思いのリーダーがいるチームには、成果を出しやすい環境が生まれますから、打算的にならなくても、結果的には自分のメリットになるのです。

私たちはたくさんの人に囲まれて生活していますから、別に見返りなど求めなくても、日ごろから人に優しくして接していれば、たくさんのチャンスが生まれます。人に対して意地悪をしたり、威張ったり、冷たくしていると、自分の周囲から次々に人が離れていきますが、優しい人や親切な人のところには人が寄ってきます。

チャンスというのは、人によって「もたらされる」ものなのです。

一人寂しく晩年を迎えないためにも……

これは精神科医というより、個人的な人生観になりますが、私は人に優しく接したり、できるだけ親切にしよう……と思っています。

毎日、さまざまなことが起こりますから、必ずしも思い通りにいかないこともありますが、基本的には「優しい人」でありたいと考えています。

これまでを振り返ってみても、人に対して偉そうにしたり、冷たい態度を取っている人で、ずっと幸せそうな人には会ったことがありません。

どんなに社会的な地位が高かったり、大金持ちの人でも、偉そうな態度を取ったり、人に対して冷たい人のところには、誰も寄りつこうとしなくなるのです。

高齢者専門の精神科医として、寂しい最期を迎えた年配の方々をたくさん診てきた経験から、自然とそう考えるようになったのだと思います。

私は、たくさんの本を出すことを含めて、数多くの「打席」に立ちたいと思っていますから、できるだけ打席を減らしたくありません。

根底にあるのは、「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」的な考え方で、どんなことでも、やってみなければわからない」と思っています。

こちらから積極的に人との出会いを求めるようなことはしませんが、来るものは拒まず、できる限り穏やかに人と関わりたいと考えているのです。

現在は出版社からの執筆依頼が相次いでいますが、この先はどうなるかわからず、落ち目になることだってあると思います。

すべての依頼を受けることはできませんが、偉そうな態度で断るのではなく、「今はとても忙しくて、お受けできないんです。もう少し暇になれば、その仕事を受けられるかもしれません。そのときに、ぜひやらせてください」みたいな対応を心がけています。

偉そうな断り方をしていたのでは、二度と依頼が来なくなって、自分で打席を減らすことになってしまうのです。

文/和田秀樹 画像/shutterstock

『なぜか人生がうまくいく「優しい人」の科学』(クロスメディア・パブリッシング(インプレス))

和田秀樹 (著)

2024/2/2

1,628円

208ページ

ISBN:

978-4295409328

【発売から1週間で重版決定!】毎日を明るい気持ちで、機嫌よく、前向きに過ごすためのヒントをまとめた1冊!

▼人に優しくできれば、人生が回り始める

あなたは、自分のことを「優しい人」だと思いますか?

こう質問されて、「はい」と即答できる人は、それほど多くないはずです。
ほとんどの人が、「人には優しくありたい」と思っていても、日ごろの言動を冷静に振り返ってみると、意外に優しくない自分に気づくのではないでしょうか。
人に優しくする際には、さまざまな心理や感情が働いています。相手に対する「思いやり」や「好意」の気持ちだけでなく、「打算」や「自己防衛」といった損得勘定が働いていることもあります。

相手に嫌われたくないと思って、表面的な言葉で取り繕う優しさもあれば、嫌われることを覚悟で進言する優しさもあります。
価値観や考え方が多様化した現代社会では、何が本当の優しさなのか、ハッキリと明確にはわからないような状況になっています。
人に優しくするというのは、意外と複雑で、思い通りにいかないものです。

人に優しくすると、自分の気持も良くなることで、脳内にセロトニンやオキシトシン、ドーパミンなどの神経伝達物質が分泌されて、心身にいい影響が生まれることが科学的に明らかになっていますが、毎日の生活にもさまざまな好循環をもたらしてくれます。
しかし、私たちの生活には、人に優しくなれない要素がたくさんあります。
物価高、上がらない給料、度重なる増税などによって、世の中全体がギスギスとしていますから、どうしても自分のことだけを優先して考えるようになり、周囲の人を慮るような精神的なゆとりを見失いがちです。
こんな時代だからこそ、「優しさとは何か?」を考えることで、その意味と意義を改めて見つめ直す必要があると感じています。

人に優しくできれば、人からも優しくしてもらえます。
優しい人に囲まれると、たくさんのいいことがあります。
たくさんのいいことがあると、人生がうまく回り始めます。
人生がうまく回り始めれば、もっと人に優しくすることができます。

この本をお読みいただいて、毎日を明るい気持ちで、機嫌よく、前向きに過ごすためのヒントを見つけてほしいと思います。

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