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刑務所アイドルPaix²(ぺぺ)が、経済的に苦しくても、恋も遊びも華も捨てて活動を続けた理由「出所後にもがきながら頑張っている元受刑者がいることを伝えたい」

集英社オンライン / 2024年4月13日 10時0分

刑務所内でのライブは500回以上。受刑者のアイドル「Paix²(ぺぺ)」がプリズンコンサートで披露する唯一無二の音楽〉から続く

プリズンコンサートの常連で、受刑者たちのアイドル的存在として活動する音楽ユニット「Paix²(ぺぺ)」。しかし、今のように安定的に活動するまでには、多くの苦労や困難があった。それでも“めげず”に続けてこれたのはなぜか。Paix²の活動を通して、伝えたいことは何か。Paix²のメンバーであるまなみさんとめぐみさんに聞いた。(前後編の後編)

恋も遊びも華も捨ててPaix²の活動を続けた理由

──活動を続けていくなかで苦労したことや大変だったことは何ですか?

まなみ 経済的なやりくりは大変な部分もありましたが、ファンの方の中にお米を生産されている方が何人かいて、お米には困らなかったですね(笑)。



また活動を始めた頃は、鳥取と東京の間なら、高速道路を使わずに下道を使って移動していました。当時は夜22時以降になるとバイパスが無料になったので、それをうまく活用しながら交通費の節約を行なっていました。

プリズンコンサートで交通費や宿泊費の補助が出るようになったのは、2015年くらいなので、それまではお金を何とか工面しながら活動を行っていました。一時、本当に辛くなって辞めたいと思ったこともあります。

そこでマネージャーに相談し、1か月ほど実家で休暇をいただいたんですね。でも、いろいろと思い返すなかで、やっぱりステージで歌うことが好きなんだと。普通のライブとは違うプリズンコンサートだからこそ、そこには何モノにも変え難い「やりがい」がある。

そう再認識したこともあって、Paix²での活動を続けることになりました。

めぐみ 私たちは鳥取出身なので、宿泊費を少しでも浮かすために実家を拠点にしながらライブ活動もしていました。また、私の場合は出費を極力減らすために、ランチや飲み会といった交友関係もあまり持たず、ひとりで過ごすことを意識していたんです。

今よりも若かったので、恋したい、遊びたい、華やかに過ごしたいといった願望もありましたが、そんな欲は全部捨て去るように心がけました。先ほどもお話したように、学びを深めていくことに集中したかったので、辛いとか苦しいとか、そういう気持ちにはなりませんでした。とにかく結果を出したかったんですよ。

「カツカツでやるしかないのは、実力がないから」と捉えられた分、悲観的にならずに現状を前向きに考えることができたわけです。

プリズンコンサートを続けていくと、さまざまな“出会い”があります。受刑者の方はもちろん、社会復帰した出所者の方や周りで応援してくれる方、メディアに出たことでPaix²のことを知ってくれた方など、毎年いろんな出会いがあるからこそ、とにかく学ぶことが多くて。それがあって、Paix²の活動を辞めずに続けてこれているんだと思います。

受刑者時代のホリエモンも絶賛「Paix²の活動はビジネスチャンスがある」

──受刑者の方からいただいたメッセージやライブでの思い出など、これまでの活動の中でのエピソードをお聞きしたいです。

まなみ 
初期の頃の話なんですが、刑務所の中という独特の緊張感を味わいながら、ライブをやっていたのは印象的な思い出ですね。ほかにも、とあるプリズンコンサートでは受刑者の方が看板を手書きで作ってくれていたんですよ。本番中に「看板を作ったのは誰ですか?」とふわっと投げかけたときに、一人の人が挙手をして。でも、それが嘘だったんですよ。

そこで思わず「嘘ついたら罪がまた一つ増えますよ」と口を滑らせてしまったんです……。スタッフサイドからは血の気が引くのをすごく感じて。「これはしまったな」と思っていたら、思いのほか会場が大ウケしたんです。

――刑務所内では珍しい光景でしょうね。

「こういう“ブラックジョーク”もありなんだ」と思うようになってからは、もう少し突っ込んだ言葉も言えるようになりましたね。刑務所に勤めている方からも「次回はこういう言葉を使ってみたら笑いが取れるよ」と“隠語”を教えてもらったりして。そこから「願箋」や「報奨金」といった刑務所の隠語をトークに交えるようにしているんですね。

また、ホリエモンさんが長野刑務所に収容されていた時期に、私たちのプリズンコンサートを見てくださっていたことを、後から知りました。

「Paix²の活動はすごくビジネスチャンスがある」

そう言ってくださるんですが、なにぶん私たちのビジネスセンスがなくて(笑)。うまく期待に応えられていないなと思うと、もったいないなと感じています。

めぐみ 受刑者の方が家族と面会するときに、「私の代わりにPaix²のファンクラブに入ってほしい」と言ってくださる方がいらっしゃいました。Paix²のために何かできることは何かと考えてくれた結果、このような行動をしてくださったのは、素直に嬉しい気持ちになりましたね。

社会で頑張っている元受刑者の存在を知ってほしい

──来年、デビューから25周年を迎えます。最後に今後の展望や目標を教えてください。

まなみ 私たちは地元である鳥取県の観光大使を務めているので、デビューから25周年目のタイミングには、地元の大きなホールでコンサートを開催したいですね。ファンクラブの中には、一般の方に加えて元受刑者の方もいらっしゃいます。ライブとかでファンの方が集う機会があると、なかには「かつて自分が刑務所に入っていた」ことをカミングアウトする場面もあるわけです。

今の世の中はまだまだ、前科がある人が暮らしていくのは一定の厳しい状況があるなかで、Paix²のファンはそうした人への理解があるんですよ。過去は罪を犯してしまったけれど、今は社会復帰して頑張っているのを認めてくれているわけですね。現状では、初犯の数が減少している一方で、再犯を犯す累犯者の数が増えている原因のひとつに「就職できないこと」が挙げられています。

私はPaix²の活動を通して、出所後にもがきながら頑張っている元受刑者の方がいることを世の中のもっと多くの人に知ってほしいなと思っています。

めぐみ プリズンコンサートをやるようになって、デビュー前に私が想像していた以上のさまざまな結果を得られたと実感しています。今後も地道に活動していけば、新たな仕事との出会いやPaix²の方向性を決めるきっかけが見つかると信じています。これからも日々精進しながら、活動していきたいですね。



取材・文/古田島大介 撮影/村井香

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