〈批判殺到の子育て支援金〉「月500円弱」は大ウソ…年収200万世帯からも徴収へ「韓国では30兆円溶かしても成果なし」答弁タジタジ 加藤こども相の能力にも疑問符
集英社オンライン / 2024年4月11日 11時0分
岸田政権が「異次元の少子化対策」を掲げる、子ども・子育て支援法改正に絡めての、年収別の負担額の試算を示した。年収400万円の人なら月650円、年間で7800円もの負担増になり、さらに上がる可能性もある。日本を上回る少子化が進む隣国の韓国では少子化対策として、15年間に日本円にして30兆円超を投入したがさしたる成果はなく、大金をドブに捨てながら子どもは減り続けている。
年収400万円で年間7800円の負担
岸田政権が今回集める金をもとに拡充するという少子化対策は、子を持つ夫婦を対象とするものに偏重し、若者が結婚や子どもを持つことをためらう環境を変えられず失敗した韓国と同じ道を行くのではないかとの憂慮もある。
岸田首相は2月の国会で「粗い試算でいえば2028年度の拠出額は、(医療保険)加入者一人当たり月々の平均は500円弱と見込まれている」と口にしていた。
「しかし、これは支払い能力がなく、親の扶養に入っている子どもにまで払わせて平均すればいくらになるかという前提のおかしな算出額で、一人当たりの負担額を少なく見せるためのトリックです」(野党関係者)
実際にはいくらの負担増になるのか。
4月9日に政府がまとめた年収別の拠出金額によると、初年度の2026年度から段階的に引き上げられ、2028年度には年収200万円の人は月額およそ350円(年間4200円)、400万円の人はおよそ月額650円(年間7800円)、600万円の人はおよそ1000円(年間1万2000円)、800万円の人はおよそ1350円(年間1万6200円)、1000万円の人はおよそ1650円(年間1万9800円)としている。
「夫婦がそれぞれ年収400万円の共働き家庭なら年間の負担増は1万5600円になります。政府はこうして徴収した金で、支援拡充のための“子ども子育て支援金制度”を設けるとしており、支援金制度の規模は2026年度は6000億円、27年度は8000億円、28年度以降は1兆円になると説明しています。
ただ加藤鮎子こども政策担当相は『正確な試算は難しいが、参考になるものとして令和3年(2021年)実績の総報酬で機械的に計算した』と話し、見通しの正確性について逃げを打っています。加藤氏は国会で、負担額が将来上がるのではないかと聞かれ『法律の建てつけ上、可能性はある』と認めています」(社会部記者)
政府は少子化対策で、
①児童手当の所得制限を撤廃し対象を18歳まで広げる
②両親がともに14日以上育休を取得すれば最長28日間は手取り収入が減らないよう育児休業給付を引き上げる
③妊娠・出産時の10万円給付
といった施策を行なうと発表している。
専門家も「本来は税で対応すべき」と非難
「このために前述の財源が必要だと政府は説明しており、社会保険の徴収額を増やして『子ども子育て支援金制度』を創設するとしています。しかし、子育てをしない人や、すでに子育てが終わっている人を中心に、自分や家族の病気やケガに備えた健康保険で収める金が少子化対策に使われるのはおかしいとの声もあります 」(政治部記者)
4月9日の国会では参考人の専門家からも「本来は税で対応すべきものだ。理論的にまったく正当化されない財源が投入されようとしている」(西沢和彦・日本総合研究所)との指摘が出た。
「岸田首相は防衛費増額で大幅な増税を行なうと表明したときに“増税メガネ”と非難されたことがトラウマになっており、増税ではなく社会保険の上乗せという手に目をつけたとみられています。しかし社会全体で子育てを支援するというなら正々堂々と税金で財源を集めるのが筋だという声は根強い」(政治部記者)
少子化対策をうたいながら、結婚も出産も困難に思えるような年収200万円という低所得者からも徴収することに「貧乏な者からも子育て支援を名目にカネを取るというのか」(20代女性)と怒りの声が上がっている。
「岸田首相は『歳出改革と賃上げで社会保障の負担率を抑え、全体として実質的に負担が生じないようにする』と説明していますが、現実には一人ひとりに負担増が生じます。物価高続きで名目賃金に物価上昇分を加味した『実質賃金』は、最新の2月分の毎月勤労統計で23ヶ月連続の減少となりました。賃上げで負担はなくなるとの首相の言葉は多くの人には詭弁にしか聞こえません」(野党関係者)
韓国は巨額の財源を投入も効果出ず
負担が増えても効果が出るなら救いはある。だが問題は、これだけの負担増を負っても成果が得られないのではとの不安が尽きないことだ。
「政府の対策は子育ての負担をいかに減らすか、に焦点が当てられています。しかし、この方向で少子化対策をやって大失敗し、今や『世界で最初に消滅する国』になるといわれるほど子どもが減った国があります。他でもない、隣国の韓国です」
そう話すのは韓国取材経験がある外報部デスクだ。女性1人が生涯に産む子どもの数を示す合計特殊出生率は、日本は2022年に1.26だったが、韓国はさらに深刻で、2023年は0.72。
韓国の少子化の背景には、人口が集中する首都圏での住宅費高騰や、学歴を競い合う風潮がもたらす教育費による家計の圧迫、晩婚化や未婚率の上昇などさまざまな要因が絡まりあっている。もちろん、これまで韓国政府が何もしなかったわけではない。
「韓国では政府が2004年には本格的な少子化対策に乗り出し、2006年から2021年までの15年間に関連事業に280兆ウォン(約31兆5千億円)を投じています。それでも合計特殊出生率は2004年の1.16から下がり続けてきたんです」(韓国紙記者)
日本企業に就職し、日韓双方の社会を知る24歳の独身女性Aさんは「韓国は育児の支援金はちゃんとあるし、子どもが遊べるところも多く、制度的な環境は悪くないと思います。でも本来は結婚する前、子どもを産む前の段階から対策を取るべきでしょう」と話す。
Aさんは子育てに理解がない職場で勤務を続けることをあきらめた姉を見て「韓国で子どもを育てながら仕事をするのは難しい」と考えるようになったといい、政府からの育児支援が充実していても、社会の環境が子育てを受け入れるものでなければ子を育てようとは思わないと指摘する。
政策を理解できていない担当大臣の加藤鮎子氏
少子化がここまで進んでしまった韓国社会を見て「私が子をひとりもうけても解決にならない。その子が20年、30年たって今の私の年になったとき、状況はもっと悪くなっているでしょう」(独身男性Bさん・22歳)といった意見や、「ここまでくれば対策をいくらやっても現実的に解決することはできないでしょう。対策によって社会の衰退の速度を遅らせることはできるかもしれないが、どうせ止まらない」(独身男性Cさん・37歳)など、人々の間ではあきらめ感が漂っている。
「実は日韓は、10年以上前から少子化対策の担当閣僚が往来するなどして対策や経験をシェアしてきましたが、どちらも少子化に歯止めがかけられていません。特に韓国は近年合計特殊出生率がさらに減少したことで『子育て支援』の強化には効果がないことがほとんど実証されました。
若者が家庭や子を持っても安心して暮らしていけるという社会に変えられなければ、日本も韓国と同じ姿になるのではないかと危惧します」(前出、外報部デスク)
低支持率に悩む岸田政権は子育て支援を政権浮揚策の目玉にする考えだが、担当大臣の加藤鮎子氏の国会での不安定な姿は政権の本気度を疑わせる。
「答弁を求められると『えー』『あー』と言いながら答弁席で資料をめくり続け、要領を得ないことを言うなど、政策を理解できていないことが透けて見え、首相やほかの閣僚が助け舟を出しています。首相がかつて活動をともにした故・加藤紘一氏(元官房長官)の娘で2児の母だから子ども政策担当相に抜擢されたとみられていますが、これほどの重要政策を任せるには経験不足が明らかです」(政界関係者)
「少子化対策は最重要課題」と政府高官は強調しているが、これら対策が効果を生むのかどうか、先行きは暗そうだ。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
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