アメリカで1年で7万人を死去させた恐怖の薬物「フェンタニル」とは…日本ではフィットネスブームをきっかけに「ステロイド」が危ない?
集英社オンライン / 2024年4月27日 20時25分
世界中を駆けめぐる薬物戦争、その内幕とは。都市伝説系YoutuberのNaokiman Showと、危険地帯ジャーナリストの丸山ゴンザレスが、ヒトコワ=人の怖さを深掘りした『ヒトコワ都市伝説』より一部抜粋、再構成してお届けする。
フェンタニルをめぐる米中戦争
丸山 フェンタニルという薬物が北米で社会問題になっているというのはご存知ですか?
ナオキマン 確か元々は鎮痛剤ですよね。アメリカでその乱用が問題になっているというのは聞いたことがあります。
丸山 ヘロインと同じオピオイド系の薬剤なんですが、その過剰摂取で2021年にはアメリカで7万人が亡くなったと言われています。
僕もその現状を取材したくてカナダに行ったんですが、そこで出会ったフェンタニルの常習者は、お医者さんでした。末期がんの患者だったんですが、家族に苦しむ姿を見せたくないから鎮痛剤としてフェンタニルを服用していた。
もちろん医者だからそれが麻薬だとはわかっているんだけど、のたうち回る姿を家族に見せるよりはこのままやすらかに死ぬほうがいいと。
ナオキマン つらいですね。でも、みんながみんな、医療きっかけではないですよね。乱用者が増えたのはなぜなのでしょう?
丸山 一つには、安くて手に入りやすいからでしょう。快楽目的の若者が出会い系アプリなんかを通して集まって使い、広まっていっている、と言われています。そういう連中はフェンタニル単体ではなく、動物用鎮静剤のキシラジンと混ぜて使ったりもします。
ナオキマン キシラジン入りのドラッグは、ゾンビドラッグとも呼ばれていますね。ゾンビのように体に穴が開き、ボロボロになっていくという。
丸山 そうです。キシラジンはヘロインやコカインと併用されることもあるようですが、多いのはフェンタニルのようです。有効な治療薬がないから、アメリカ政府も警戒しています。
ナオキマン フェンタニルが流行っている背景にはどんな事情があるんですか? ニャオペの常用者のような、つらい事情を抱えた人ばかり、ってわけではないですよね。
丸山 実は中国が国策として、アメリカを弱体化させるために送り込んでいるという話があるんです。
ナオキマン え! コロナの話にもつながりそうな内容ですね。
丸山 そうなんです。フェンタニルを生産しているのはメキシコのマフィアなのですが、その原料は中国産です。アメリカやメキシコでそのドラッグはどこ原産か?って聞くとかなりの割合で中国産なんですよ。
アメリカは規制を強化したいけど、米中が政治的に対立する時期には、うまくいかないこともある。対立が表面化している近年は、うまくいっていない時期ですね。
アメリカの司法省は中国企業8社と中国人12人を、フェンタニルの密造に関わったとして、訴追しています。2023年10月のニュースなので、まだこれからどうなるかはわかりませんが、今の中国とアメリカは麻薬戦争と言ってもいいくらいバチバチの関係です。
日本も他人事ではない?
ナオキマン 日本ではフェンタニルの問題は起きてないんですか?
丸山 今のところは大したことないですね。元々日本って、同じオピオイド系のヘロインとか全然流行ってないんですよ。覚醒剤と大麻が大半を占めています。今は若い層を中心に、大麻が増えていますね。
ナオキマン 確かにヘロインって聞かないですね、あんまり。
丸山 確かな理由はわからないのですが、日本人は働き者だから合わないんだろうって言われていました。でも、日本社会もどんどん不安定になってきてますよね。働きたくないっていう人が増えれば、ひょっとしたら今後はわからないですよ。
中国がアメリカと同じように日本を弱体化させたいと考えたら、意図的に送り込んで日本でフェンタニルを流行らせようとしてくるかもしれない。そうなったら、日本人はすぐダメになるかもしれません。
ナオキマン ええ……めちゃくちゃ怖い話ですね。
ステロイドの危険性
丸山 フェンタニルもそうですが、個人的に日本で今後怖いなと思っているのがステロイドです。
ナオキマン スポーツ選手のドーピングなどで使われる薬物というイメージがありますが。
丸山 そうです。いわゆる筋肉増強剤というやつです。そもそも筋肉というのは筋トレで筋繊維にダメージを与えて、それが回復するときに元々よりも強く大きくなるという仕組みなのですが、ステロイドはこの回復をより強力にします。
ナオキマン 同じトレーニングをしていてもより大きく筋肉が育つわけですね。でも、ドーピングとされているということは、何かしらの副作用があるということですよね。
丸山 そうです。簡単に言ってしまうと、ホルモンバランスを変える薬物で、副作用として鬱病になったり、自殺願望を引き起こしてしまうことが指摘されています。
メンタルが落ち込んでいくとトレーニングにも支障が出ますから、それを補うために興奮剤を併用する人もいて、そうなると今度は心臓に負担がかかって心不全なんかのリスクも出てきますね。
ナオキマン なるほど。たまにそういった薬物で亡くなられるアスリートの方というのも耳にしますよね。
丸山 過去に有名なボディビルダーの方が自殺をされた際にこのクスリを使っていたのではないかと言われることもありました。プロレスの世界でも、明らかに試合中の動きや言動がおかしい選手がいて、先輩が問い詰めたところ強くなるためにステロイドをしていたと。
そしてメンタルが弱い選手だったので興奮剤も使っていたとなって、その方は団体をクビになったんですが、その少しあとに心不全で亡くなられています。
ナオキマン そうか、体は鍛えられるけど心にダメージがいくんですね。
丸山 そうです。ただ、ボディビルダーの方々などはそこに人生を賭けているわけですよね。体づくりというのは終わりがないですから、どれだけ鍛えてももっともっととなる世界です。
ナオキマン 確かにそこは普通のスポーツともちょっと違うかもしれませんね。
空前のフィットネスブーム
丸山 アメリカなどだとボディビルの大会に出るためにアメリカ中をさすらっているような人たちがいて、そういう人たちはあまりお金もないんです。
だけどちゃんとトレーニングをして筋肉は大きくしなければならない。そうなると健康に長生きするよりも、理想の体を手に入れて活躍して、という「人生太く短く」というような思考になるんでしょうね。
ナオキマン それでステロイドに手を出してしまうと。ただ、そういう大会ってドーピング検査とかがありますよね?
丸山 大会の規模にもよるんでしょうけど、多くの場合は尿の貸し借りをしたりして結構簡単にごまかせるようです。袋に他人の尿を入れておいて、排泄するふりしてぴゅーっと出すんですね。
警察がやるハードドラッグの検査なら出す瞬間もちゃんと確認されますけど、そこまでやらない場合も多いのだと思います。
ナオキマン なるほど。でもなぜこれから日本でステロイドが怖いと思われるんですか?
丸山 日本も今空前のフィットネスブームじゃないですか。
ナオキマン ああ! 確かに。
丸山 自分の体に取り憑かれてしまうのって、何もトップレベルのボディビルダーだけじゃないと思うんですよ。少しでもトレーニングをしたりすると、多かれ少なかれみんなそういう思いは抱くと思います。
そして何より、日本でフィットネスを趣味にする人の多くは、余裕のある人ですよね。
ナオキマン 確かにそうですね。ジムに行ったりプロテインを買ったりするのはある程度お金がいりますから、ある程度は豊かな生活を送っている人じゃないとできない。知り合いの経営者などにも、最近パーソナルジムに通い出したという人は多い気がします。
丸山 しかもプロのボディビルダーの方々よりそういった薬物の知識は持ってないわけです。「知識がないけれどお金を持っている人が集まっている市場」となれば、そこに目を付ける悪い人間が現れるほうが自然だと思いませんか。
ナオキマン 言われてみれば、すでに健康を謳っているサプリメントでその根拠がなかったり成分がよくなかったりで炎上するというのはちょくちょく見かけますからね。
丸山 ステロイドなら筋肉を大きくするという効果は間違いなくあるわけですからね。それが余計に危ないと思っています。
文/Naokiman Show 丸山ゴンザレス
〈フィリピンの「山下財宝詐欺」、日本の「新紙幣詐欺」…詐欺師が流行に敏感なワケとは? 丸山ゴンザレス「裏社会の秩序みたいなものも、もう崩壊していっている」〉へ続く
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