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<重要指名手配犯が死亡>「人に迷惑をかけ続けた」”前歯のない男”が逃亡の末、石川の山中で死亡「とにかく働くことが大嫌いで自分の金では絶対に酒を飲まない」「ヤクザ映画にでてくるような人で怖かった」と近隣の声も

集英社オンライン / 2024年5月1日 11時0分

仕事は長続きせず、知人の家に転がり込んでは金をせびる……そんな”迷惑男”は、同居人の命を奪った末、人知れず、石川県の山中で自らの命を絶っていた――。警視庁捜査一課は、殺人容疑で平成17年(2005)から重要指名手配中だった上地恵栄容疑者=(犯行当時49)=の死亡が確認されたと発表した。事件後まもなく見つかった変死者と、犯行現場に残されていた血痕を照合し、同容疑者のDNA型と指紋が一致したことから特定したという。

〈“おぬし”が口癖だった〉2024年1月に自ら名乗りでた後死亡、“うーやん”と呼ばれ近隣から慕われていた桐島聡容疑者の近影と2月に逮捕された金成行容疑者 

「なかなか部屋を出ていかず、金をせびられ、電気代や食事代がかさむ」

「ようやくホッとしたというか、一区切りついた気分ですよ……」

19年前、悲惨な事件が起きた現場の”跡地”を見つめながら、一人の男性はそう胸をなで下ろした――。

事件が起きたのは、東京都三鷹市の今はなき木造アパートの一室。2005年11月25日午後11時ごろに、居酒屋チェーン店で副店長をつとめていた永野和男さん=(当時53)=が顔や胸を刺されて死亡しているのが発見された。台所には血のついた包丁が置かれていて、永野さんの財布からは現金が盗まれていた。全国紙社会部記者はこう語る。

「事件後、すぐに捜査線上に浮上したのが、指定暴力団山口組系の元組員・上地恵栄容疑者でした。同容疑者はかつて永野さんと同じ右翼団体に所属し、その繋がりで事件が起きる数か月前から永野さんの部屋に転がり込んでいた。永野さんは『(上地容疑者が)なかなか部屋を出ていかず、金をせびられ、電気代や食事代がかさむ』と周囲にもらしていた。さらに現場に血痕が付着した上地容疑者の着衣が残っており、犯行当日も金を無心したが永野さんに断られて、逆上して殺害した可能性が高い」

警視庁は事件翌月の12月14日、行方がわからなくなっていた上地容疑者を殺人容疑で指名手配するとともに、公開手配に踏み切った。これにより全国の警察署や交番、公共交通機関に上地容疑者の「指名手配ポスター」が貼られることになったが、有力な情報はなく、2007年からは事件の解決に結びつく情報を提供した人に最高300万円の懸賞金を支払う「捜査特別報奨金制度」の対象となった。しかし今月26日、事件は思わぬ結末を迎えることになった。

「警視庁捜査1課は、上地容疑者が事件直後の2005年~2006年2月ごろに死亡していたことを明らかにしました。石川県加賀市の山中で2006年3月8日、旅行客の男性が首を吊っている遺体を発見。当時は身元不明の自殺者と思われていましたが、警察の鑑定技術の向上により、犯行現場に残っていた下着と、遺体のデータベースを照合したところ、上地容疑者のDNA型と一致したわけです。さらに指紋も一致したため、山中で見つかった遺体を上地容疑者だと特定しました」(同)

「とにかく働くことが大嫌いで、自分の金では絶対に酒を飲まない」

ゴールデンウィーク直前に日本列島を駆けめぐった衝撃的なニュース。事件発生から20年近くにわたり貼られていた「指名手配ポスター」には、ふてぶてしい表情を浮かべる上地容疑者が映っている。「沖縄出身」「あばた顔」「麻雀好き」「腰痛持ち」などの特徴も記されているが、いったいどんな人物だったのか。事件を取材した社会部記者はこう語る。

「上地容疑者は、前歯がなく笑い声がかん高いのが一番の特徴。さらに知人たちは上地容疑者のことを『とにかく働くことが大嫌いで、自分の金では絶対に酒を飲まない』と口を揃えていた。一時期はチラシ配りのアルバイトなどもしていたというが、基本的に仕事は長続きせず、知人たちの家に転がり込んでは金をせびり続ける。捜査関係者の間では『周囲に迷惑をかけ続けてきた男』とも呼ばれていた」

記者が28日に現場を訪れると、事件があった木造アパートはすでに建て替えられていて、別のアパートが建っていた。近隣住民の男性は、「今は大学生くらいの若者がメインで住んでいるし、あんな事件があったことは誰も知らないんじゃないかな」とつぶやく。
しかし20年以上経った今でも、近隣住民の60代女性は当時についてこう振り返る。

「そりゃ事件が起きたころは大変でしたよ。朝8時ごろに近所のテニスコートに行こうと自宅のドアを開けたら、アパートの前に規制線が張られていて『え、なにがあったの?!』って感じで。マスコミの方も大勢押し寄せてくるような状況だったので、事件が落ち着くまで窓も閉めてましたし、できるだけ外出も控えてました」

「ようやく心の片隅のモヤモヤが晴れた」

この女性は、上地容疑者についても何度か見かけたことがあったという。

「アパートを出てくるときは黒の背広にピシッとしたオールバックの髪型で、まるでヤクザ映画に出てくるような人でした。ガタイもよかったので、いわゆるカタギではない雰囲気でしたね。挨拶とかも一切なくて、燃えるゴミの収集日じゃないのに家庭ゴミを投げ捨てているのを見たこともあって『マナー的にどうなの?』と思いましたが、見た目が怖いのでこちらから声をかけることはありませんでした」

その一方で、上地容疑者は永野さんと近隣住民の男性と3人で、頻繁に駅前の居酒屋に飲みに行っている姿も目撃されており、そんな矢先、事件が起きたという。

「上地容疑者が指名手配されてからは、あれだけポスターも貼られているし『もうこの辺には戻ってくることはないだろう』と思っていました。ここ何年かは主人と『もう(上地容疑者は)亡くなってるんじゃない?』とも話していましたが、やっぱり駅前のポスターを見るたびに思いだしてゾッとすることもありました。だから今回の知らせを聞いて、ようやく心の片隅のモヤモヤが晴れたような気分です」

容疑者死亡という形で、書類送検することで幕を閉じた今回の事件。「指名手配ポスター」を貼られていた人物のなかには、今年1月には「東アジア反日武装戦線」のメンバーで東京・銀座のビルの爆破に関わっていた疑いのあった桐島聡容疑者(70)は自ら名乗り出て確保(殺人未遂などの容疑で書類送検、容疑者死亡で不起訴処分)され、2月には長野県で起きた殺人未遂事件に関わっていたとされる金成行(55)が逮捕されている。

次は誰が捕まるのか、捜査の手は伸びている――。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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