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男子高校生もナプキンを着用。校内の「生理セミナー」で彼らが学んだこと

集英社オンライン / 2022年7月30日 11時1分

学校での生理の学習といえば、一昔前は女子生徒だけが集められて仕組みや過ごし方について教えられるのが一般的だった。しかし今、その常識が少しずつ崩されようとしている。神奈川県藤沢市にある湘南学園では、高校2年生の有志生徒が「男子生徒向けの生理セミナー」を企画した。実際に生理用品に触れ、話を聞いた男子生徒たちにはどのような変化があったのか。本人たちを取材した。

プロジェクトのきっかけは、日常で感じる「ジェンダーの壁」

「男子生徒向けの生理セミナー」を企画した、湘南学園の「Over the rainbow project(ジェンダーを考えるプロジェクト)」は、同学園の高校2年生が中心となって立ち上げたプロジェクト。今回は、プロジェクトの中心メンバーとなる生徒11名と担当教員の奈良先生に話をお聞きすることができた。



――「Over the rainbow project」は、生徒の皆さんが主体となって発足したとお聞きしました。そのきっかけは?

女子生徒A「LGBTQ+に対する偏見が、社会にまだまだ根強くあることに気付いたことがきっかけです。そこから当事者の方々が生きやすい社会になるきっかけになることをしたいと考え、このプロジェクトを立ち上げました」

――LGBTQ+に対する問題意識からスタートしたんですね。

女子生徒A「はい。LGBTQ+やジェンダーギャップについて悩んでいる当事者は湘南学園にもいると思うので、まずは学校内で活動をしたいと思い、その仲間を集いました。

そこでみんなとジェンダーについて広く話し合っているうちに、まずは生理について女子はもちろん、男子も学べる場を作ったらどうかということになり、今回の生理セミナーを企画しました」

――女子だけではなく、男子も学べる生理セミナーはとても珍しいですよね。

女子生徒A「そうかもしれません。当日はサニタリーショーツブランドを展開する『Be-A Japan』の方をお招きして、生理についてお話いただきました。

このセミナーは強制参加ではなく有志の生徒を募っての開催だったので、誰も来なかったらどうしようという不安はありました。けれど、実際には教室がいっぱいになるほどの男子が来てくれました。多くの男子が生理について関心をもって参加してくれたのは、とても嬉しかったですね」

「実際にナプキンをつけてみた!」セミナーを通して男子生徒が学んだこと

セミナーで、生理用品を手に取る男子生徒(湘南学園提供)

――男子の皆さんは、このセミナーを受ける前と後、心境の変化や驚いたことなどはありましたか?

男子生徒A「セミナー前も、保健体育の授業で生理の仕組みや『なぜ生理があるのか』ということは知っていましたが、生理中の具体的なことはほとんど知りませんでした。セミナーでは、頭痛や腹痛などの生理の辛い部分を知ることができました」

男子生徒B「僕も、辛いんだろうなということはぼんやり思っていましたが、今回のセミナーを受けて具体的な部分を知り、『何かしてあげたいな』という気持ちになりました。あと、実際に生理用品に触れる機会もあり、吸水面に水を流す実験も行ったのですが、生理用品の吸水量に『こんなに吸うんだ』とびっくりしました」

男子生徒C「PMS(月経前症候群)という言葉も初めて知り、生理中だけではなく、その前後にも痛みや体調不良がある場合があることに驚きました。(生理中の女性に)自分から声をかけるというのは少し照れくさいですが、気が付いたら優しくしてあげたいです」

――今回、実際にナプキンを着けてみた方もいるそうですね。

男子生徒A「はい、僕です(笑)。ナプキンに水を含ませ、その上にハンドクリームを塗ったものを当てて過ごしてみました。

想像より大変だなというのが一番の感想です。つける前は具体的にイメージできていなかったのですが、着けて歩いたりジャンプしたりしてみたら思った以上に違和感がありました。

それから、何よりも大変だなと思ったのはムレです。ずっと濡れている感触があって、快適ではないことを体感しました」

生理について学んだことや、生理用品をつけてみた感想を話してくれた(湘南学園提供)

女子にとっても新しい生理との付き合い方を知るきっかけに

――女子のみなさんは、男子のみなさんが学んでいる姿を見てどう感じましたか。

女子生徒A「今回のセミナーは同時刻に男女分かれて行ったので、後からその様子などを映像で見たのですが、積極的に参加してくれている姿を見てとても感動しました」

――女子のみなさんも、セミナーを通して気付くことや新しい発見はありましたか。

女子生徒B「当日はいろいろな生理用品に触れてみる時間がありました。女子の中にはタンポンを使ったことがないという子がいましたし、私自身知らなかった新しい形の生理用品を知ることができました。自分たちのことではありますが、生理との付き合い方について新しい発見や出会いがあったと思います」

生徒の活動から気付く、大人がもつ固定概念

――このプロジェクトやセミナーを通して、先生から見て生徒のみなさんに変化を感じますか?

奈良先生「よい意味であまり感じないですね。というのも、生徒は私たち大人よりも性別で人を区別する意識がなく、新しいことを知ったからといって態度や接し方を変えるということがなかったんです。生理について学んだことで、シンプルに『相手が困っていたら何かしてあげたい』『寄り添いたい』という気持ちを持てたようでした」

――実際に触れたり体験したりしたことが、そうした思いをもつことにつながったのでしょうか。

奈良先生「そうかもしれません。この柔軟さは大人も見習うべき点だと思います。

実は生理セミナーの後、セクシャルマイノリティの方をお招きしてLGBTQ+についての講演をしていただきました。こういったセミナーを重ねてLGBTQ+ことや体のことについて知識を増やしていく活動を素晴らしいと思うと同時に、これからの社会に目を向ける姿は大変頼もしいと感じています」

取材に応じてくれた「Over the rainbow project」メンバー(湘南学園提供)

ジェンダーや生理について、学ぶことが当たり前になってほしい

――みなさんの多くが高校2年生とお聞きしましたが、今後もこの活動を続けていきたいと考えていますか?

女子生徒A「はい。今回の生理セミナーは2年生のみを対象にしていましたが、今後は全学年が受講できるようにできたらいいなと思っています。

このプロジェクト自体も、最初は同学年(高校2年生)のみでメンバーを構成していましたが、現在は中学3年生(中高一貫校のため)や高校1年生など、後輩の参加も増えています。まだどうなるかわかりませんが、今後も活動をつないでくれたら嬉しいです」

――みなさんの代で活動や思いが途切れることなく続いてほしいですね。

女子生徒A「はい。私たちは活動の目標として『学校に生理用品を設置する』ことを掲げています。実は今、学校にそのお願いを提出していますが、どうなるかはまだ審査中です(取材後、学校の協議会によって設置が決定)。

もし通ったとしたら、一時的なものや私たちの在学中だけでなく、学校の設備として当たり前になって欲しいなと思います」

――学校として、先生はいかがですか。

奈良先生「このプロジェクトに関わらず、ジェンダー平等が当たり前で、みんなが安心できる学校でありたいという思いでいます。

実際、生徒の活動や柔軟で新しい考え方に心を動かされている大人もたくさんいます。
まずはジェンダーという話題に関心をもち、発信や活動を続けることに大きな意味があると思います」

オープンキャンパスなどで学習の成果を報告している(湘南学園提供)

プロジェクトメンバーは積極的にセミナーや講演を企画するとともに、関連書籍や「男性のメイクアップ」など、ジェンダーに関する事柄を多面的に校内で紹介・掲示している。

彼らの活動が特別なことではない社会こそが、活動の最終到達地点なのかもしれない。

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