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まさか1年以上引きずるとは。熱中症は怖い、と心底感じた魔の3日間

集英社オンライン / 2022年8月11日 15時1分

集英社オンライン編集長の、お仕事メイン、ときどき日常な、ブログともいえない雑文たち

35度以上の日は「猛暑日」と呼ぶそうだ。
日射病ではなく、いまや熱中症だ。
いったいいつから日本の夏はこんなことになってしまったのだろう。

毎日のように発せられる熱中症アラートやお天気アプリの真っ赤な太陽マークを見ると思い出す経験が私にはある。
いや、思い出すなんて生易しいものではない。
3年前の熱中症経験は忘れようったって忘れられないものだ。

まさか熱中症による体調不良を1年以上もひきずり、その後も繰り返すことになろうとは。

知識も備えも万全だったはず

激しい暑さのもとで起きる、頭痛、めまい、吐き気、ふらつき、動悸…ひどくなると、倒れたり、寝込んだり、果ては死に至ることも…それこそが恐ろしい熱中症だ。



仕事柄、こうした情報はよく入ってくるし、十分気を付けていたつもりだった。けれど、3年前の2019年8月、私はおそらく熱中症でダウンしてしまった。
おそらく…とあえて記すのは、その経緯と経過がちょっと普通ではないからだ。

目から入る紫外線も結構な負担になるのでラウンド中はサングラスもマストだ


その日は休日で、私は千葉県のゴルフ場でプレーをしていた。
この日の最高気温は32度。終日ピーカンというわけではなく、ラウンド中の半分は曇っていて、途中スコールが降った。そんなお天気だった。
私のゴルフ歴はかれこれ15年以上で、真夏も真冬もラウンドする。
けれどここ数年の真夏の暑さは尋常ではないので、その準備には万全を期していたつもりだった。

つばのある帽子をかぶり、気化熱を利用する涼感ウェアを着用し、なるべく日傘をさす。
水筒にはスポーツドリンクを氷とともに入れ、ハーフで500mlは必ず飲むように。
それ以外にも休憩所では必ず水を飲み、プレーの合間合間には氷嚢で首元や脇を冷やし、塩飴、塩タブレットなども口にする……こうしたことを欠かしていなかった。
もちろんラウンド前日は早く寝ることを心掛けるし、深酒もしない。
そもそも飲み会やハードな残業のありそうな翌日にラウンド予定はいれないようにしている。
その日もこうしたコンディションでプレーを終え、千葉から車で帰宅。車中では友人と楽しく会話し、自宅についてもピンピンしていた。
渋滞回避のために、ゴルフ場では体を拭いただけで出て来たので(本当の猛暑なら気持ち悪くてとてもこの状態で帰宅はできない。だからやっぱりこの日はそこまで暑くはなかったのだと思う)、帰宅してすぐにお風呂を溜めて入浴。お風呂上りのビールが楽しみだな〜、なんて呑気に思っていた。

が……まさにそのお風呂上りに突然体調がおかしくなった。

ぐるぐるとめまいがして、足がフラフラする。力が入らない。
「のぼせたかな? そんなに長湯はしてないんだけどな」とスポーツドリンクをぐびぐび飲んで、ソファに横になってみる。
そして、そのまままったく起き上がれなくなってしまったのだ。

時間が経つほどおかしくなっていく体調。
起きようとするとめまいがする。
体がだるいのになんだか胸がドキドキする……これはなんかおかしい。
寝転びながら、一生懸命水分を摂り、ダンナにアイスノンを持ってきてもらい、首や脇を冷やしてみた。
そう、このあたりから、もしかして熱中症なのかも?と思い始めたから。

大丈夫、熱中症だとしたら対策はあっている。これまでの知識を総動員して、気持ちを落ち着かせようとする。
でも、何をしてもいっこうによくならない。

病院……という言葉が頭に浮かんだ。
休日の夜7時、しかもお盆……今からどこにいけば……。
幸い、うちの近所には大きな救急病院がある。そこに電話して診てもらえないか聞いてみようか、とダンナと相談していたら、ふとももがけいれんし始めた。

!!! これはヤバい!
絶対、おかしい!

対策を講じても状態に改善が見られないときはただちに医療機関へ。これはどの熱中症対策サイトにも書いてある。迷っちゃいかん。

……で、救急車を呼んだ。
おそらく電話して10分くらいで来てくれたのであろうが、その間にどんどんけいれんは強くなり、ふとももだけでなく、アゴや口もがくがくするようになっていた。

正直に言う。
ものすごく怖かった。
不安で辛くて、ただただ怖かった。

トータル1リットルの点滴

その後、救急病院に搬送され、すぐに点滴を500ml。
その間に血圧、心拍数、血液検査までしっかりしてくれた。
その結果、熱中症による影響で内臓が大きなダメージを受けているような数値は出ていないので、大事ではないであろうということだった。
点滴のおかげなのか、病院についたという安心感なのか、けいれんも動悸もおさまってきた。
心底ほっとした。よかった、病院に来て……。
そして無事に点滴も終わり、さあ、帰るか、と起き上がる。

実はこの時点で私は、もうすっかり体はふつうに戻っているのだろうと思い込んでいた。
かれこれ4時間近く安静にしているし、点滴もして水分補給も十分だし……と起き上がったとたんに、グラリ、とめまいが。
立てない。

「あの、このベッド、揺れてるんですか?」
と看護師さんに尋ねてみるけど、そんなわけない。
もう1パック点滴をすることになった。これでトータル1リットルだ。
途中、我慢ができなくなって、おトイレにいかせてもらう。
たくさん、尿が出た。これだけたくさん尿が出るということは、もう水分は足りてるということなのかな? 素人考えが頭をよぎる。
こんなとこでひっくり返らないようにしなくちゃな、なんて慎重にズボンをあげながら、ふとトイレの鏡でTシャツを裏返しに着てることに気づいた。
相変わらずのオッチョコチョイぶりにちょっとだけ笑って、少しだけ救われた気がした。
結局、2パックの点滴のあとも、ふらつきが消えることはなかったのだが。

そして、ここからが本当の試練の始まりだった。

安静にして水分が満たされれば治るんじゃないの??

熱中症は軽度であれば、涼しいところで安静にして体を冷やし、水分・塩分補給すれば、すぐに回復する人がほとんだ。
でも、その後2~3日、いや1週間くらい尾を引くことも決して珍しくない、ということを、医師の説明で初めて知った。

「ですが、志沢さんの場合、検査結果からも重篤な状態ではないと判断しますので、帰宅して安静にして、引き続き水分を摂って、それでも改善しない、悪化するようでしたら、いつでも連絡をください」
という医師のアドバイスがなされ、帰宅することになった。かれこれ11時になっていた。

経口補水液を枕元に置いて、その日はそのままうつらうつらと寝てしまったが、翌朝目覚めてみると……全然治っていないのだ。しかも昨日はなかった頭痛までする。もちろんふらつきもだるさも残ってる。

頭痛は熱中症ではよく見られる症状だけど、昨日は痛くなかったのにあとから出てくるなんて……そして、こうしたときの頭痛には頭痛薬を飲んではいけないと聞いていたので、ひたすら経口補水液を飲み、横になっている。会社は欠勤せざるを得ない。

頭痛い、だるい、ふらふらする……こうした症状もつらいけれど、なにがつらいって……
不安なのだ!

こんなに尾を引くなんて、本当にただの熱中症なの? もっと何か違う病気じゃないの? ひとり寝ていると考えるのはそんなことばかり。
食欲ももちろんない。
ふだんきちんと食べている現代人の大人なんて1日くらい絶食しても死にはしないけど、さすがに水分だけではまずい、とバナナとヨーグルトを飲み下す。
歯を磨こうと舌をみたら苔で真っ白。血行も悪いのだろう。
これが熱中症発症翌日、1日めの状態だった。

熱中症と風邪と自律神経

不安を抱えたまま、その日もなんとか眠りにつく。
横になっていてもなんだかふわふわしているようで熟睡はできない。
部屋の冷房は27度設定で、扇風機を遠くにおいてかける。もうずっとこの環境にいる。

翌朝目覚めると頭痛がだいぶひいている。これはうれしい!
でも、ふらつき、だるさは変わらない。
ろくに食べていないからかな?と、バナナや野菜ジュースを口にする。
とにかくぐらぐらして起きていられないので、横になるだけだ。
今日も欠勤するしかない……幸いにもお盆期間だったので、差し迫った約束はなかったけれど、やはり予定外の休みはイタい。

お腹もユルい。
トイレで便を確認したらビビッドなオレンジで、「血便!」と顔面蒼白になるも、朝の野菜ジュースであると思い当たり、ホッ。そのくらい不安なのだ。
この日の晩はうどん半玉に卵を落として、むりやり飲みくだして就寝。
こうして熱中症2日目は終わった。

3日目の朝。
頭痛こそほぼ消えたものの、体調は変わらない。
ここまでくると心底不安になってくる。
私のスマホは「熱中症 回復」「脱水 症状」「熱中症 治らない」といった履歴だらけだ。
よくならなかったらいつでもまた連絡ください、って言ってたよな……そうだ、もう一度病院に行こう。
救急で診てもらった病院に今一度向かった。

結局、点滴1パックと血液検査をもう一度。
医師が言うには
「救急で来たときも、今回もそうなんですが、実は血液検査には強い脱水を示す数値は出ていないんですよ。水分もちゃんと摂っていたんですよね? ただ、暑さで自律神経のバランスが崩れて、こうした体調不良を引き起こしている、それが長引いている、ということが考えられます。あと、風邪をひいていましたか?」。

ひいてました……でも、それは3週間も前で、確かに2週間くらい長引きましたけど、完治してからもう1週間は経っているはず……その旨を伝えると
「夏風邪と熱中症は紙一重、というか、風邪で体力が落ちていて熱中症になりやすかったり、熱っぽくて筋肉が痛いから熱中症かと思ったら風邪だった、ということもあるんですよ」とのこと。
そういえば救急で診てくださった先生も風邪のことを何度も聞いてきていた。そのときはフラフラでちゃんと答えられなかったのだが。

いろいろなことが腑に落ちた。
風邪の病み上がりだけではない。
ちょうど台風10号が来ていて、気圧が不安定な日々。
私は昔から気圧の変化に弱く、台風が来たりすると、一気に頭が重くなってどんよりする。
そんなときに飲む頓服として、軽い安定剤も持ち歩いているほどだ。
そもそも自律神経が不安定になりやすい傾向がある。

つまり、風邪(本人は治ったつもり)で体力が落ちていたところで、スコールの降るような湿度の高い真夏日のゴルフで自律神経が乱れて体の調整がうまくいかなくなってきているところに、火照った体が十分冷えないうちに湯船で温まって、さらに自律神経が乱れ、気圧の変化がそれに拍車をかけて、治りを遅くしている……そういうことだったのか、と自分なりに納得してみた。

「検査の数値は問題ないので、できる範囲で日常生活に戻りましょう。会社にも行っていいですよ。水分はもう十分足りているので、あとは食事で栄養をしっかり摂って。食べ物から摂る水分というのもありますからね」とのお墨付きをもらい、その翌日から、ようやく出社したのだった。

3日間すっかりお世話になった経口補水液。タブレットはラウンド中に舐めていたもの

だが、完全にいつもどおりではまったくなかった。
どんよりとした倦怠感は常にあり、頭がいつもの10倍くらいの重さに感じられて、ぐらぐらする。
ほんのりと吐き気のような不快感があって食欲もない。会議や打合せで力強く話そうとするとくらっとして話せなくなることもしばしばだ。

そしてこの状態は、一進一退を繰り返しながら、ほぼ1年間続いたのだ。

検査を繰り返しても異常なし

その1年の間、ぼんやりとしていたわけではない。
最初に救急でかかった病院に、いっこうによくならない体調を相談すると、たくさんの検査をしてくれた。

めまいのために耳鼻科、循環器科を受診し、総合内科でアドバイスを受け、整形外科で頚椎を、さらには甲状腺やホルモンまで調べてもらった。けれど重篤な何かは出ない。

ここまで体調が悪いと、検査のたびに「何か出てくれ」と思うようになるから不思議なものだ。いっそ病名がはっきりすれば治療ができるのに、この病院めぐりから解放されるのに……と必死だった。

心療内科の受診も勧められ、安定剤も処方される。正直効いているのかどうかはよくわからない。
あとはひたすら規則正しい生活、無理をしない、しっかり栄養を摂る、そのくらいしか出来なかった。

そうこうする間に、3歩進んで2歩下がりながらも、少しずつ復調し始め、年を越え、また夏がやってきた。
そしてまた同じことになった。

熱中症はクセになる?

その日は祝日だったのだが、午前中から取材で出かけていた。予想最高気温は35度。
とはいえ、移動は基本涼しい電車だし、お昼過ぎには仕事を終えて帰宅。
遅めの昼食を摂り始めたところで、それはやってきた。

ものすごい冷や汗と動悸、めまい……「あ、これ、知ってる」。
久しく遠ざかっていたあの体調不良が戻ってきたな、と思った。

買い置きの経口補水液を飲み、体を冷やすも、もう全然起き上がれない。家でひとり。またしても休日……まだ体力のあるうちに、と休日診療の病院に連絡し、タクシーで向かった。いろいろ調べてもまたもや数値は悪くはなく、それでも大事をとって入院することに。
ときは2020年8月。世の中はすでにコロナ禍にあり、こうして対応していただけたことは幸運以外の何ものでもない。

結局、これも熱中症だったのだ、と今となっては思う。
前年の教訓を生かすつもりで、暑さを避け、徹底対策をしていたことがかえって災いして、私は暑さに慣れていなかったのだろう。そんな中、炎天下、取材用の荷物を抱え、日傘も帽子もなしに駅から20分くらい歩き、帰宅するまで水分を摂ってはいなかった。もちろんずっとマスク着用だ。

帰宅して、熱いお味噌汁を飲んだとたん、具合が悪くなったということは、その温度変化に自律神経がまた悲鳴を上げたのだろうと推測するしかない。

強すぎる日差し、高すぎる気温が人間の体に与える影響

長々とこんなことを書いたのは、今さらかもしれないけれど、熱中症を絶対に甘く見てはいけないということを改めて知ってほしいからだ。

3年前の8月、救急車が来るまでの時間、このままどうにかなったらどうしよう、と思うほどしんどく不安で、その後自宅で寝たきりで過ごした3日間は生きた心地がしなかった。
医師も言っていたが、熱中症による人体調不良を長く引きずる人は結構いるし、これをきっかけに自律神経失調症になる人も少なくないそうだ。

熱中症のいちばんの対策は「予防」だ。
自分は知識も対策も万全、と思っていた。実際、それなりにできていたとも思う。でも足りなかった。
風邪っぽい、病み上がり、寝不足、食欲不振、下痢、二日酔い、貧血……ふだんの生活においては小さな不調でも、この猛暑においては、何かひとつでも当てはまったら、そんなときは絶対無理をしたり、羽目を外してはいけない。
そのぐらい今の日本の夏の暑さは怖い。

そしてとにかく「ヤバい!」と感じたら病院へ。
こんな遅くに悪いかも……
休日診療にわざわざ行くなんて……
救急車だなんてもっと具合の悪い人もいるだろうし……
明日まで我慢すれば病院も開くし……

これらすべてが、自分自身の頭をよぎった思いだが、遠慮は無用、迷いは禁物。
そのくらい心して向き合いたいのが熱中症だ。
あれから3年。ようやく体調は平常運転となりつつある。

元気にラウンドできる幸せと健康のありがたさをかみしめるばかりだ

画像/本人撮影

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