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ガーシーが恐れているのは警察ではなかった。74年ぶりに「招状」が出るも日本に戻ってこられない本当の理由

集英社オンライン / 2023年2月2日 17時1分

昨年7月の参議院選挙に初当選後、国会への欠席を続けているNHK党のガーシー(東谷義和)参院議員に対し、国会出席を求める招状が74年ぶりに出された。それでもガーシーが日本に戻ってこられない理由はどこにあるのか。大阪を舞台に生きるスネに傷を持つ男達を描いた『大阪アンダーワールド』(徳間書店)より一部を抜粋、再構成してお届けする。

大阪の夜界と芸能界

2022年、日本の芸能界を総ウツ状態に追い込んだのがYouTuberのガーシーこと東谷義和である。それまで「極秘」であった芸能人の下半身事情を、自分とやりとりしたLINE、写真などの証拠を付けながらSNSで公開。下半身スキャンダルのスッパ抜きは「文春砲」で知られる週刊文春の独壇場だったが、「ガーシー砲」と呼ばれ暴露系の代名詞ともなった。



ガーシーが芸能人の乱倫を知っているのは、自分がストックしている女性と芸能人をマッチングしていたからだ。兵庫県伊丹市出身のガーシーがこの個人ビジネスのノウハウを覚えたのは、夜の大阪だった。キー局が東京にあることから、ほとんどの芸能事務所、レコード会社の所在地は東京だ。したがって芸能人の生活圏も東京ということになる。

2011年、当時、超売れっ子だった島田紳助が引退したが、2022年現在でも島田が取り仕切っていた番組の一部は継続している。ある日、ある芸能人が突然芸能界を去ってもコンテンツがなくなることはない。

華々しく見える芸能人たちは「自分の代わりはいくらでもいる」という強烈なストレスの中で生きている。泳ぎ続けなければ死んでしまうサメのごときものだ。もちろん芸能人は「ヒト」であるから、その日常はストレスフルなものになる。

そんな在京芸能人にとって「大阪の夜」は「オアシス」だ。

大阪は東京に次ぐ2番目の経済圏で毎日放送(MBS=TBS系)、朝日放送テレビ(ABC=テレビ朝日系)、関西テレビ放送(KTV=フジテレビ系)、讀賣テレビ放送(ytv=日本テレビ系)の4つの準キー局が所在。各々が独自のコンテンツを製作している。「ミヤネ屋」(ytv)のように東京に配信している番組もある。

在京芸能人が大阪で収録をする場合、最低でも1泊が必要になることがほとんどだ。しかも関西には週刊文春や週刊新潮の目が届きにくい。こうした事情から、知られざる「乱倫」が行われやすくなるのだ。

「半分素人」の蜜の味とリスク

この特殊な需要と供給があるということで、芸能人の下半身を潤すサポーター「コーディネーター」が生まれる。コーディネーターたちは組織化されているわけではなく、個人事業主として模糊とした集団となっている。こうした事情をよく知るのが、北新地のホスト業界やスカウトなど夜の世界の男衆に幅広い交遊関係を持つ人物だ。在阪時代のガーシーのことも知っている。

大阪では芸能人への「若い供物」に事欠かない事情がある。キャバ嬢から、ほとんど素人の読者モデルに至るまで「東京」に憧れる者が多く、「チャンス」を求めて芸能人との接触を求めるからだ。東京では「半分プロ」相手のお遊びしかできないのに対して、大阪は「半分素人」。その蜜の味はたまらないのだろう。

特に地方の名前が付けられる「○○コレクション」などのミニマムなファッションショーに出演する女性は、格好のターゲットだ。素人の中では美人だけれども、芸能人にはなりきれない。それでも売れたい野心がある。

こうしてマッチングビジネスが成立するのである。

ところがこのシステムは素人が行っているということで、トラブルも多い。東京であれば所属する芸能プロダクションのパワーでチェックや、もみ消しが行えるところが大事になることがある。地下格闘技が組織化されていないのと同様に、仕切る者がいないので火消しができないのだ

2018年6月に、大阪で未成年者に飲酒をさせ「不適切な関係」を持ったことで芸能活動を休止し、所属事務所から契約を打ち切られた小出恵介はその典型例である。

大阪でマッチングビジネスのノウハウを覚えたガーシーは、松竹芸能所属のお笑いコンビ「アメリカザリガニ」の平井善之の誘いで上京。六本木に平井と共同で飲み屋を始める。

大阪で覚えたノウハウを東京でも応用したガーシーは、「俺、7000人ぐらい女の子の連絡先知ってんねん」と豪語できるほどになったのである。

本当に恐れているのは「警察」ではなく…

好事魔多し。そんなガーシーはバカラにハマり、持ちガネを溶かし、約3億円の負債を抱える。そればかりか韓流スター「BTS」と会わせる代わりにカネを要求する詐欺行為を行ってしまう。無一文になったガーシーが頼ったのが、ドバイにいる飲食店経営者のXだ。

2011年3月11日の東日本大震災で福島第一原発が爆発。この爆発の主犯の1人、総理だった菅直人は、自らの首と引き換えに再生可能エネルギーを買い取る「FIT法」を成立させる。

風力、地熱など再生可能エネルギーの生産手段は多くあるが、設備投資が高すぎる。ところが太陽光は、どんな地方でも大きな土地と格安の太陽光パネルさえあれば、誰でも利益を得ることができるのだ。そこでこのFIT法利権に「黒いビジネスマン」が群がり、FIT長者が生まれることになる。

太陽光で儲けたX氏もその1人だったが、ドバイに逃げた。ガーシーはX氏を頼ってドバイに渡り、X氏の指南によって、暴露系YouTuberとしての活動を始めたのである。
ドバイと日本を往復しながらの収録であった。

もちろんガーシーに虎の尾を踏まれた芸能界は、闇のパワーを使ってでもガーシー排除を画策した。その「危機」をガーシー自身が知ることになる。

2022年7月10日に投・開票が行われた第26回参議院議員通常選挙にガーシーはNHK党の比例名簿1位で出馬。ドバイに在住したまま参議院議員となった。ガーシーは帰国しない理由を、「自身が詐欺容疑で警察による捜査が行われており、帰国すれば逮捕される恐れがあるため」としているが、「事情」を知る地下社会の住人たちはクビをかしげる。

現実的に考えても現職国会議員の逮捕ハードルは極めて高いということで、捜査から起訴まで時間がかかるばかりか結審まで含めれば相当な長期間になる。その間に示談に持ち込み情状酌量を狙うこともできるからだ。

2022年7月17日ガーシーは、医師でとしても活躍するYouTuber麻生泰のYouTubeチャンネルにゲスト出演。

「どこかで警察を信用できていない部分もあって。あと、安倍さんのこと(銃撃事件)もあって、愉快犯を含めて、俺のことをなにかしようと思ってるヤツも出てくるやろうなって。ぶっちゃけ、めちゃくちゃ怖いです」

と言った。本当に恐れているのは「警察」ではない。本音が見え隠れするのは後半の部分「怖いです」にある。

憤怒した芸能界は「闇の力」を使ってガーシーの生命(タマ)を取ろうとしているという情報は私の元に伝わっている。そのことに怯え、安全が確保できているドバイから帰国したくてもできないというのが真相のようだ。「捜査」は国外逃亡のタテマエというのが、地下社会で真相とされている。

当局がガーシーを帰国させるのは簡単で、パスポートの効力を切ってしまうだけで済む。不法滞在者は強制送還となるのだが、すでにガーシー側は、その時に備えた対応を始めているともいう。

文/若野康玄 写真/共同通信社

「大阪アンダーワールド」(徳間書店)

若野康玄

2022/12/26

1980円(税込)

単行本(ソフトカバー) ‏ : ‎ 248ページ

ISBN:

978-4198655846

玉と石が入り交じる街・大阪を舞台に生きるスネに傷を持つ男達のアンダーワールド
山口組直参にもっとも近づいた著者・若野康玄が初めて挑む人物ノンフィクション。
万博目前の大阪で繰り広げられる「赤と黒」のリアル!

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